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プロローグ

ハーメルンの方からやってきました。そちらの方もよろしくお願いします。

〜1994年〜


凱旋門賞、それは世界でも最もレベルが高い競走馬達が集まるレースだ。これまで日本馬が勝てた例は皆無である。しかし一頭の青鹿毛の4歳(現3歳)馬が日本馬として挑戦していた。


その名前はアイグリーンスキー。日本ダービーで二着と遅れをとったがその遅れを取り戻すかのように古馬GⅠの宝塚記念で快勝、そして凱旋門賞のステップレースであるニエル賞でも勝利していた。


そんな彼は今、ロンシャンの直線にいた。

【さあ、アイグリーンスキーは三番手に入ってここから先頭に詰め寄った!アイグリーンスキーが先頭に変わった!じわりじわりとリードを広げてこのまま凱旋門賞制覇なるか!?】

そして凱旋門賞のゴールにグリーンが着いた。

【ゴール!ゴール!ゴールゥゥゥゥ!!!アイグリーンスキーやりました!日本馬およびアジア馬史上初の凱旋門賞制覇です!!これが日本馬の底力だ!!!】

凱旋門賞の後にアイグリーンスキーは海外の競馬関係者から宇宙からやってきた馬と評され、UFO、あるいはUMAと呼ばれるようになった。そして日本でもその名前は伝わり、伝説となった…


~2017年 1月~

グリーンが伝説の馬と呼ばれてから二十数年後、中山競馬場付近でダレている中年の男がそこにいた。

「あ~あ…もう金もないし…あれをやるしかないか。」


そうブツブツといっている中年の男は木曽翔。

彼は就職したがすぐに辞めさせられてしまい職につけず、住む場所がなくなりホームレスになっていた。

そこでコツコツと金を貯めて一発逆転を狙い、有馬記念で競馬の馬券を全財産かけたが、かけた馬が負けたのだ。しかもその馬はレース後故障し、八つ当たりしようにもできなかった。


話を戻そう。彼が向かった先は駅だ…その先には電車が来ている。

「だりゃぁー!!」

ぐじゃっ!!

なんと彼は突っ込んで自殺した。もう彼の精神は耐えられなくなっており自殺を考えていたのだ。

「なんだ!?」

「おい!誰か飛び込んだぞ!!」

「列車を止めろ!」

その後ニュースとなり彼は亡くなった。


~2017年 春~

「風間さん。」

そう言って若い男性が入ってきた。

「どうした?牧場長。」

風間と呼ばれた男は若い男性の牧場長に用事を聞く。

「オークス馬アルパナに種付けする馬を決めても良いでしょうか?」

「どんな馬だ?」

「アイグリーンスキーです。」

「グリーンは今年で26歳だぞ?老馬にろくな馬は生まれん…」

「しかし…!あの馬は風間さんがわざわざ海外に行ってまでニジンスキーを種付けして年度代表馬四年連続をという偉業の馬でしょう!ウチの牧場を立て直したのもあの馬ですよ!恩返しくらいしないと…!今、SS(サンデーサイレンス)系は流行りすぎているので止めないと!」

