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ウェディングドレス

 ついに結婚式直前! テトラの花嫁衣装――絢爛!

 女神の力は女性には効かない――僕は決闘に負け、テトラと結婚することが確定してしまった。そして結婚式は、その日の夜に行われるというのだ。

 村の教会でスーツを借り、控え室で服を着替えた。黒いスーツを纏った自分を鏡で見ると、なんだか恥ずかしくて笑ってしまった。

 すると、扉がノックされる音がした。


「どうぞ」


 入室を許すと、長老が扉を開けた。僕の花婿姿を見ると、何やらニヤニヤと笑った。


「なかなか様になっておるではないか。羨ましいぞ」

「どうも……」


 僕は照れて頭の後ろを掻いた。


「……花嫁の準備も出来ておるようじゃ。会ってみるかのぅ?」

「え?」


 花嫁姿のテトラと……会う? 僕は緊張で生唾を飲み込んだ。この音が長老にも聞こえたのではないかとさえ思った。


「来るがよかろう」


 僕の答えを待たず、長老は部屋の外へ出ていった。僕は頭の中の煩悩を振り払い、長老の後を追った。長老が向かいの部屋へ入り、僕を招き入れた。

 中へ入ると、両親に見守られている、純白のドレスに身を包んだテトラの姿があった。言葉に表せないくらい綺麗だった。

 両親は僕のことに気づくと、テトラに一言何かを告げ、長老と共に部屋から出ていった。僕とテトラ、二人きりになった。

 ……気まずい沈黙。こんな時、僕は花嫁に気の利いた一言とか言えない人間なのだ。恥ずかしくて、照れくさくて、頬が緩みそうなのを堪え、自分の爪先だけ見つめた。


「……素敵ですよ、ユキオさん」

「ど、どうも……」


 先に言われてしまった。僕、立つ瀬がない。


「テ、テトラさんも、その……おっ、お美しいです……」

「本当ですか?」

「はっ、はぃい! とてもお綺麗ですっ!」

「ありがとうございます……えへへ……よかったぁ」


 純白のドレスを纏い、可憐に笑うテトラ。天使がここにいる……。


「あの……ユキオさん」

「はひっ!」


 テトラに呼ばれ、間の抜けた声で返事をしてしまった。


「二つだけ、お願いがあります」

「なっ、なんなりと……」


 僕は顔が真っ赤なのを承知の上で、テトラの方を見た。テトラの顔も真っ赤だ。


「私たちはこれから夫婦になるんですから、どうか私のことはテトラと呼び捨ててください」

「はっ、はい……分かりました……」

「あと、敬語もなしです。私たちは夫婦になるんですから、今から練習しておかないと」


 夫婦って面と向かって言われると、すこぶる照れた。


「じ、じゃあテトラさんも――あっ、ぼ、僕のことは呼び捨てで……」

「いいえ、私はユキオさんで」

「え……でっ、でも……」

「私がユキオさんって呼びたいんだもの、そうさせて?」

「おっ、おう……」

「じゃあ、練習してみよっか」

「え?」

「さんっ、はいっ」

「テ……テト、ラ……」


 不馴れな感じで呼ぶと、テトラは小首を傾げて微笑んだ。


「なあに? ユキオさん」


 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 次回、ついにユキオとテトラの結婚式が始まる……!


 同時連載中の『ALTERNATIVE ~オルタナティヴ~』もよろしくどうぞ。http://ncode.syosetu.com/n9952cq/

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