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第8話

 まぁ街についてのことは今は置いておこう最悪の可能性ここの街に来ることを考えたがそんな後ろ向きな考えでは出来ることも出来なくなる。


 取り敢えず飛鳥には戻ってきて貰うか……

 そう思い共有化(シェアライズ)をやめて帰って来てくれと伝える


 共有化(シェアライズ)をやめて周りを見るとゴーレムの周りにゴブリンとおぼしき死体が3体転がっていた…

 恐らくだが3体とも一撃で死んでいる

 頭のないもの

 身体が大きく削られたもの

 もはやバラバラで身体の一部が散乱しているもの


 ゴーレム強いな…

 そんなことを思いながらゴーレムに訊く


「何があったの?」


 しかしこのゴーレムは当然ながら人の言葉を話すことは出来ない

 なので代わりに頭の中にゴーレムが何を考えているか流れてくる


(マスターを見た薄汚いゴブリン共が襲って来たので返り討ちにしました)


 もはや思考の共有というよりテレパシーだな

 というかマスターって俺の事か?

 いやきっと気のせいだ…気にしないキニシナイ


(助かったゴーレム。引き続き周囲の警戒を頼む)


 こちらもテレパシーで返しておく


(了解)


 これ(テレパシー)に慣れたらかなり戦闘時の連携に役立つだろうな。

 これからはコミュニケーションをもっととっていかないと…

 相手からは必要な時にしか使ってこないからこっちが積極的にならないと完璧に事務的な話になるんだよな…


 取り敢えず今からこの辺り一帯で狩りをして周囲の安全を確保しようと思っている。

 それにあたって索敵用の仲間が飛鳥だけでは数が足りないだろう

 しかし俺の今の力では一体づづしか生み出せないのだ

 何回にも分けてやらねばならないのだ


「あぁ一気にできないかなぁ」


 そんなことを愚痴りながらもあの言葉を唱えるのだった


失楽園(パラダイスロスト)













 目の前にはゴーレムが4体、灰色の毛皮の狼が4体、カラスが2匹と飛鳥がいた。

 正直なところキツイ…狼とカラスは大して負担ではないのだがゴーレムが辛かった。


 恐らくゴーレムをあと一体増やすだけで俺は一歩も歩くことができなくなる。


 今の俺は魔物が目の前に現れても走る事は出来ないし魔力はゆっくり回復させたあと魔法アーツを使ったのでまだ大量に残っているが自然魔力回復量を消費魔力量を上回っているので徐々にだが減っていっているこれ以上追加するのは避けたい…


 と言うわけで今からは迅速にやって行きたい。

 取り敢えずゴーレム一体と狼一体のツーマンセルで行動してもらう


 自分の護衛に1組比較的近くの探索に1組遠くの方は2組で探索してもらう

 カラスと飛鳥たちには空から索敵し敵を見つけ次第最短距離にいる組を呼ぶという作戦だ。


 戦闘に突入した場合、もし予想外の敵や物を見つけた場合にしてもまずはテレパシーで報告するという手筈になっている。


 倒した魔物の死体だがこれについてはどこかに売ることも出来ないので埋めるなり土を被せるなりして各自で処理しておくという様に指示してある。


 みんなが俺を通さなくとも仲間どうしなら意思疎通をとれるということができなかったら実現しなかったがどうやら出来るようなのでこの方法にした。


 ちなみにだが当然、人間など理性と知性をもっている相手との戦闘は極力避けるように指示してある。

 これで余程の事がない限り村の皆やティアたちと戦闘に入る事はないだろう


「じゃあ…始めようか」


 その声と同時に予定通りにゴーレムたちと狼たちはツーマンセルで行動を開始し、カラスたちと飛鳥は空に飛び立つ…


 なんというか少し圧巻の眺めだった。

 しかし感動している場合ではない…

 俺が共有化(シェアライズ)をしている少しの間にゴブリンが3体もこちらに来ていたのだ…


 どつやらティアはあまり出現しないと言っていたがそれは少し違うようだ。

 居ることには沢山居るのだろうしかし村には攻めていない…そしてそれはまだティアたちや村の人たちには気取られていないようだ。

 この事については帰ってからティアに報告しておこう。


 しかし数が多いということは俺の元にも魔物が来ることを示している。

 俺も警戒を怠ってはいけない…気を引きしめなければ…


(ゴブリン2体と遭遇。戦闘開始します)


(ゴブリン4体と遭遇。戦闘開始します)


(狼形の魔物3体と遭遇。戦闘開始します)


 さっそく3組とも戦闘を開始している。

 これは予想以上に敵の数は多いかも知れない…

 それに狼形の魔物か…どんな奴なのだろうか?


