Separation - 1
小説書いてみたいとは前々から思っていたので気分転換に実際にやってみます
ざっくりとは話を考えてはいるのですが、根気が続くかというところです
続くといいな
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1983年3月3日
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「どこに行ってた、博治」
咎めるような低い声を無視して、池口博治は歩を進めた。
不快感を表す態度としてはいかにもなものである。しかし、それをまだ10にも満たない少年が自分の親に向けていた。
「おい! 答えないか」
声の調子に一層険が増す。すると博治の表情もますます硬直し、感情を奥底に沈めて行った。
池口義治は、止まる様子のない博治に聞こえよがしに舌打ちを鳴らすと、大股で詰め寄った。肩を掴み、博治の体を向き直らせると、間髪いれずその腕を振るう。
世には、暖かみのある優しげな色彩を生み出すと評されるその手が、氷のように冷たく我が子の頬を打った。
ピャッと、麻布を裂いたような乾いた音が響く。
「なんだその態度は! ああ? そういうところから直さんと絵も上達なんてせんぞ!」
ようやく小学校の初年度を終えようという少年に対しては、あまりに苛烈で理不尽な仕打ちだったが、それでも博治の目に涙はなかった。
切れて血が滲む唇も、真っ赤に染まり始めた頬も、まるで痛みを感じていないかのように、博治は空虚な瞳で父の顔を見上げていた。