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私、このまま……

 今回はテトラ視点の話になります。初めて主人公以外が語り手となりますね。今後も、こういうユキオ以外のキャラにスポットを当てた回がいくつも出てくると思われます。

 ユキオさんの姿が見えなくなっても、ユキオさんの声が届かなくなっても、私は叫び続けた。


「ユキオさん! ユキオさん!」


 夫の名を、呼び続けた。当然だよ。私は、ユキオさんの妻なんだもの。信じてる。私は、ユキオさんが必ず助けてくれるって信じてる。

 だから……。


「ユキオさん! ユキオさん!」

「いい加減に黙れよ! このクソアマ!」


 私を抱える人が、私の口を手で押さえた。両側の頬をつままれて、なんだかタコさんみたいになった。


「でけえちちして脳みそは小せえんだなぁ。状況、分かってんのかよ?」


 リーダーの人が顔を近づける。整った顔立ちが、欠けた歯や強烈な口臭のせいで、醜悪に見えた。

 顔と顔が近すぎて、鼻の先が当たりそうだ。抉るような眼から、視線が放せない。口を捕まえる彼の手がそうさせている。

 彼の眼は、私を『モノ』として見ていた。必要な時に『使う』道具として。


「あいつ、ここに来れば死ぬぜ?」


 私は、自分の喉が震えたのに気づいた。ユキオさんが、死んじゃう?


「この森はゴブリンの縄張りだ。まあ、今は俺たちの縄張りだが。俺たちが牛耳ったゴブリンは、侵入者を決して逃がさねえ。集団で襲いかかり、捕らえ、そいつの骨で作ったコップに血を注いで飲み干し、そいつの骨で作ったナイフとフォークで肉と皮を食い散らかす。

 分かったかぁ? 今日の晩飯に旦那を食う羽目になりたくなきゃ、大人しくしてるんだなぁ。なぁに、心配するこたぁねぇ。数分もすれば、てめえの旦那のことなんかすっかり忘れられるぜぇ」


 どうしよう……怖い。あの時、ユキオさんと初めて会った時、こうして彼らに襲われたことを思い出す。頭から、離れてくれない。

 私は自分の体を庇うように抱き締めた。手と体が震え合って、ガタガタと激しく揺れた。声も、今は出そうにない。


「おお、いいねえ。馬の上で俺に胸のダンスを披露してくれてるってか? ヒヒヒ、こりゃいいぜ。安心しな。そう焦んなくても、あとですげえコトしてやるからよぉ!」


 私は泣いていた。声は出ない。涙だけが虚しく流れて、それをリーダーの人が舐め取った。私は、ただされるがままになって、何も出来なくなってしまった……。

 森の奥深くで、馬が止まった。私は丁寧に降ろされ、かと思えば、地に両足が着いた途端、服を引き裂かれた――あの時と、同じだ。

 ただ、今回は、悲鳴をあげられない。


「へへへへへ! この時を待ちわびていたんだよぉ!」


 その場にうずくまる私を、男の人たちが嘲笑った。リーダーの人は一頻り笑うと、無抵抗な私の体を地面に叩きつけた。ザラザラ、ゴツゴツした土が、素肌に当たって気持ち悪い。

 そんな私を見下ろせる位置に立つと、リーダーの人は、膝を着いてモゾモゾした。


「やっちまえ! リーダァ!」

「ぃよっ! 世界一ィ!」

「楽しい楽しいショーの始まりだぜぇ!」


 男の人たちの野次が飛ぶ。リーダーの人は、まんざらでもない様子で応えた。私のお尻を見て、すごく残忍な笑みを溢した。

 ユキオさん――私は最後まで、愛した夫のことを想った。


「やめろ!」


 その声が、私の希望だった……。

 はい。すごくいけないことをされかけていますね。お尻を見られてはいますけど、実はズボンは脱がされていないので、何が目的なのかは定かでないです。


 同時連載中の『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』という作品では、上どころか下も脱ぐ場面がいくつかあって。現在、その場面の内一つを執筆中ですね。あとご飯シーン。

 個人的に、ジャンルを問わず一つの作品には必ず食事シーンを入れてほしいと思っています。食事の描写の有無で、その作品のキャラクターたちが『生きている』っていう感触が丸っきり違うと思うんですよね。

 仮に『食事がままならない』世界観であったりしても、食事に対する執着が誇張されていると、自分で勝手に盛り上がれます。

 その話は置いといて。『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』、よろしければどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/

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