表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/92

第87話

先手はシエル……

しかし、攻撃をした訳じゃない。

シエルがした事は単純、足元の地面……

ここは石畳になっているのだが、そこに向かい大鎌を振り下ろし、思い切り砕く……

すると、無数の石畳の破片が四方八方に飛び散る。


「……そこ!」

「やるじゃない。正直舐めてた。」


シエルは突如、地面を蹴り虚空を切り裂く、どうやら声からして場所は当たっていたようだ。

振り抜いた勢いでまた地面を砕くシエル。

すると、また瞬時に地面を蹴る。


「……この程度誰でも出来る。」


絶対に無理だろう。

普通の人なら地面を砕く所から無理だ。

そして、瞬時に無数の石の破片の中から不自然な物を見極める事は出来ない。

もし、真後ろだったら反応出来ないだろう。

しかし、先ほどからのシエルの動きは真後ろの場合にも反応している。


「話をする為だけでこんな事になるとは……」

「……それは私も同じ」

「よく言う……あんなに嫌がられていた癖に話をするだけ?」

「…………」


シエルはばつの悪そうな顔をする。

一体どういう風の吹き回しだろうか?

先ほどまで、自分は当然の事をしているとでも言いたげな顔だったのに……


「場所を特定できても追跡が出来ないならその大鎌は当たらない。」

「……足元には気を使った方がいい……」

「――――!?」


ステラの動きが変わる。

地面を砕くのをやめてさらに追い打ちをかけるような動作が入る。

しかし、足元?

あぁ、そうか……

足元には破片などが満遍なく撒き散らされている。

それで足運びを見ているのか……


「お気に入りの外套が少し斬れたわ……」

「……その喋り方取ってつけたようで気持ち悪い。」


そうか?

俺には特に感じないが……


「そう? メリアは頑張ってキャラを作ってたんだけどね。この喋り方だと名前がバレるから私って言ってたんだけど……あなた達には隠しても仕方ないよね。」


どうしても下らない事に聞こえるが……

彼女にとっては潜入などをする以上は直さなければいけなかったんだろう。


「あなたはここで死ぬんだから……」

「くッ……!」


瓦礫の動きが無くなる。

それはつまり、シエルはロメリアを見失った事になる。

ここは市街地、建物がある……となれば、屋根の上なら瓦礫や破片はない。

シエルは追跡出来なくなる。

あとは、ロメリアが屋根から躍りかかるようにして致命的な一撃をお見舞いしてやればいい。

だが、そんなのはダメだ。

どんな事があろうと、シエルは守るべき対象だ。

なら、躊躇う必要などないだろう。


滅楽園(エクスターミネイト)


その言葉を俺が口にした瞬間、足元に魔法陣が浮かび上がり、紫の光を放つ……

そして、瞳の色が黄金に変わって行く……

自分を人ならざる者に変えてしまう魔法(アーツ)だ。


それは悪魔でもなければ人でもない、ましてや魔物でもない何か。


「ガルムが消えた……」

「おい、何だよアレは……」


俺を指差しそう言うマカ・マナフの者たち……

だが、構っている暇はない。

今は、シエルの安全を優先だ。

俺はまず、暴れ狂う巨人の如き力を以てして拘束を解く。

そして、駆け抜ける韋駄天の如き速さで守るべき彼女を攫うかのような形で捕まえる。


「なッ!?」

「え…………」


全てが一呼吸の内に全て行われる。

ともなればこういう反応にもなるだろう。

先ほどシエルが居た所に何かが降り立ったように破片が舞いあがる。

もし数秒遅ければ、シエルは刺されていただろう。


「ふッ――――!」


その呼吸とともに刃物が投擲される。

投げナイフだろう。

そのナイフは一直線にシエルをめがけて飛んでくる。

俺は竜鱗の如き硬さをもつ身体を宿し、まるで目障りなハエでも掃うかのようにそのナイフを弾く……

普通なら俺の腕を切り裂かれてもおかしくない行為……

だが、俺の腕にはかすり傷一つない。


「やっぱり馬鹿げてるね。あなた……」


俺は弾いたナイフを拾う。

そして、飛鳥の目を宿し、屋根の上に立っているロメリアに向かって投げ渡す。

あの投げナイフ、中々に手入れがされていた。

それに、投げナイフもタダじゃない。


「メリアが見えてるの?」

「あぁ、よく見えているよ。」

「撤退だ。領主の面々が来る。」

「撤退なんて久しぶりだな。」


ロメリアもマカ・マナフの仲間の元に戻る。

恐らく、彼らならば領主の面々とも戦えるだろうが……

何か困る事でもあるのだろうか?