共有化(シェアライズ)


 その言葉のあと俺の視界が変わる

 すると目の前には確かに狼がいた

 大きさはこっちの狼より少し大きいくらいだが明らかに普通の狼では無かった…


 体毛は殆ど見る影もなく目は赤く染まり身体中に血管のようなものが浮かび上がっていた。


 彼等は俊敏な動きを武器に戦うようだ。

 3体でゴーレムを囲み隙を見て攻撃しじわじわと倒すつもりだろう…


 確かにゴーレムはそれほど素早く動き回る事は出来ない…


 しかし彼等は勝てない

 何故なら彼等はゴーレムに有効打を与えれない

 それにゴーレムは走り回る事は出来ないが攻撃速度はかなりのものだ


 カウンターに徹していれば着実に倒せるだろうし

 逃げようとすれば周りの物を投げるなり狼に出てきて貰い足止めを任せて倒すなり色々倒す方法がある。


 という訳でこの狼形の魔物を大して警戒する必要は無さそうだな

 そう思い共有化(シェアライズ)を切った


(ゴブリン2体殲滅しました。探索を再開します。)


(ゴブリン4体殲滅しました。探索を再開します。)


 流石、ゴブリン程度じゃゴーレムの敵じゃないな。

 さっきの狼形の方はハウンドと呼ばれる魔物と思う本に書いてあった特徴と一致しているしな


 狼形の魔物の注意すべき特徴としては群れをつくることと素早い動きだ。

 まぁ狼形でも強力な個体は群れをつくらないようだがこれは例外と言ってもおかしくない。

 というのもあの本にあった強力な個体とは単体で街を一つ壊滅させるレベルの強さなのでこれと会ったら逃げる以外の事は考える必要はない。


 こうして考えている間にも戦闘突入の報告や戦闘終了の報告が入る。

 ハウンドとの戦闘も1分掛からなかったようだ。


 他の組も何度かハウンドと遭遇しているみたいだが時間を掛けている様子はない。

 やはりハウンドは弱いのだろうな…


 そんな考え事をしていたときの事だった。


「グルルルゥゥゥ…」


 唸るような鳴き声が聞こえたと思ったらゴブリン3体とハウンドが4体いた…


 唸っていたのはこっちの狼が威嚇していた声のようだ…




 正直これはかなりヤバイ状況だ…


 俺の身が危ない…


 恐らくこの状況は

 どう回しても()が何体か相手をせざる終えない状況。

 俺はこの状況になるのを恐れていた

 この中で俺は一番弱い恐らく1体…倒せるか倒せないか

 俺は圧倒的に後衛職なのだ

 攻撃専用の魔法アーツのような物も無ければ武器も無い…

 しかも負荷を掛けている状態


「逃げるぞ!ゴーレムはゴブリンを優先的に対処!狼は俺と離脱だ!」


(ゴーレムは今行っている戦闘が終わり次第戻ってくれ(・・・・・)狼は俺を乗せている狼以外全員戻ってくれ(・・・・・)カラスたちは敵のいない迎え撃つにぴったりな場所を探してくれ)


 俺は素早く指示を出して逃走する

 まぁ走っているのは狼だがにしても俺の近くの狼だけ大きくしておいて良かった…


 狼は俺の重さを物ともせず木々の合間を縫っていく流石は俺の想像から産まれた狼だ。


 問題はハウンドだがコイツが意外にも厄介だった…正確に俺と狼を追跡してくる…

 もっと厄介なのが仲間が増えていることだ…

 恐らくこれじゃゴーレム1体出したところで殲滅出来るか怪しいところだ…


 魔力が減っていく感覚が消えたのを感じた

 これでそのうち充分な魔力が回復されるまで逃げれば勝ち目がある


 すると飛鳥が高度を下げて俺たちの前を飛び始めた。

 恐らく案内してくれるのだろう。

 その時だった


 ―――ビュッ!


「…っ!なんだ!」


 頬を掠め何かが飛んできた

 振り返るとハウンドにゴブリンが騎乗していた。

 恐らく投げられたのは手に持っていた武器…


 頬から赤い液体が伝うのがわかる

 もし少しでもずれていれば直撃…

 どうなってしまうかは想像に難くない



 ―――死―――



 奴等にとって俺の生死は関係ない

 むしろ死んでいたところで俺のにくがあれば…喰える場所さえあればいいのだ

 法や権力は守ってくれず人の常識は奴等の欲望を止める理由たり得ない


 感じた死の恐怖…

 体が恐怖に震えその場でうずくまりたくなる。

 このまま迎え撃たず村にまで逃げたくなるような気持ちに押し潰されて逃げる方法を考えたくなる。



 だけど…

 それじゃあきっとこの先俺はこの世界で生きることは出来ないだろう…

 もし生きていてもきっと守られたままで自分は二度と戦いの道を歩む事はないだろう

 守られたままで奥の方で隠れている…

 そんな俺を俺は許せるのだろうか?




