表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/102

目指した街

 いくつもの苦難を経て辿り着くは――。

 アンナと結婚し、僕はテトラとアンナという二人の妻をもった。いわゆる重婚というやつだ。この異世界は、一夫多妻制が禁じられた代わりに重婚が合法化された異世界なのだ。

 どう考えてもおかしいけれど、仕方ない。ルールはルールだ。


「なあ、タジマ」

「なに?」

「アタイとテトラ、どっちの方が好き?」

「えっ!?」


 これはアカン。


「もちろん私だよね、ユキオさん!」

「ああ、もちろん! アタイはタジマなんかよりテトラの方が好きだ!」

「えっ!? い、いや、私はユキオさんに……きゃあっ!」

「んー……テトラ、ちょっとこれはさすがのアタイでも盗賊に襲われるのは仕方ないと言わざるを得ないよ。だってこれ、すごい――」


 アンナが言い終えるのを待たず、テトラは頭突きした。頭突き……まさかテトラがするとは思わなかった。アンナも同じようで、不意に一撃を喰らい、悶絶している。


「あっ、あれ! 馬車だよ! ユキオさん、私たちの荷物があるかもしれない!」


 テトラは走り出した。僕は苦悶しているアンナに肩を貸し、彼女を追った。幸い荷物は駅に保管されており、中身は何も盗まれていなかった。

 良心的な異世界。僕、こういうの好きだぜ。


「わー! お金ぇー!」

「テトラ、なんかちょっとそれはヒロイン的にアレなんじゃないかな」

「だってだって、これはお父さんお母さんや村の人たちから借りたお金なんだよ? 私以外の人なんかに使わせるもんですかっ」


 まあ確かに。


「おい、二人とも。大事なことに気づいてないようだな」


 荷物を取り戻した僕たちに、アンナが言った。


「着いたぞ」


 僕とテトラは、アンナが顎でしゃくった方を見た。地平線の彼方まで広がる壁、そして目の前には巨大な門。

 ひょっとして、ここが……。


「そっか! ここ、王国の入り口だ!」


 テトラは、わーいわーい、とはしゃいだ。なんだか子供じみたリアクションかもしれないが、これまでの数々の困難を思えば、無邪気に喜びたくなる気持ちも分かる。

 こうして無事に辿り着けたのは、まさしく奇跡だ。


「そこの旅人3人」


 すると、門の両脇に立つ二人の門番の内一人が、僕たちに近づいてきた。


「見慣れない奴だな。商人ではなさそうだし……観光か?」

「いいえ、お引っ越しです」

「オヒッコシ?」


 テトラの答えに、門番は素っ頓狂な声をあげた。


「首都の学園で治癒士の勉強をするんです」

「ああ、治癒士か。ということは寮生になるのか。なら、まずはフローゼリア卿の邸宅を訪ね、王国民証と首都民証を発行してもらうんだな」

「フローゼリア卿の邸宅、ですか?」

「街の東に、アホほどデカい宮殿がある。すぐに分かるさ」

「分かりました。ありがとうございます」


 テトラはペコリと頭を下げた。


「そこの男。お前は……」

「僕は二人の夫です」

「死ね」

「え?」

「では付き添いということだな」

「え……あ、はい……」


 なんか聞こえたけど気のせいっぽいな。


「では、最後にそこのおん――なぁ!?」


 門番はアンナを見ると、度肝を抜かれたように後ずさった。


「ケッ、ケルベロスの狂犬っ!?」

「ヒッ、ヒイィ!?」


 もう一人の門番も、向こうで腰を抜かしてしまった。


「なあ、今アタイの夫になんて言ったぁ……?」

「ひえええええええええええええええ! おお通りくだしゃい! お通りくだひゃい!」


 こうして、僕たちの旅は終わり、新しい舞台での生活が始まる。

 双剣士アンナ編、完!

 次回から新しい冒険の幕開け、魔術士マリア編、スタートです。


 同時連載中の『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』もよろしくどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