がっこうえらび!
なんか聞いたことあるタイトル?
テトラは入学し、アンナとマリアはそれぞれの道を進み始めた。3人の夫である僕が立ち止まるわけにはいかない――僕も、異世界で学園生活を送るため動き出した。
僕は図書館へ行き、首都にある学校について調べた。専門的なことを学ぶ学校とか僕が挫折する未来が明らかに見えるので、狙いは総合系一択だ。
しかしさすがは首都。総合系と範囲を狭めたところで、学校数は絞りきれない。広い分野を浅くこなして自分の道を拓きましょう、みたいな触れ込みの学校が10以上ある。
やめてくれ。僕に選択肢を与えすぎないでくれ……。自由や自立を求めはする僕だけれど、いざ世界に放り込まれて『好きにしろ』と言われたら、ビビって何も出来なくなっちゃうのも僕なのだ。
すると、そこへ銀髪の新人店員さんがやって来た。
「ユキオ様! いらっしゃってくれたのですね!」
マリアだ。図書館の雰囲気に似合う地味な制服と、派手な銀髪とのギャップが言葉に出来ないのだ。
「何かお探しですか?」
「ああ、うん。僕も学校に行こうかと思ってさ。みんな自分の道を歩いているのに、僕だけちゃらんぽらんとしてたら、情けないだろ?」
「わたくしはそれでも構いませんわ。ユキオ様が学校へ行こうと行くまいと、働こうと働くまいと、わたくしはユキオ様がお側にいてくださるなら、それでいいですもの」
んー、なんか色々とアレだな。
「総合系の学校を志望してるんだけど、それでも絞りきれなくてさ。何かオススメとかあるかな?」
僕はテーブルにずらりと並んだ各校の資料を、マリアに寄越した。マリアは一通り校名を見ると、『なるほど』と呟いた。
「首都の学校は、基本的にギルドメンバーとなるか商人となるかで大きく別れますけれど、ユキオ様は輝望皇ですから、当然ギルド向きの学校を選択した方がよろしいでしょう。邪神リョウゼンとの対決に備え、戦闘訓練を積むことが出来ます。
ユキオ様はアタッカーやブラスターなど、何か特定のロールになりたいという要望はございますか?」
「いいや、それが全然ないんだよ……僕の場合、多分どれをやってもダメだ。何かしらの専門家になったり、特化型になったり出来ない人間なんだよ、僕」
「そんな謙遜をなさる必要はないですわ。ユキオ様は輝望皇……全ての人間を超過し、神すらも滅ぼす存在。ご意思があれば、どのようなことも可能です!」
「それが輝望皇だとしても、性格の問題だな……」
過大評価し過ぎだ、マリア。僕は、そんな高尚な人間なんかじゃないんだよ……。
「ともかく、僕が行きたいのは『基本的なことは何でもある程度こなせる』人材の育成をポリシーとする学校なんだ。あるかな?」
「むう……でしたら、こちらのデビッド学園はどうでしょう? 6つのロールに関する授業を、自由に選択することが出来ますわ。例えば、ブラスターの『重力魔法』を学びながら、アタッカーの『格闘術』を学ぶといったような、ロールを越えて自由度の高いカリキュラムにすることが出来ます」
「おー! それいい! よし、そこに決めた!」
即決だ。学費も高くないし。
「え? よ、よろしいのですか? 他にも候補が――」
「いいや、マリア。僕は悩むのが苦手なんだ。それだけ聞けば十分だよ。僕はそのデビッド学園で、上手くやっていけるような気がする」
「わ、分かりましたわ……では、早速入学しなければなりませんね」
「え? そういうのって、色々な手続きが必要でしょ? 願書とか履歴書とか――」
「いいえ。輝望皇は例外的に、学園長との面接をして認められれば、翌日からでも入学が可能ですわ」
「マジで!?」
初めて輝望皇に選ばれて良かったと思った。
次回、ついに入学!
同時連載中の『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』もよろしくどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/