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第57話

「さぁ~~~とうとう始まりましたッ!!! 全国からありとあらゆる強者が集いッ! 競いッ! 高め合うッ! 武の祭典英傑の饗宴(ヴァルハラ)初日!」

「いや~~始まりましたね。この日が待ち遠しくて昨日はなかなか寝付けませんでしたよ。今日集まっている方々もきっとそうなのではないでしょうか?」

「そうですね! それでは、寝てしまう方が出る前に始めるとしましょう! 出場者の方々、どうぞ!!」

「「「わあぁぁぁぁぁ!!!」」」


 調子の良い司会兼実況の人の声と止まる所を知らない歓声が響く。

 入場するのは全出場者。

 これほどの人数を収容できるこの英傑の饗宴(ヴァルハラ)という聖遺物には驚かされる。

 しかも、いくつかの球体が宙を浮き様々な出場者を映し出す。


「凄いですね~。錚々(そうそう)たる顔触れ……ここまでの顔触れはそうそうありませんよ。私もこれほどの光景は初めてです。」

「そうですね! 私も始めてみます!! 今回の英傑の饗宴(ヴァルハラ)は一波乱も二波乱もありそうですね!!!」


 どうやら敵は強そうだ。

 球体に映し出される人物の紹介が時折、行われるのだが……

 さっぱりわからん!

 もう少し情報を集めて挑むべきだったかもしれない。


「ティア……俺、誰ひとりとしてわからないや……」

「ユウ、すみません。私もわかりません。」

「「…………」」


 そうだった……ティアも外の事情にはかなり疎かったんだった。

 世の中に深く知られる程の強者を一人も知らないのだ。

 初見で強者の強者たらしめる所以を見極めねばならない訳か……


「あははは!」

「どうしたのですかユウ?」

「故郷の(ことわざ)だよ。笑う門には福来るってね。笑ってればどうにかなるでしょ」

「ふふ、そうですね。」


 そう、笑えばなんとかなる!

 大体、言っていただろう。

 俺らが組めばなんだって倒せる!


「さぁ、まだまだ紹介し足りないところではございますが、これから予選を始めたいと思います!!!」

「内容については私の方から説明させていただきます。これから、出場者たちは英傑の饗宴(ヴァルハラ)の造り出す世界に飛ばされます。そこで既定の時間まで戦っていただきます。その時間で英傑の饗宴(ヴァルハラ)が決めた数の脱落者がいればその時点で脱落していない方々が予選前半の通過者とさせていただきます。もし、時間内に脱落者のノルマをクリアされていなければ時間が延長され、また時間がくれば同じ事を繰り返します。そして、この英傑の饗宴(ヴァルハラ)での負傷、もしくは死亡した方は脱落者となりますが本当の身体には一切影響はありませんので存分に力を揮ってください。ちなみに今回の予選前半ではペアの片方が脱落しただけでそのペア2人の脱落となりますので注意を……」


 このルール……

 下手をすれば結構グレーゾーンな事が出来てしまうぞ?

