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青き馬、デビュー

~中山競馬場~


新馬戦…それは様々な伝説を生み出す可能性がある競走馬のデビュー戦。伝説の新馬戦と呼ばれるレースとして一つ例を挙げよう。


それは天馬トウショウボーイが勝った新馬戦。このレースは史上3頭目の三冠馬ミスターシービーの母シービークインと後の菊花賞馬グリーングラス、そしてグリーン一族の祖先アイヴィグリーンの母ハーツタールが出走したレースだ。

結果はトウショウボーイが勝ったがこの4頭は繁殖で伝説を生み出す。トウショウボーイとシービークインは三冠馬ミスターシービーを、グリーングラスとハーツタールは二冠牝馬アイヴィグリーンを生み出す。

…さらにそのミスターシービーとアイヴィグリーンから生まれたのがシンキングアルザオの母ジャパンサハラ。

現在シンキングアルザオは非SS(サンデーサイレンス)系かつ非ND(ノーザンダンサー)系、非MPミスタープロスペクター系という血統から日本の生産者から理想の種牡馬と言われている。それもそのはず…現在の他の優秀な種牡馬はそれらの血統を何れか含んでいる。日本のトップサイアーのディープインパクトとオルフェーヴルはSS系、欧州…つまり外国産馬の流行血統であるフランケルやカーソンユートピアはND系、キングカメハメハやロードカナロアはMP系のサイアーラインである。


何が言いたいのかというと…ボルトの新馬戦に出る馬の半分弱の父親がシンキングアルザオであり、残りはSS系などだった。ボルトはND系である。


『しかしマジソンの親父がここまで種牡馬として成功するなんて想像も出来なかったよな。』

ボルトは橘に話しかけて客をみる。

「そんなものだろ。競馬ってのは。それよりも田舎ものだと思われるからキョロキョロするな。」

橘がボルトを注意して落ち着かせるように言わせるがボルトはやめない。

『田舎ものだよ。俺は。それに初めてレースをするからな…緊張しているんだよ。』

「ダンジョンは少なくとも落ち着いていたぞ?」

『ダンジョンは仮にもダービーを含めたGⅠを3勝した馬だからな。新馬戦で落ち着いていられるのも当然だろうな。しかし1970年代後半頃なら現役最強馬と呼ばれてもおかしくないのに…去年引退しておけば良かったんじゃないのか?』

「どんだけ昔の話しているんだ…とにかく作戦は武田先生の指示通り行くぞ。」

『わかった。』

ボルトを含め競争馬達はゲートに入りレースの準備が終わった。


ガシャン!


【各馬一斉にスタートしました…おっと…一番人気のボルトチェンジどうやら出遅れたようです。】

ボルトが出遅れ、会場は悲鳴に包まれた…というのもボルトは知名度が高く有名であり梅宮の所属する新聞からも高く評価されていた。そのため一番人気となり、支持率も相当なものだった。しかしこのレースは先行馬が有利であるその訳は走る距離自体が短距離で相当短いからだ。

『出遅れた?わかっていねえよな…あのアナウンサー…』

しかしボルトはわざと出遅れたのだ。その理由は武田の調べではシンキングアルザオ産駒の特徴として逃げ馬が多く、ペースも速い傾向にある。故にこのレースでは逆に先行馬が不利となっていたのだ。もちろんそれだけでなく橘は追い込み馬を得意としておりダンジョンでもダービーを勝っている。さらにボルトの先行しての末脚は同世代牝馬No. 1の末脚を持つミドルにラスト3Fのタイムがコンマ一秒遅れるだけである。追い込みになったらそれよりも末脚が加速するのは言うまでもない。

