逆襲
久しぶりですね。今日になって急に続きを書きたくなりました。書きました。
双剣士アンナ編、いよいよ始動。
なんとか馬車に間に合い、街への直通便に乗ることが出来た僕とテトラ。やれやれ、楽しい旅になりそうだ……。
「はあ~っ、疲れた~」
テトラは汗だくになっていた。暑がって服の襟元をパタパタとうちわのように上下させると、同乗する男性は誰もが彼女に釘づけになった――彼女の胸元に。
「テッ、テトラッ! そういうだらしない感じは、都会だと良くないんじゃないかな……?」
「はっ、そっか! だらしないのはダメだよね」
テトラは納得したように頷くと、その行為を止めた。避難がましい痛烈な視線が、今度は僕に集中した……この異世界で男性が恐れられる理由が分かった気がした。
僕はテトラの夫になったのだ。僕が彼女を守るんだ。
「なぁにが守るだぁ!? このクソザコがぁ!」
聞き覚えのある怒号が、窓の外から聞こえた。振り返ると、森でテトラを襲った男たちが、馬に乗って僕たちを追いかけていた。男たちは表情からして、明らかに怒っている。
「きゃあ!」
すると、男の一人が窓をこじ開け、あっという間にテトラを拐ってしまった。僕はテトラが伸ばした手を咄嗟に掴んだが、馬と馬車の距離が離れ、すぐに手を放してしまった。
「テトラァ!」
僕が叫ぶと、賊のリーダーがテトラを抱きながら、憎たらしい笑顔を浮かべた。
「ざまぁねえぜ! クソザコのカス野郎が図に乗るから、こういうことになるんだぜぇ? ちょっと奇跡を起こしたくらいで俺たちに勝ったとでも思ったか!? 俺たちニーズジャンクレイジングは、受けた借りは必ず返すぜ」
「いやぁ!」
リーダーは吠えながら、テトラのうなじの匂いを嗅いだ。うなじだけではない。テトラの首筋に沿って、彼女が嫌がるのを気にも留めず、顔を押しつける。
「いいぜぇ……お前、新婚なんだってなぁ?」
背筋がゾクッとした。
「噂ってのは、発射されたらたちまち広まっちまう。俺たちはお前にやられた後、憂さ晴らしに新婚夫婦を襲って、女房が美人ならいっちょ味見してやろうと計画していたんだぁ。
ところがどっこい、その新婚はお前らだった。閃いたぜぇ……ビンッビンになぁ! 街へ出るっていうからには、この馬車を使うに違いねえ。待ち伏せて、奇襲を仕掛け、嫁を拐って遊んじまおうっていう、歴史上最も巧妙な作戦を思いついたのさ!」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「じゃあなぁ! クソガキィ! 安心しろよ! お前の女房に損はさせねぇ! とびきり楽しいコトしてやるよ!」
男たちを、テトラを乗せた馬が、森の方へ消えていく……。
「テトラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
「ユキオさんっ! ユキオさん!」
やがてテトラの姿が見えなくなり、僕は叫んだ。テトラの行方を追い、叫び続けた。テトラも必死で応えていたが、とうとう声すら聞こえなくなってしまった。
「馬車を止めてください!」
僕は運転手に言った。
「む、無理ですよ! 時間順守! 運賃厳守! 他のお客様も乗っているんですから、皆様にご迷惑は……」
「止めろって言ってんだよ!」
僕は激昂してしまった。テトラを一刻も早く取り戻す。そのことしか頭になかった。だが、いくら掛け合っても、運転手は馬車を止めようとしなかった。
「クソッ!」
僕はテトラが拐われた窓から飛び降りた。地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がって泥と血にまみれる。
立ち上がった時、幸いテトラが連れ去られた森の方角を見失ってはいなかった。深々とした緑が、向こうに広がっている。
こうしている内にも、更に距離が離されているかも――僕は擦りむいた片足を引きずり、テトラを助けるべく走った。
あの時のように、またテトラを守ってやる。
いきなりピンチですね。なんか放っておいたらヤバそうな感じです。でも、まあ、そんな心配されるようなことにはならないつもりですので、ヤバそうだなーと思いながら読んでいただければと思います。
また、同時連載中の作品『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』ですが、こちらは結構切羽詰まって、ヤバい! と思いながら読んでもらいたく思っております、はい。
こちらは第二章の最終盤に突入しています。第三章も遅かれ早かれ (遅くなりそう) 開幕します。よろしければ併せてどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/




