タイマン! ゼルファノーガ卿!
決別の刻――決着の刻!
テトラを救うため、フローゼリア家に宣戦布告をした。アンナには無数の捜索部隊を、マリアには執事エデルゲツァルヘを任せ、僕は最後の部屋へ向かった。
そこには、ゼルファノーガ卿が待ち構えていた。
「ほう、ユキオ殿。ちょうどよかった。そちらにマリアからの訪ねはないかね?」
余裕の笑みを浮かべて問うゼルファノーガ卿――知っているのだ。
「……マリアはあなたの息子たちを倒した。たった一人でだ。あなたが無能、無価値と罵った彼女が、手塩をかけて育てられた英才のお兄さんたちを上回ったんだ」
「ほう。ならばあの出来損ないにも、我がフローゼリア家の血筋が少しは受け継がれているということだ。しかしそれは当然と言えば当然だ。マリアにはより地位の高い者と結ばれなくてはならない。我が血が色濃く継がれているならば、それだけ価値は上がるというものだからな」
「……あなたは史上最低のクズだ」
「そのクズが、この先の世界の覇権を握るのだ。ユキオ殿、ここまでフローゼリア家に反逆したことは認めよう。これからはマリアを丁重に扱うと約束する。だからここは大人しく降伏するのだ。輝望皇という特権階級を蔑ろにする手はない。世界を救うついでに、世界を支配してみようではないか」
後ろのドアが開かれた。アンナとマリアが、それぞれの戦いを終えて合流しに来たのだ。
「マリア。私が悪かったよ。済まなかった。愚かな父を許してくれ。言っても信じないだろうが私はお前を愛しているんだ。これまでお前に辛く当たっていたのは、全てフローゼリア家の繁栄のためだったのだ。だからどうか怒りを鎮めてくれたまえよ。お前には素晴らしい婿殿がいるではないか。私などに復讐するより、その婿殿と温かい家庭を築く方が何倍もお前にとって幸せなんだよ」
台詞だけ見れば、それは懺悔する父親の像が浮かぶけれど、違う。感情のこもってない、冷酷な口調だ。彼には、愛する心など持ち得ない。
「――お父様。あなたにわたくしの幸せ云々を語られたくはありませんわ。わたくしはお父様の人形でなければ、家のために人生を捧げる良妻でもありません。わたくしは、あなたから受け取った『愛』を捨て、全ての束縛から解放されるのです」
マリアが言い放った瞬間。ゼルファノーガ卿は怒り狂って地団駄を踏んだ。
「この親不孝者のクソ娘がぁ! 誰がお前を育てた!? 誰がお前を守ってやった!? 誰がお前に礼儀作法を教えた!? 誰がお前に魔法の才能を遺伝させてやった!? 私だ! 全てこの私! お前の母親がお前を身ごもったその瞬間から今まで、お前のあらゆる幸福を授けてやったのが私なのだ! その私に逆らうとは、一体どういう了見だ!? 何様のつもりなのだ!? 私の野望を、存在した瞬間にことごとく砕くことでは飽き足らず、あまつさえ私が苦汁を飲んで出した妥協策すらも破壊し尽くすというか!黙って私が決めてやった結婚相手と子供を作ってればいいものを、余計な反抗心など持ちおって! お前は母親と同じ、期待外れの裏切り者だ! 恩を仇で返し、穀を潰し、何も果たさず生き永らえ、私の最高傑作の息子たちをも傷つけた! この――」
「うるさい!」
僕は女神の閃光を放った。ゼルファノーガ卿は間一髪で避けたが、代わりに彼が座っていた玉座が木っ端微塵に破壊された。
「貴様……よくも初代フローゼリア家当主が邪君ディノグレン様より頂戴して以来、代々の当主が座し続けてきた玉座を……」
「あなたの独白はもう聞き飽きた」
ゼルファノーガ卿は青筋を浮かび上がらせ、掌に魔力を溜めた。凄まじく強大な覇気だ。さすがはフローゼリア家当主――けれど、僕だって負けない。
負けられない。
「マリアの人生はマリアだけのものだ。あなたの性根の腐りきった持論も、独りよがりではた迷惑な家名の叩き売りも、愛という名を借りた薄汚れた邪念も、私利私欲で凝り固まった自己満足の家族計画も――何もかも、いらないんだよ!」
「ほざけええええええええええええええええええ!」
僕たちは同時に動いた――。
「ホープ・ライト!」
「ウ・デル・ガ・コンティケイレント・ゴン・ゲ・テルマカッシュマリア!」
閃光と魔法が衝突した。とんでもない威力の魔法だったが、女神の力はそれを一瞬で弾き飛ばし、ゼルファノーガ卿に直撃した。今世紀最悪のクソ親父は、愛して止まない我が家から吹っ飛んだ。
フローゼリア家との、たった一日の因縁は――マリアにとっては、産まれた時から続いた因縁は、こうして幕を閉じた……。
次回、衝撃のラスト!
同時連載中の『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』もよろしくどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/