 ルールによって明確な敵と味方と判別がされていない。

 つまりは、手を組む……同盟関係なども可能な訳だ。

 もしも、これが前もって知らされていれば……

 金や地位にものを言わせて人を集め、擬似的な軍隊を作り上げて、この予選を突破すれば後は身内だけでの出来レース……

 前もって知らされて話されていない為、そんな事は出来ないが……

 その場で大きな同盟を組まれてしまうなどの事がありえてしまう訳だ。

 対集団戦となれば俺の魔法(アーツ)の出番なのだ。

 事実、この予選前半においてこの俺の魔法(アーツ)はかなりの強さを誇るだろう。

 だが……


「分かっていると思いますが……」

「あぁ……使わないよ。」


 今回の予選前半は敢えて、身体への負担が大きい憑依(エンブレイス)だけで戦うつもりだ。

 俺の魔法(アーツ)をこんな場所で公開するのは憚られる。

 つまり、見かけ上は比較的一般的な憑依(エンブレイス)だけで戦うと言う事だ。


「あはは、得意なステージが一転……2人揃って不利なステージだ。」


 どちらの魔法(アーツ)も消耗が激しいのだ。

 それにより、戦い方は出来るだけ息を潜めつつ瞬時に見敵必殺……

 消極的(ネガティブ)な戦い方だ、スタミナ切れの瞬間に畳みかけられれば一巻の終わり……


「ですが、ユウの為です。少し我慢して下さい。大丈夫です。ユウといれば私はなんでも出来そうですから」

「あはは、それは頼もしいな。流石は領主さまだ」

「それでは、転送開始!」


 ティアと話していると、転送開始の一言と共に身体が光になって消えていく。

 得体のしれない現象に少し恐怖を覚えるが、いつの間にか握りあっていたティアの手が心に安堵をもたらした。








「ここはどこだ…………って! ミレティアスじゃん!?」

「えぇ、そうみたいですね。ここは路地裏のようですが……この風景……確実にミレティアスそのものです。どうやら作り出されたこの世界のモデルはミレティアスのようですね。」


 本当にこの英傑の饗宴(ヴァルハラ)は規格外だな……

 もう頭に浮かぶ現実世界の物がくすんで見える。

 聖遺物なんて言われているのも納得だよ。


「で、どうしましょうか? さっそく建物の破壊される音や爆発音、剣戟まで聞こえてきますが……」

「持てる限りの知覚能力を駆使して敵を避けよう。一応の目的地は別荘で」

「何故、家に向かうのですか?」

「なんとなくだよ。城ぐらいまで行くと人が集まってそうだし、この辺りは土地勘がないし……」

「そうですね。辿りつけるかは疑問ですが……」

「まぁ、辿りつく必要は一切ないけどね。目的地があった方が良いかなって」


 そんな感じで一応の方針が決まった時、すぐ近くで爆発が起こる。

 この場所にとどまっていれば、いつ飛び火してくるか分かったものではない。


「そろそろ話している余裕もないかもしれません。動きましょう。」

「あぁ、飛び散る瓦礫で怪我をしてしまうなんて御免だ。」

(どうするの何を対価にする?)

(任せる、躊躇う事がないようにしてくれると助かる。)

(分かったわ。)


 溢れる力を感じつつそそくさと爆発地点に背を向けて走る。

 するとT字路に出た俺たちを待っていたのは……


「「あぁ?」」

「なんだ? また敵か……」

「ああ! めんどくさいわね!」


 二組のペア……

 戦っていらっしゃる最中のド真ん中に出てしまった。

 とことんついていない。


「私は左を……」

「了解……」


 短いやり取り……

 その瞬間に2人は同時に呟く……


刹那求望(フェレス)

失楽園(パラダイスロスト)―――憑依(エンブレイス)