「だったら尚更だ。無理にあいつの子供を作らすよりもゆっくり休ませた方がいい…それにSS(サンデーサイレンス)系の勢いは止まらん…」

「だったら、私は辞めます。」

「…そんなにいい予感がするのか?」

「はい!」

「それでもし走らなかった場合…わかるな?」

「ええ…」

「もし走った場合は、俺は種付けに関しては何も言わん。全て牧場長であるお前がやれ。」

「わかりました。」


~翌年 3月28日午前5時半~

「風間さん!いよいよアルパナの仔が生まれます!」

「何?!行くぞ!」

「はい!(口ではなんだかんだ言いつつも風間さんも気になっていたんだな…)」


「中々出てきませんね…」

「それはそうだ!普通、馬は朝産むもんじゃない。よほど敵を警戒していたんだろう。」

「アルパナの仔の脚が…!出てきました!」

「産まれる…!グリーンとアルパナの仔が!」

そして、その時窓の隙間から太陽の光が入り込み、グリーンとアルパナの仔を歓迎するかの様に差し込んだ。


「なんて産まれ方だ…天に愛された馬なのか?」

「こいつは青毛ですね…」

「青毛?青鹿毛ではないのか?」

「ええ…何にしてもこいつはかなりの名馬になりそうですよ。」

「そうだな。他の同世代には悪いがこの馬が日本一の馬だ。」


~翔SIDE~

『おいおい、どういうこった?俺は確かに自殺したはずだ…なのに馬房の中に入れられている?』

そう言って翔が立ち上がると…

『俺自身が馬になっているのか?!』


「それよりも、もう立ってますね。」

「早すぎないか?まだ十分も経ってないぞ?」

「でも早く立ち上がれることに心配はありませんよ。ルドルフも立つのは早かったでしょう?」


ルドルフ…シンボリルドルフのことを指しており競馬史上初の無敗での三冠馬だ。彼のエピソードはいろいろと残っており、特に驚くべきなのはセントライト記念で2、3着を取った馬が菊花賞を避けるという事態が発生した。その理由は関係者曰くあいつは化け物だ…らしい。


「それでもルドルフよりも十分以上も早いぞ。」

「だとしたら、グリーン以上の化け物ですね…」


『あ?もしかして産まれた直後に立ち上がれるのって変だったのか?』

翔がそう思うのは無理もない。彼は競馬にそういったエピソードに関してはあまり詳しくなく馬名だけ覚えている…という男だったからだ。

ちなみに普通の馬でも立つのに1時間はかかる。


『それよりも…どうするかだな。俺は一度自殺しちまったし…やれるだけのことをやってみるか。あんなことになったのは自業自得だしな。』

翔の人生は小学生の時、神童と呼ばれたが中学に入ってからは努力せず、高校になってからはもう遅く…それでも大学生となってなんとか就職につけたがすぐに首にされた。翔が神童と呼ばれたのにホームレスとなったのは努力をしなかった自業自得だ。


「それにしてもこの仔の名前をつけてあげないと…」

「幼少期、顔の模様でルドルフは三日月だったからルナと呼ばれ、グリーンはスター…こいつは十字だからクロスでいいな?」

「クロスですね…いいんじゃないですか?呼びやすいですし。」

『クロスか…俺としてもいい名前だと思うぞ!』

「おっ?こいつも気に入ったみたいだな。じゃあ俺はこの辺で失礼するぞ。何かあったら呼んでくれ。」

「わかりました。では…」


翔ことクロスが産まれたが競馬記者の話題にはならなかった。その理由は…風間が新聞を読んでいた時に聞いたからだ。

「ディープの最高傑作誕生?母親は凱旋門賞とJC(ジャパンカップ)勝ち鞍カルシオ…ヤバイな。超一流の血筋じゃねえか。」


JCは凱旋門賞馬は勝てないというジンクスがある。実際カルシオがJCを勝つまでは凱旋門賞馬はアイグリーンスキーただ一頭しか勝っておらず一昨年に勝ってしまったのだ。その後引退し、日本に輸入された。


『なるほど…そういえばいたなそんな奴。』

クロスがイマイチな反応をしているのは凱旋門賞というレースがどんなレースかわかっていないからだ。

「にしても、またサンデー系か…どうして競馬関係者はそんなにサンデー系が好きなのかねぇ…」

「無理もないですよ。サンデー系は日本の競馬を良くも悪くも変わらせたからでしょう。」

『へえ…そうなのか。』


「それなんだよ。俺が気に食わないのは。グリーンと同じ父親を持つラムタラは種牡馬としては失敗するし…グリーンもグリーンで、ダービーを含めたG1を6勝したカーソンユートピアこそ出したがその世代が低レベルの戦いと言われ…酷い時には劣化版オペとまで言われた…その結果日本ではSS(サンデーサイレンス)が死んでもグリーンに注目する奴はいない。」

