『異』なる道理の『世界』
説明回です。異世界の基本設定が明らかとなります。
助けた女の子に決闘を申し込まれた。
「ちょ、ええ!? なんで!? なんでそうなるんですか!? 今しがた助けたばかりの僕に、どうしてテトラさんは決闘を申し込むんですか!?」
「失礼なのは重々承知の上です! でも……どんなに非常識でも、私はあなたと決闘したい! させてください! お願いします!」
テトラさんは深々と頭を下げた。いや、下げられても承諾するわけにはいかない。白状だと罵る人は少し考えてみてほしい。
決闘だぜ? どういうことか分かってんのか。僕は女性とバトるようなことはしたくないんだよ。
「ちょっと、待って。待ってください。一旦落ち着きましょう。冷静に、くれぐれも冷静に。どうしてテトラさんは僕と決闘したいんですか?」
「えっ!? だって、それは……い、言わせたいんですか?」
テトラさんは顔を真っ赤にして俯いた。いや、可愛いけれど今の僕にはそうしてもらう他にない。
「で、ですから……その……あなたと、結婚したいから……です……」
テトラは答えると、煙でも出そうなほど紅潮した顔を手で覆い隠した。一方で僕は、未だにイマイチ意味が分かっていなかった。
決闘することと結婚したいことがどう結びつくんだ。常識か? 異世界のことはチンプンカンプンな僕にのみ通用しない、新手の常識なのか?
「あの……僕、別の世界から来たもので、この世界のルールとかがよく分からないんですけど……」
「はえっ? 別の世界?」
テトラは可愛い声で聞き返した。
「じ、じゃあひょっとして、ユキオさんは今、身寄りがないんですか?」
「そうなんだ」
テトラは少し悩むと、やや膨らみのある胸を張って僕の前に躍り出た。
「分かりました! じゃあ私の村へお連れします! 親切な人が多いので、きっと何かの助けになります!」
「本当に!? それは助かります!」
僕は嬉々として彼女の提案に乗った。
「じゃあ、歩きながら説明してあげます。この世界のこと」
「ありがとうございます」
僕たちは森の出口へ向かった。
「さあ、何でも聞いてください! お答えしますよ!」
問答の始まりだ。
「えっと……じゃあ、まずは結婚とか決闘とか、その辺りのことを」
「はい。この世界では女性が男性に決闘を申し込むのが、ある種のプロポーズとなるんです。男性は決闘に負けると、勝った女性と結婚します。
ちなみに、一度決闘を申し込まれた男性は、決闘を拒否することが出来ません。負けた場合は結婚を取り消すことも出来ません。決闘で私に勝つ以外に、あなたが私との結婚から逃れることは出来ないんです」
とんでもないルールだな。
「そ、それは法律とかて正式に認められてる系のやつですか?」
「はい、それ系です」
やっちまった、来る異世界間違えた。
「……どうしてそんなバカげ……いや、なんというか一方的な法律が?」
「話せば長くなります」
構わない。どうせもう家には帰れない。今の僕には、時間などあってないようなものだ。
「――遥か昔、神々の時代のお話です」
テトラは語り始めた。異世界創生の発端ともなった、壮大な戦いの伝説を。
いよいよバックボーンが明るみとなる感じです。5話にして早くも。本当、気がつくと設定を掘り下げている自分がいます。こちらより優先させたい作品があるのですけれど、多くの方に読んでもらえると、やっぱり嬉しくなっちゃいますし調子にも乗っちゃいますね。
本作より優先させたい作品というのが、現在連載しております『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』という小説です。こちらも同時に最新話を更新したので、よろしければご一緒にどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/