 身体に漲る力のほとんどを足に……

 爆発的な脚力の上昇が生みだす俊足の踏み込みは彼我の距離はすぐに埋まる。

 そして、顕現しきっていない祢々切丸を横薙ぎに払う。

 ギリギリ刃渡りは相手に致命傷を負わせるに足る長さへまで顕現する。


「ぎゃあぁぁぁ!!」

「なっ!?」


 嗚呼、それは悪手だ。

 この距離で隙を見せるのはいけない。

 横に振るわれていた祢々切丸で返す刃でもう片方の仲間を袈裟懸けに斬る。

 大慌てで相手も武器を使いなんとか防ごうとする。

 しかし……


「なにぃ!? グハッ!!」


 その武器ごと切り裂く……

 この祢々切丸は斬る為に在る。

 叩き切る西洋の剣とは一味違うのだ。

 無駄に力を注ぐ必要はない。

 ちなみにだが、手には滑り止めも兼ねて黒いグローブをつけている。

 これのおかげで、紋章の紫の光は誰にも見えないし、少しは無茶な動きでも手から滑り落ちるなんて事もまくなる。


「こっちは終わったけど、そっちは……って聞くまでもなかったか。」

「はい、こちらも終わりました。しかし、叫び声で集まられると厄介です。行きましょう。」


 既に憑依(エンブレイス)は解いて無駄な消耗は避けている。

 この程度の時間ならば消耗はかなり少ない。

 少し先が思いやられるが相手がこのレベルならばどうにかなるかも知れない。

 このレベルならだが……

 まぁ、そこのあたりは願うしかない。

 それよりも姉ちゃんはどうしているだろうか?

 初戦の圧勝ぶりになんとか心の余裕が出来た俺は姉ちゃんの事を考えていた。








「ふ~ん、初めて出たけれど中々に面白い事をしてくれるのね。」

「……前、くだらないって」

「ふふ、悠がいるだけで世界が輝いて見えるのよ。あの時とは違う。」


 嗚呼、なんと世界は美しい事か……

 しかし、そんな感慨に耽っている場合ではない。


夢幻泡影(うたかたのゆめ)……」

「……全力?」

「ねぇ、この英傑の饗宴(ヴァルハラ)でも恐怖や痛みに苦しむのよね?」

「……聞こえているはず。」


 確かに、断末魔の叫びが時折聞こえてくる。

 既に戦いは始まっているという証拠であり、これ以上ない程に先ほどのシエルへの問いの答えとなっていた。


「なら、それを何の断りもなく悠に与える可能性がある者は出来る限り排除しないと……それに早く終わらせて悠の所に行きたいの。シエルも全力でいくわよ。」

「……どこに行くの?」

「高い所よ。昔からバカと煙は高い所が好きだって相場が決まってるの。バカが集まれば餌を求めて少しは骨があるのが集まるでしょ? それを狩る(・・)の……ハンティングよ。」


 そう、ハンティング……

 私の魔法(アーツ)を使えば大抵は幻術に掛けて無力化出来る。

 それに、彼らに幻術は掛けなくとも自分の姿を認識出来る者はほとんどいない。

 まさに、私にとってこの場所は、狩り場(・・・)と呼ぶにふさわしいものだった。


「おや? 嬢ちゃん一人かい?」

「悪いがこれも戦いだ。悪いが俺たちの栄光への礎になってもらう。」


 すぐ傍の角から現れた男2人組。

 彼らには見えていないのだ。

 私の姿が……


「……神出鬼没(ブレイクスルー)


 彼らとシエルの力の差は圧倒的なものだ。

 一撃で相手を倒してしまうあの大鎌と、瞬間移動という反則染みた魔法(アーツ)……

 シュチュエーションがシュチュエーションなら私も勝てない。


「「なッ!?」」


 そして、彼らはその魔法(アーツ)から逃げる術を持たずしてシエルの前に立った。

 目の前から消えたシエルに驚く彼ら……

 すぐ後ろで振るわれる死神の鎌に気付かぬまま……


「「ぐあぁぁぁ!!」」


 起こった事は単純明快。

 一振り……たったそれだけで彼らの上半身は下半身と別れを告げた。

 身体を両断するなんて芸当は並大抵の武器や腕では出来ない。


「まぁ、これから先を彼らのような半端な実力で突破できたとは思わないし、貴重な時間を失わずに済んでよかったと言うべき? それとも真っ二つになった事を哀れむべき?」

「……本気を出せと言った。」

「男だからって言うのもあるでしょ?」

「……何の事か分からない。」


 まぁ、いいわ。

 彼らも即死で死んだから痛みも少なかったでしょう。

 それよりも次の獲物を探さないと……

 狩りの時間はまだまだあるのだから……




原動力と参考の為に評価や感想をもらえると嬉しいです!

これからも楽園の狂詩曲(ラプソディー)をよろしくお願いします!



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