その為武田はボルト達に追い込みの指示を出していた。

「その通りだ。ボルト…よし残り600mだ…行くぞ!」

「オウヨ!」

ここで橘のムチが入り、ボルトが一気に加速して来た。

【ここでボルトチェンジが動き、徐々に先頭に近づいてきました。完全に勢いはボルトチェンジだ!】

ボルトが先頭に並び、完全にかわすと観客の先ほどの悲鳴が歓声へと変わった。

【ボルトチェンジだ!ボルトチェンジが6馬身、7馬身…どんどん差を離して…ゴールイン!完勝です。2着のハメノシンキングに大差をつけて勝利しました。】

「やったなボルト。」

『この調子なら二歳の重賞一つくらいなら楽勝で勝てそうだな。』

「…そうだな。だからと言って油断はするなよ?」

『油断はしねえよ。油断したら負けるのは目に見えているからな。そういえば来週の毎日王冠出るんだろ?そっちも油断するなよ…』

「来週…ああダンジョンか。毎日王冠にはマジソンもいねえし、クラビウスも京都大賞典に出走して毎日王冠には出ねえ。敵はターボとトーマだけだ。」

『そうだな。良い結果を期待しているぜ。』

「任せておけ。」


その後スプリンターズSは安田記念2着馬ロレアルゴーが勝利した。


~翌週~

京都ではゴールデンウィークとクラビウスの一騎打ちムードのレース、京都大賞典に注目が集まっていた。その理由はクラビウスはGⅠを2勝…それも京都大賞典と同じ舞台の菊花賞馬であるがマジソンに何度も先着されており宝塚記念でも掲示板がやっとだった。

ゴールデンウィークはダービーでは宝塚記念馬トロピカルターボに先着、その宝塚記念で古馬最強のマジソンやクラビウス自身にも先着しているがGⅠを勝利していない善戦馬だった。

つまり勢いでいえばゴールデンウィーク、実績で言えばクラビウスという状態だ。

【現在1番人気は4枠5番のゴールデンウィークです。僅差の2番人気は3枠3番クラビウス。離れて3番人気は5枠6番タルトセイチ…】

馬券を購入する時人は実績よりも勢いの方を優先する傾向がある。その為人気はゴールデンウィークの方が上だった。


【さあ京都大賞典スタート!出遅れはありませんでした。ゴールデンウィークはいつもポジションにつき、クラビウスはそれよりも少し遅れて走っています。】

通常であれば3歳馬が古馬をマークすると言った展開だが今回は違った。3歳馬ゴールデンウィークは完全に古馬クラビウスを無視。これは異例とも言えることだ。ゴールデンウィークはGⅠを勝利していない一介の重賞…それも近走は善戦したとはいえ2連敗した馬である。逆にクラビウスは連敗が続くとはいえGⅠを2勝もしている。そんな敵であるにもかかわらず完全にゴールデンウィーク陣営は自分のレースにこだわるように指示したとしか思えない。

【さあ京都の名物、4mの高さの登り坂と下り坂。ここで各馬ペースを落とします。坂を下り…ここから一気にペースが上がり、最終コーナーで先頭はタルトセイチ!タルトセイチが先頭だ!ゴールデンウィークが2番手!クラビウスは3番手に上がり一気にタルトセイチを捕らえ、交わした!】

残り300mでゴールデンウィークとクラビウスの完全一騎打ちムードとなり、他の馬は蚊帳の外だ。

【ゴールデンウィークが粘る!しかしクラビウスも差しに行く!今年のダービー2着馬か!去年のダービー2着馬か!今二頭が並んでゴールイン!外は3番クラビウス、内は5番ゴールデンウィーク。どちらが勝ったのでしょうか?】

掲示板には審議のランプが灯り、ゴールデンウィークとクラビウスの番号だけが書かれずにいた。つまり現在ゴールデンウィークが粘ったかクラビウスが差し切ったかという審議をしている最中だ。

それから5分ほど時間が経ち1番上には3の数字が書かれて隣にはハナと書かれていた。

【京都大賞典はクラビウスが勝利いたしました。お見事です。古馬の貫禄を見せつけました!】

こうして京都大賞典はクラビウスの勝利に終わった。ゴールデンウィークはまたしても勝利出来ずシルバーコレクターの称号を手に入れてしまい、ゴールデンウィーク陣営はクラビウスをなめていたことを反省した。

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