『そういえばガキの頃、グリーンとカーソンが話題に上がったっけ…』


「まあ…それはそうですけど…」

「ドバイ王国や欧州の馬主の連中はグリーンを注目して買い取ろうとしたが、俺は何が何でも売らなかった。売ったとしても1000億円が最低価格だ。」

『最高で最悪だな。』

「まあ、代わりにカーソンは輸出してやった。奴らはグリーンの産駒…つまりカーソンユートピアでもいいと言ってきたんでな。もしあそこでカーソンを輸出しなかったら殺されていただろうな。それほど奴らはグリーンの血が欲しかったって証拠だ。」


「はあ…そんなに外国はグリーンの血が欲しかったんでしょうか?」

「SS系に対抗するためだ。」

「え?」

「SS系は日本から外国に基本的には輸出していない。他にもTB(トニービン)BT(ブライアンズタイム)なんかもな。」

トニービン、ブライアンズタイム…この二頭のうち一頭を父親に持つ馬らはサンデー系以外でダービーで他の馬よりも勝てると有名だったがもう引退した。またサンデー系の過剰な血を薄めるためにも使われていた。


「あ…!そういえば!」

「だからグリーンを欲しがったんだよ。馬主名義は俺個人の馬だしな。」

「でもオペラハウスなんかもよかったでしょう?オペラオーやサムソンも出した馬ですし…」

「シンジケートだ。」

シンジケート…すなわち株を持っていれば自分の繁殖牝馬に種付けする権利がある。それ以外はどんなに金があっても種付けすることは不可能。

「う…」

「ウチのグリーンはシンジケートを組んでいない。だから買い取ろうとしたんだよ。」


何故風間はそんなことをしているかというと…グリーンの血を広めるためだ。シンジケートを組まないことで種付け権利を誰でも出来るようにした。その結果サンデーの血を薄めるためにグリーンに種付けされる馬が増えてきた。


「まあ最近はSSの血がありすぎて薄めるためにほとんどの馬主がグリーンの血を求め始めてきた。」

『じゃあ俺の母親はアルパナだったよな…確か血筋をたどると…』

「そうなるとクロスもサンデーの血を薄めるために活躍するんじゃないですか?」

「だが…母父はスピードタイプのあの馬だろう?長距離は不利だろうな…クロスは。」

『キングカメハメハか。』


キングカメハメハ…NHKマイルCと日本ダービーのきついローテで勝ってしまい、しかもダービーはレコードで勝つという馬だ。その記録は次年度の三冠馬ディープインパクトと同じタイムであることからとんでもない化け物であることがわかる。

その後、神戸新聞杯で勝ったが天皇賞秋に出られずに引退した。種牡馬としても優秀で、オークス馬アルパナ以外にも朝日杯FS馬をも出した。


「ええ…ですがその距離までなら絶対に勝てると思いますよ。」

「問題は長距離になってからだな…他の時代ならともかくカルシオの仔が相手じゃあ…ディープも長距離に関してはかなり強いしな。」

『確かに…ディープは菊花賞にも勝って、天皇賞春で日本レコードを更新しているし…しかも2着の馬も更新していたし。』

「どこまでが限界か知っておきたいですね。」

「アルパナの距離次第だな。」

『…どいつもこいつも勝手なことほざきやがって。距離がなんだ?そんなもの俺の努力で克服してやるよ!!』

「ん?クロスか?」

『おい!おっさん!絶対に俺は三冠馬になってやるから、そこで指をくわえて見てろ!!』

それだけ言ってクロスは走って行った。

「あ、おい!牧場は向こうだ!元に戻ってろ!」

風間がそう言うがクロスは届かずに走って行った。

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今日の投稿は10話くらいまで一気にします。

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