「君たちも領主の面々とは会いたくないだろう。早くどこかに逃げたらどうだ? それとも僕らと来るかい?」

「お引き取り願おう。」

「はぁ、一応言っておくが僕らは君……そうだな。災厄(ディザスター)と言うべきか? 災厄(ディザスター)君と戦うつもりはない。ロメリアが話したいといっていたからここまで来たんだよ。」

「ち、ちょっと!!」


ロメリアが取り乱したように叫ぶ。

まぁ、確かに俺の命を明確に狙ってきてはいなかった。

だが、シエルの事は狙った。

まぁ、あんな状況なら俺を連れ出す為と考えれば不自然な行動ではない。


「取り敢えず、またメリアは来るから。」

「……二度と来ないで」

「犬は黙ってなさい。」

「……ぶりっ子よりはマシ。」


これはアレだな……

姉ちゃんとティアみたいに仲直りする可能性はゼロだな。

不毛な言い合いが始まる前に立ち去るとしよう。


「……ん!?」

「俺らは帰らせてもらう。」


シエルをお姫様抱っこにしてまた韋駄天の速さを宿した足で駆けだす。

流石にこれをやったのが俺だとバレれば厄介だ。

ガルムの事もあるし……

ここから少し離れてはいるが俺の宿へと向かうことにしよう。








「はぁ……はぁ……なんとか見られなかったな……」

「……魔法(アーツ)は本当に誰にも教えてないの?」

「見たんだろ?」

「ゴメンなさい…………」

「えっ……」


嘘、だろ……

まるで借りてきた猫の様だ……

猫じゃなくて狼だけど……


「見ちゃったから……ユウの壊れそうな心を……」

「…………」

「悪気は無かった……けど、そうでもしないと私はあなたを信じられなかった。」


確かに、過去の記憶……その時、抱いていた感情までも知る事が出来たならそれは人格を見極めるには最高の材料だろう。

まさに、百聞は一見に如かずと言う奴だ。


「けど、分かった。あなたが、どんな人物かを……やっと、あなたが信頼出来るって分かった。」

「…………」

「ミチよりも……だから誰にも言わない。」

「!? いいのか?」

「代わりに、私を許して……私の味方でいて……」


弱々しい声……

そんな声で俺に縋りついてくる。

そんな事を言われてしまえば、俺は逆らえない。

もとより、俺はシエルを敵と思った事は無い。

例え、捕まって記憶を探られようと、俺にとってシエルは敵になりえない。


「記憶を見たなら分かるだろ? 俺はシエルを嫌っていない。ただ、記憶がティアに伝わるのが怖いだけだ。」

「ティアに伝える理由がない。今、私が一番信じているのはあなた。」

「何故、俺が信じれると? 俺自身何か凄い事をした訳じゃない、弱いばかりにみんなを裏切る事しかできなかった出来損ないだ。」


こうなったのも全て自分に非がある。

誰かの所為ではない、自然になってしまったんじゃない。

俺が悪いのだ。

ティアを助ける為と言うのは言い訳にしかならない。

結果がどうであれ、俺がティアと姉ちゃんを泣かせた事実が変わる事は無い。

“俺にとって大切な人”を“俺”は傷つけたのだ。

許されてはいけない大罪だ。


「あなたの記憶を見れば誰でもあなたを信じる。私は何度かこの“ムネーモシュネーの短剣”を使った事がある。けど、見えるもの全てが醜かった。利己的な考えばかり……私の家族もそうだった。自分の事しか考えてなかった。」

「親……?」


どうしてもその単語は聞き逃せなかった。

見過ごしてはいけない気がした。

俺は反射的に声を出していた。


「ユウ程じゃないけれど……私の家族は、毛の色の違う私を嫌った。」

「そんなにも可愛いのに?」


話の出鼻を挫いた形になったが、シエルの銀色の耳はとても綺麗だ。

毛並みも良く、思わず触ってみたいと思う。

それに耳がなくても可愛いシエルにそんな耳を付ければ鬼に金棒だ。

そして、シエルのあの尻尾はもはや人を悶絶死させる凶器にしか見えない。

だが、そう言う所に目を向けたり触るのは失礼に値すると言うのを見た為、敢えて意識しないようにしていた。


「ん―――!? 嬉しいけど、話が進まない……」

「あ、ゴメン。続けて?」


シエルの尻尾が凄い勢いでブンブン振られてるけど……

犬だったら喜んでる表現らしいけど、これはシエルにも当てはまるのかな?

いつも意識しないようにしてたのに、どうしても目が行ってしまう。

可愛い……おっと、ダメだ。

シエルは真剣なんだ。


「……私の生まれた集落で生まれた銀色の毛の子は禍を呼ぶ“忌み子”として扱われるの。」

「忌み子、ね……」


俺は見たこともない、存在自体初めて知った相手に対し“憎しみ”を抱いた。

シエルとは守るべき正義であり、それを傷つける者は全て敵、悪。

そんな事があった以上、俺はその集落を見つけたら一瞬の内に潰すだろう。

それに集落と言う狭い世界の中でシエルがそんな目にあっていたと思うと際限のない怒りが湧きあがる。


「そんな私がここに今いる理由……それは、とても簡単な結論。」


忌み子と呼ばれたシエル……

それが何故、姉ちゃんと共に居たのか、そして何故シエルが男を嫌うのか……

その後に続いた言葉はとても残酷なものだった。


「私は、売られた……」

「えっ……」

「集落の者、全員によって私は奴隷商に売られた。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