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青き馬、伝説に会う

ちなみに青毛は見た目真っ黒です。しかし青毛の馬を青き馬と表記しているのは間違いではありません。

~風間牧場~

クロスは走っていた。ただひたすらに。

『くそッタレ…!なんでどいつもこいつも距離がなんだってんだ!』

そのスピードは当歳の馬が出すスピードではなかった。

「もうあんなに逃げたのか!?速すぎる!!おい!牧場長!」

「なんでしょう?」

「クロスが脱走するぞ!なんとかしろ!」

「大丈夫ですよ。鉄の柵が置いてあるんですし。」


『鉄の柵!?ふざけやがって…』

クロスは逃げているうちに鉄の柵に辿り着いた。

とても普通の馬じゃ越えていける高さじゃない…

鉄の柵をどうにかしたいが、クロスは馬である以上機械の操作はどうしようもない上、知識もない。

そしてクロスは多少うろつき…決心をした。


「アホなことを抜かすな!グリーンも柵を越えて脱走したじゃないか!?」

「その時、グリーンは四歳(当時は数え年なので現代で言う三歳)で休養していた時でしょう?それにあの時よりも柵を高くしておきましたから大丈夫ですって!」

「…じゃあ、あれはなんだ?」


『ぬおおおお!』

そう言ってクロスは鉄の柵を越えて脱走した。


「どこが大丈夫なんだ?え?」

「ははは…いやこれは…その…」

「今すぐ捕まえてこい!総動員でだ!」

「はい!」

そう言って牧場長とスタッフ一同は車を運転しクロスを捕まえに行った。

「…どんな化け物なんだ?クロスは?これは菊花賞も考えて置かないとな…」


『ちっ…!車で来やがったか。』

「待てー!」

『待てと言われて待つか!!』

しかし、流石に車がクロスに追いつき囲まれてしまった。

「さ、戻るぞ。クロス。」

『うるせえ!俺は絶対に三冠馬になるから菊花賞も出せ!』

「戻ればリンゴや人参も食べられるんだぞ!」

『俺がそんなもので釣られると思うか!!』


「麻酔銃でも撃って眠らせます?」

「アホ抜かすな!!普通の馬ならそうしたかもしれないがこの仔はアイグリーンスキーの仔だ!そんな薬物を使わせるか!!」

「しかし…あの状態でですか?」


『ぬおおお!放せ!』

「なんてパワーだ!三人がかりでもひきづられるなんて…」

「おとなしくしろ!」

「本当に当歳馬か!?」


「…最終手段でだ。」

牧場長はため息をついてそう決断した。

「わかりました。」


そして以心伝心できないことにクロスはイラついてしまい、ついに…

「ジャ、マダ!」

カタコトとはいえクロスは日本語で喋った。

「えっ!?」

「この馬…喋りましたよね?」

このことに動揺した牧場員は手を離してしまった。

『よし!行ける!』

そして当然と言うべきかその隙を見たクロスは逃げ出した。


「あー…やっと戻ったか…」

しかし、クロスが走った方向は牧場の方向であり、元に戻って行ったのだ。

「お疲れ様でした…ホント…」

「それよりもクロスは大丈夫なんでしょうか?」

「何がだ?」

「門ですよ。開けっ放しにしたら泥棒が入ると思って門を閉めてきたんですが…」

「…マジか?」

「マジです。」

「牧場にスタッフは?」

「いません。」

「…風間さんは?」

「いません。」

「…」


なんとも微妙な空気になったが、その後無事クロスを捕まえ、クロスは牧場へと戻された。


五ヶ月後


~風間牧場~


クロスは同世代の他の馬達と馴染むことなく、育って行った。本来、馬は同世代の馬と馴染むのが常識であるのだがクロスは元々人間だったので馬と馴染むことができないのだ。


それを見かけた…牧場スタッフは…?

「牧場長。クロスが同世代の他の馬と馴染まないんですが…どうすればいいんでしょうか?」

「それは問題だな…」

「何をやってもうまくいかないみたいで…前なんか、従業員が同世代の馬と馴染ませようとしたら蹴り飛ばされましたよ…おかげでその従業員は骨折してしまいましたし…」

「そういえば、クロスはもう母親離れはしたのか?」

「いえ…むしろ3日目で済みました。というか馴致ももうそろそろ終わりそうです。」

「マズイな…このままだといざと言う時に馬に怯えて力が出せなくなるな…」

「どうします?」


「クロスをあの馬と会わせたらどうだ?」

「一体どんな馬ですか?」

「アイグリーンスキーだ。」

「えっ!?しかし…いいんですか?」

「それでいいんだ。私がクロスを連れて行くからアイグリーンスキーの場所で待っていろ。」

「わかりました…」


一方クロスは…

『どいつもこいつも…情けねえ。』

クロスは放牧中の3歳馬相手に競争していた。結果は大差をつけて勝利。

「あっ!やっと見つけたぞ!!」

そこへ牧場長が現れ、クロスの元にやってきた。

『ん?』

クロスが牧場長に振り向き、歩き寄っていく。

「お前に会わせたい相手がいるんだ。着いてこい。」

そう言って牧場長は轡をクロスに付けた。

『どんな奴なんだ?』

「ほら行くぞ。」

そう言われクロスは着いて言った。


~アイグリーンスキー号放牧場~

「ほら、行ってこい。」

それだけいうと牧場長は立ち去って行った。


『よう…』

いきなり青鹿毛の馬がクロスに話しかけてきた。

『あんたがアイグリーンスキーか?』

『まあな…ところでさっきの3歳馬達相手に勝ったみたいだな。』


グリーンは自分の息子であるクロスを見ていた。

しかし自分の息子だと気がついたのは走り方、雰囲気だ。クロスとグリーンは青毛と青鹿毛と毛色こそ違うが、グリーンはいろんな馬と走ってきたので雰囲気でわかる。


『それがどうした?』

『俺と勝負しないか?』

『おいおい…あんたは種牡馬だろう?』

この時期は種付けシーズンで種牡馬は繁殖牝馬に自分の遺伝子を授ける時期だ。

『俺はもう種牡馬じゃない。だから勝負しても何ら問題はないぞ。』

『わかった。』

『じゃあ、この牧場右回りの坂有りの一周…つまり2000mでどっちが早く帰ってくるかの競争だ。スタートの合図で始まる。いいな?』

『構わない。』

『それじゃ、着いてこい。』


グリーンに着いていくと…

「おや?なんでグリーンとクロスがこんなところに…?」

2人の牧場スタッフが偶々そこにおり、クロスは驚いた。


もう一人のスタッフはベテランなのか疑問に思ったスタッフに言い聞かせる。

「いやグリーンは時々ここに走りに来るんだ。だけどまだ幼いクロスを連れるなんて…もしかして、グリーン…お前、クロスと競争するのか?」

それにグリーンはコクリと頷く。

「なるほど。それじゃ、タイム測るから準備はいいか?」

二頭は頭を振り了承したことが分かった。

「それじゃ…始め!」

そしてレースが始まった。

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