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二人の門出

 ついに村から旅立つユキオとテトラ。その別れは希望に満ちていたが、どこか物悲しい雰囲気で……。

 テトラは村を離れ、街へ行く決心をつけた。治癒士としての力を磨くためだ。僕も、異世界から帰る方法がないか探るため、彼女と共に行くつもりだ。

 それから数日をかけ、僕とテトラは村を出る準備を進めた。村の人々に挨拶回りをしたり、僕の替えの服や最低限の生活用品を買ったり、街の情報や地図が載った資料を集めたり――色々だ。


 村のみんなは、老若男女を問わずテトラの旅立ちを、涙ながらに祝してくれた。十数年間、同じ村で育った家族も同然の女の子が去っていく悲しみと。テトラが治癒士として更に成長する機会に対する喜び。そのどちらも感じさせる涙だった。

 僕の荷物については、テトラが同伴して必要なものを指示してくれた。異世界の服は僕の世界と少し違っていて、テトラはそれを汲んでデザインや素材の良し悪しも評してくれた。おかげで、ようやく僕は異世界の住人っぽくなってきた。

 また、隣村の図書館で周辺の街を調べてみると、テトラは『エルピス王国領フォーブルス都立学園』に目星をつけた。ここは特に治癒士の育成に力を入れているらしく、更にテトラの村が同じエルピス王国の領地ということで、学費の一部免除が見込めるというのだ。入学にあたり宿舎を紹介してくれるというのも決め手となったようだ。


 一方、僕もテトラと二人きりで旅をするにあたり、持ち物以外にもそれ相応の準備を整えなければならない。この村で生活をしていて分かったことがあるからだ。

 異世界には怪物や魔物が生息しているのだ。穏やかな生物がいれば、気性が荒く人間を襲う種族も存在する。道中、テトラを守れるのは僕しかいないのだから、女神の力を使いこなせるようにならなければ。

 僕は暇を見つけては、テトラと出会った森へ赴き、あの閃光を扱う訓練をした。頭の中で女神セアが直接レクチャーしてくれたので、僕の技術はみるみる上達した。さすが、この力の本来の持ち主だ。


 さて、目的地が決まれば、あとは出発するだけだ。旅立ちの前夜、僕はテトラと一緒に買った鞄に全ての荷物を詰めた。テトラにとっては、育った村を離れる、一世一代の自立の始まりだ。

 夜が明け、いよいよ出発の時となった。たくさんの村人が見送りに来た。テトラは、その一人一人に、今一度『ありがとう』と言って回った。


「テトラ……帰りたい時は、我慢せずに戻ってくるのよ」

「誇りに思うぞ、テトラ……」


 両親の言葉に、テトラは涙ぐんだが、何とか堪えた。出発するその時に泣いてしまっては、みんなに心配をかけてしまう――テトラは前の晩、この瞬間の分まで悲しんだのだ。


「では、行くがよい! いつどこにいても健やかに、そして慎ましくあれ!」


 長老の激励を受け、僕とテトラは旅だった――さあ、異世界を冒険する旅の始まりだ!

 次回、ついに『治癒士テトラ』編、完結!


 同時連載中の『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』もよろしければどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/

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