 ―――それは生きていると言えるのだろうか?




 答えは…

 ―――否だ―――




 その時…声が聞こえた…



 逃げるだけでいいの?


 ―――そんな訳ないだろ


 やられっぱなしでいいの?


 ―――そんな訳ないだろ!


 じゃあどうするの?


 ―――そんなの決まってる……俺は!


 その時

 体に湧きあがる物凄い力を感じた


 もう逃げる必要はない

 死ぬつもりもない

 狼から跳び降りた


 しかし俺には騎士ナイトのように剣を片手に魔物を相手することなどはできない


 だから―――


 剣をとれない俺は声をあげた…


失楽園(パラダイスロスト)!」


 現れたのは―――

 鳥獣の王たる鷲の上半身と翼に―――

 百獣の王たるライオンの下半身をもった―――




 ―――グリフォン―――




 こんな伝承がある

 グリフォンは黄金を見つけてそれを守護する存在だと


 まぁ今この時は俺を守ってもらう為に呼び出したのだが

 しかしグリフォンはやはり強大すぎた。

 湧きあがるこの力をもってしても1体で真っ直ぐ立つのがやっと…


 ハウンドたちは俺と言う餌を目の前に強大な敵が現れたのを察知したがそれ故に気付かぬ内に突然目の前に現れた事に戸惑っている


 ここでほっておいて逃げれば多分……いやグリフォンに乗せてもらえば確実に逃げることが可能だろう…

 しかしここで逃げれば今すぐでなくとも明後日、いや明日にも村の人達もしくはティアやサラさんに牙を剥くかもしれない…


 だから


「お前らには…ここで死んでもらう!」


「ギャァァァァァァァオ!!!!」


 俺の思っていることを察したのかグリフォンが吼え大気が震える

 威嚇なんて生易しいものじゃないその咆哮自体が既に攻撃に匹敵するレベルだった。


 そこからはもはや戦闘ではなかった…


 一方的な蹂躙劇と呼ぶに相応しいものだった


 グリフォンが一度その前足を振るえばハウンドたちはその体を散らしていく

 その口を開けば咆哮と共に直線上に風の刃が竜巻の如く吹き荒れる。その直線上では木々が薙ぎ倒され地面さえもえぐっていた。


 圧倒的な力の差

 まわりに広がるのは戦闘痕というより何かの災害痕だった。

 死体と呼べるものさえ残さない…残るのは血飛沫と肉片のみ

 明らかな過剰殺戮(オーバーキル)だった。


 当然の如く俺の元にハウンドたちが辿り着くことはない

 遂に諦めたのかもう少なくなったハウンドたちは逃走を開始した

 それを見たグリフォンはこちらを見てくる


「グルルルルゥゥゥ」


 それは傍からすれば俺に敵意を向けているかの様にも見えなくもないが、彼の逃げた奴らの処分について問う意思が伝わってきた。


「あぁ殺ってくれ」


 迷いはもはやなかった

 追い撃ちの指示を出すとグリフォンは突き抜ける疾風の如く地を駆けやがてその強靭なる足は空をも踏みしめた。

 きっと…いや、確実にあのハウンド達は二度と俺の目の前に現れる事はないだろう。








 少しするとグリフォンが戻って来た。


「助かった。また呼ぶこともあるかもしれないがその時は頼む」


 今は彼を出現させるだけでほとんど自分はなにも出来なくなってしまう

 しかし、いずれまた彼の強大な力を必要とする時がくるかもしれない。


(主よ…その時は私も全力を持って主を守護することを誓おう)


 まるで騎士みたいな言葉の後グリフォンは光になって俺の想像に帰っていった…

 全く…なんでこんなに忠誠心が高いのだろうか


 しばらくすると急に頭が…いや頭だけではない感情も冷めていくのが分かる…

 今思えばあの声の後に俺の中の魔力が膨れ上がったり

 それと同時に俺の感情が昂っていった。


 どうやらあの声の後の魔力の大幅な増幅だが一時的なものじゃないようだ。

 俺の元々の魔力が増えたと思って間違いないだろう


 しかし何故だ?何故、魔力が増えた?しかもあの声……

 あの声の後に魔力が増えしかもあの感情の昂り…


 まるで自分ではないだれか…

 いやそんなはずはない。

 きっと戦闘で興奮したのか自暴自棄になっていただけだ。


 しかしあの声は誰だったのか…また声を聞くことがあるのだろうか?果たしてあれは……

 敵なのかそれとも味方なのか…


 その時、俺は心のどこかで思っていた…

 この声の主とは長い付き合いになりそうだなと


 そうだな

 これだけは言える…


「ありがとう…助かった。」

 

 その声は誰にも届くことはないだろう…

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