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青き馬、最強馬の道を語られる

武田は諏訪に武田厩舎の馬の調教メニューを与え、その場から離れさせると不敵に笑った。

『トーマが毎日王冠に出走しているとなりゃトンデモなくハイレベルなGⅡだな。』

マジソンは他人事のようにそう言った…事実他人事であり、マジソンはこのレースに出走しない。もちろん京都大賞典もだ。

『でもまあ、これでリセットを除いた有力3歳馬達の弱点がわかるかも知れねえな。』

「凱旋門賞でアブソルートにドラグーンレイト、毎日王冠と京都大賞典でターボ、ゴール、トーマ、菊花賞でリセットに夏の上がり馬…そして秋の天皇賞…10月は各有力馬の実力を見るにはうってつけのチャンスだ。」

『そういえばマジソンはいつレースに出るんだ?』

「そういえば言ってなかったけか?マジソンは秋天をステップレースとしてJC、有馬と進んでいく。」

『はあっ!?秋の天皇賞はGⅠだぞ!?舐めているのか!?』

「シンボリルドルフやジェンティルドンナを始め秋天に負けた日本にいた最強古馬はその年のJCに勝った…それがどういうことかわかるな?」

『だからって…天皇賞秋に使うくらいなら普通にGⅡをステップレースにしてJCに出走した方が良くねえか?賞金的にも秋天2着よりもGⅡ1着の方が高いし…』

天皇賞2着(2015年から春天と秋天の賞金は一緒になった)の賞金は6000万であるのに対して京都大賞典や毎日王冠の優勝馬には6300万が支払われる。

「秋天とJCの舞台は京都大賞典とは違って府中だし、毎日王冠のように距離も中途半端じゃねえ。勝率でいえばこっちの方が有利なんだよ。」

『だが京都大賞典は2400mだ。遠征してでもやる価値はあるんじゃないか?』

「まあ確かに普通の馬ならいいかもしれないが…マジソンは京都が得意でな…そこで勝ってもあまり参考にはならないんだよ。それに遠征はあまりしない方がいい。」

『そういえば菊花賞や天皇賞春は京都だしな。京都はマジソンにとって有利すぎるって訳か…』

「まあそういうことだ。さっきも言ったが毎日王冠だと距離が1マイルと2000mの間の1800mと距離が微妙だ。それだったら余計なことを考えずに多少ローテがきつくとも秋天にするべきなんだよ。」

『なるほどな…最近のサラブレッドは貧弱になっているしな。』

その根拠は近年古馬三冠…つまり秋天、JC、有馬の3レースを全て出走しない馬が多くなった。近年その傾向が見られるのはウオッカやダイワスカーレットが始まりであり彼女らはその年にすべて出走していない。その理由としては陣営が彼女達の力を引き出すためであるのだが…テイエムオペラオーが古馬王道完全制覇をしてしまったため世間からは古馬三冠を出走すら出来ない貧弱馬と言われているのだ。ただ凱旋門賞に挑んで秋天に挑めないケースも数多くあるが出走自体は不可能ではない。しかしそんなことをすれば疲れが溜まるのは目に見えているので出走しないのは当たり前だ。それどころかJCにも間に合わないケースもある。12年のJCでジェンティルドンナに負けたオルフェーヴルなどが良い例だろう。

『おいこら!』

マジソンが貧弱扱いされたことに怒り注意するがボルトには馬耳東風だ。


「落ち着け…マジソン。…まあボルトの言う通りだ。マジソンの親父は秋天と有馬を勝てずに引退してしまったからな。」

『シンキングアルザオのことか?あいつはアグネスタキオンの二敗以外はパーフェクトだろ?連対率100%の中ではシンザンを超え、そしてGⅠ7勝…』

この記録は無敗の三冠馬であるシンボリルドルフ、同じくディープインパクト、古馬五冠のテイエムオペラオー、牝馬三冠馬のジェンティルドンナ達と同等の記録であり、シンザンのGⅠ級に相当するレースを5勝(実際は6勝だが当時宝塚記念はGⅠ級とは認められなかったからシンザンは五冠馬とよばれている)の壁を超えたのはシンボリルドルフで7勝の壁はグリーンのみが超えてその後GⅠを8勝以上する馬は皆無である。

「あいつは…秋天と有馬だけが出れなかったんだ。身体が原因でな。」

『そうなのか?』

「あいつはダービー、菊花賞の二冠を制した後はJCや有馬には出走せずに翌年の春の天皇賞、宝塚記念を優勝後骨折…といっても軽度だが秋の天皇賞には間に合わなくなっちまった。JCはなんとか間に合って2着に大差をつけて勝利した…後は有馬は疲れが溜まってしまい出走自体が無理ということになった。その次の年も春天と宝塚を二連覇をしたがレース中に屈腱炎を起こしてそのまま引退…幸いなことにアルザオに負けたシンボリクリスエスが秋天と有馬を連覇したからなんとか面目を保ち、三年連続での年度代表馬になったが俺の中では秋天と有馬を共に歩ませたかった。」

『…間違いなく正常な状態で秋天や有馬に出たら勝っただろうよ。だがアルザオとマジソンは全くの別物だ。秋天にかけるんだったら秋天に集中、最強を目指すんだったらGⅡをステップレースにしてJCのローテがいいんじゃねえのか?』

「あくまで秋天はステップレースだ。アルザオの時代とは全くの別物…今年は例年と比べてハイレベルだからこそ惨敗してでも俺はやるべきだと思う。」

『つまり最強を目指すんだな?』

「…そういうことだ。だが秋の古馬三冠を出走せずに何が最強馬だ!」

『そういうことかよ…ところで俺のデビューはいつなんだ?』

「凱旋門賞の前の週…スプリンターズSの日だ。」

『というと…10月の1週の日曜日か。』

その日からボルトの調教は厳しくなったがボルトはそれをものともせず減量に成功した…


そしてゴールデンウィークやトロピカルターボ、トーマ無き菊花賞トライアル…セントライト記念と神戸新聞杯は皐月賞やNHKマイルC、ダービーを始めとした春の重賞の上位の馬達ではなく、夏のレースを使った馬達…所謂夏の上がり馬達が上位を占め、ボルトデビューの前日…札幌2歳Sが開催された。

【札幌2歳Sを勝ったのはマオウ!日本レコードを更新しての勝利です!】

結局マオウが日本レコードのおまけ付きで勝つという結果になり、陣営は2歳GⅠの一つである朝日杯FSの出走を宣言した。

『マオウが朝日杯FSか…まあナリタブライアンも勝ったから三冠を制するには問題はないのか?』

「確かにそうだがグリーンが降着しなかったらあいつは三冠を取れなかっただろう…」

『あの糞爺も若かったんだな。そんなミスをするなんて…』

「いや俺の責任だよ。俺があの時ミスをしなきゃそうはならなかった。」

『ま、今のおっさんは騎手じゃなくて調教師だ。そうネガティブになるもんじゃねえよ。』

「そうだな…俺とは違ってお前の騎手は橘だ。あいつなら信頼出来るしな。」

『そうか。それじゃ俺の勝利をじっくりと眺めておけよ?』

「頼んだぞ!」

次回は明日の6時更新、18時更新でハーメルンと同じ話数になります。

ちなみに次回でようやく主人公ならぬ主馬公がデビューします。

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