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恩を仇で返すという言葉の意味がこれほどまで心に染み込むとは……

 タイトル通りの回です。

 女の子が襲われていて、助けようと飛び出したら絡まれた。僕、絶体絶命の危機。


「俺は弱い奴がチョーシこいて格上相手に楯突くのが一番ムカつくんだよ! 分かってんのか、あぁ!?」


 リーダー格の男が僕の胸ぐらを掴んだ。華奢な僕の身体は、男の片腕にいとも容易く吊り上げられてしまう。

 後ろでは女の子は『いやっ』と息を呑み、男の仲間は指や肩をポキポキと鳴らして僕ににじり寄った。その手には棍棒やナイフ、更にはゴルフクラブらしきものなどといったとんちんかんなものまでも、武器として握られていた。

 あーあ、異世界に来てたったの10分で僕は死ぬのか。この異世界のこともまるで知らないまま、自分の身すら守れず女の子も助けられない、なんて死――意味ないな、僕の一生……。


 もはや生き残ることを諦めた、その時。僕の心臓がドクドクと激しく脈打った。かと思えば、それに気づいて動揺する暇も与えず、僕の左胸から閃光が放たれた。

 閃光は僕の胸ぐらを掴んでいた男に直撃した後もその勢いを留めず、他の男たちを立て続けに弾き飛ばした。数秒後、立っているのは僕と女の子だけだった……。

 一体なにが起こったんだ? 訳も分からず呆然としていると、閃光は僕の方へユラユラと近づいてきた。すると、僕の頭の中に、髪の長い長身の綺麗な女性のイメージが浮かんだ。


『私はこの世界を見守る女神です』


 頭の中で、イメージの女性が言った。天から響き渡るかのような、美しくも威厳ある声だ。


『どうやら、あなたは世界に選ばれし【輝望皇(きぼうおう)】のようです』


 輝望皇……? 僕が頭の中で訊ねると、女神を名乗る女性は『その通りです』と答えた。意思の疎通は可能らしい。


『輝望皇とは世界を照らす道標――巨悪を砕く人々の先導者なのです』


 巨悪……?


『ええ。この世界は、間もなく暗黒の時代を迎えます。その時、罪なき民や善良なる民の全てを守る存在として、無数に散らばる可能性の中から、ただ一人あなたが選ばれたのです』


 いや、選ばれたとか守るとか言われても、いきなり輝望皇って――何をしたらいいのかすら分からないんですけど。


『それは自ずと分かります。ただ、これだけは忘れないで。運命はあなたの勝利を祈り、常にあなたの心強い味方となるでしょう……』


 そう言うと、女神のイメージが頭の中から消えていった。本当に何だったのだろう。


「あの……大丈夫ですか? どこか痛いのですか?」


 女の子が僕の前に立ち、心配そうな表情で訊いた。僕と女神とのやり取りについては気づいていないようだ。

 まあ、そりゃ僕の頭の中で起きたことなんだから当たり前なんだろうけど。


「いえ、大丈夫ですよ。……あの……ていうか、それより……」


 僕は彼女から視線を逸らしながら言い淀んだ。彼女は、さっき男から衣服を剥ぎ取られた姿のままだったからだ。

 白くて綺麗な肌や豊満な胸部が、全くもって油断していた僕の両目に焼きつけられ、それは当然、脳内記憶領域に痛烈に保存された。


「……はっ!」


 女の子もようやく気づいたようで、慌てて傍に落ちていた衣服を拾った。しかし服は引き裂かれており、着るというよりは羽織るという用途でしか彼女の裸体を隠してくれなかった。


「……見ました?」


 女の子は顔を真っ赤にして訊ねた。


「いや……」

「そうですか……」


 女の子は『よかったぁ……』と胸を撫で下ろした (比喩ではない) 。信じてくれて助かる。こうして向き合うと、僕は初めて彼女を落ち着いて見ることが出来た。

 艶々な髪は肩まで伸びており、背は僕より頭一つ分小さい。歳は、大体16歳――僕と同い年くらいかもしれない。とても可愛い、清純そうな女の子だ。


「あ……あのっ、助けていただいて、ありがとうございます!」

「いや、そんな大したことじゃ……」


 ペコリ、と頭を下げた彼女に、僕は慌てて言った。


「あの……私、テトラといいます。テトラ・ポートリス。あなたは?」

「え……」


 こういう時、自分の名前を明かすのってどうなんだろう。僕は少し迷ったが、女の子が自ら名前を明かした後に自分の名前を隠しておくのはアレかなと思い、『田島 行夫です』と言った。

 彼女がフルネームを明かしたようだから、僕もそれに倣ったのだ。


「ユキオ、さん……」


 テトラは顔を赤らめて復唱する。


「……あの、ユキオさんっ!」


 テトラはしばらくすると、僕と改めて向き直り、何か決心したかのような声で呼んだ。


「よかったら……もしよかったら、私と決闘してくださいっ!」


 この異世界の住人は、恩人に決闘を申し込むらしい。

 はい。変な奴らに絡まれていたところを助けたはいいけれど何やかんやで決闘を申し込まれてしまったという意味で、恩を仇で返された回でした。

 なんか本作も思いつきの行き当たりばったりで展開していくつもりが、ある程度まで設定とかストーリーを作ってしまったというのがもうどうしようもありません。

 本作用のノートとか用意しちゃう始末。


 また、別に連載している『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』という作品は、予めノートにびっしり網羅された設定を踏襲した、いわば最初から全てを想定・構想した上でのストーリーとなっています。

 こちらもよろしければどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/

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