第34話
日も暮れて各家庭では夕食を家族で囲む頃合い
だが、未だシンフィールド家では食事をとれずにいた。
「おい、ユウはまだ帰ってこないのか?」
「おかしいですね。日没までには帰ってくると言ってたんですけど。」
どうやらユウは街に一人で出かけたらしい。
サラの話では日没には帰ると言っていたようだがもうとっくに日没だ…
しかし、帰ってくる気配は全くない。
ミチはユウが出かけたのを聞いて残念がりながらも団員たちに私達と行動を共にする旨を伝えに行った。
「ん~アイツが理由もなく遅れるとは思えないんだがな…」
「そうですね…少し心配です。」
どうやら2人もユウの事は信頼しているようです。
仲間たちの信頼関係が垣間見れて良かった。
ですが、今はそれよりユウが心配です。
「では、探しに…」
私が口を開くとともに外から物音が聞こえる…
ユウが帰ってきたのかと思ったのは一瞬…
すぐにそれが戦いの音だと理解できた。
「俺がまず様子見を…」
ダグラスも間もなく理解し、自分が先行しようかと聞こうとした瞬間に…
外から何やら声が聞こえてくる。
「おーい!ティア・シンフィールドはどこだぁ!」
「うるさいですよ?近所迷惑です。騒ぐまでも無くその内でてくるでしょう。」
「人襲うのに近所迷惑とか考えるのかよお前!」
「私たちはあくまでも民衆の味方です。ひいてはこの戦いも…」
「分かった!分かった!俺が悪かった!だからもうやめろ!」
「分かればいいのです。分かれば。」
どうやら敵は2人…
しかも、このタイミング…もしかしてユウと何か関係があるんじゃ…
これは素早く倒してユウを探しに行くべきですね…
「ダグラス、行きますよ。」
「ん?嬢ちゃんも行くのか?」
「ユウが心配です。」
それだけを伝えて剣を抜き声の聞こえた庭に足早に向かう。
しかし何故、兵士から報告がこないのだろか?
軽くやられるほど家の兵士は弱くないはずですが…
「おっ?あんたがティア・シンフィールドか!?」
「そうですが…どうやら兵士たちがお世話になったようですね。御用件は何ですか?」
玄関の扉を開くとそこには倒れる警備兵たちとローブを纏った者が2人…
この2人が犯人で間違いないですね…
しかも、見たところ両方かなりの強敵…もし相手がまともに戦ってこればそれほど掛からないだが…
「少しの間、ここで俺達と遊んでくれよ?」
もし、私を足止めする事に徹されれば…
少し手間取りそうですね…
「教会の差し金ですか…」
「どうやら教会が本腰入れてきたみたいだな」
どうか…無事でありますように…
大切な仲間に何事も無いように祈りながら行く手を阻む者にティアは剣を向けるのだった。
「あ、やっと団長帰って来たんですか?」
「ただいま…少し、弟の所で泊まってたの…」
「知ってますよ。」
ん?おかしいな…どこに行くかは伝えてないはずだけど…
しかし、つけてきていた可能性はかなり低い。
なら何故知っているのだろうか?もしかして…
「ティアのとこの使いが言いに来たの?」
「いや、昼食に行こうとした時にユウさんと会ったんでちょうど良かったんで誘ったんですよ。」
「で、その時に聞いたんだ。」
そうか、ユウと会った時に聞いたのか…
それなら納得…
…ってユウと会ったの!?
「会ったんだ!どう?いい子でしょ!私の自慢の弟なんだから!」
「お、落ち着いて!前から聞いてましたから!」
「団長さん帰ってきてたんッスか?」
リョクが奥から出てくる。
大抵、みんな集まって食事に行くのは決まりになっている。
と言う事は今、劇場に居る全てのメンバーがユウと会ったことになる…
「お祝いよ!さぁ行くわよ!」
「ちょっと、いきなり何を…!」
「さぁ早く皆を集めなさい!みんなユウと会ったんでしょ?」
こうしちゃいられない!
何処へ行こうか、やはりお祝いなら豪華な感じのお店?だけど酒場で騒ぐって言うのも良い!
やはり酒場にしよう!
「良いッスね!俺、みんな呼んできます!」
リョクは分かってるわね!
これでみんな来るでしょう。
ユウが居ないのは残念だがティアの家にもまだ帰っていなかったようだし…
仕方がない…今度はユウも一緒に…。
「どうしたんだ団長?急に祝いだなんて」
「ユウが皆と会った日よ!これはお祝いをしないとダメでしょう?」
「いや、どういう理論ですか!?」
トーラは細かいところを気にしすぎよ。
私にとってこの子たちは第二の家族と言っても過言ではない。
その彼らが私の一番大切なユウと出会った日だ。
もはや、国民の祝日にならないのがおかしなくらいだ。
「ここなんてどうですか?」
「良いわね!ここにしましょう!」
ここには何度か来た事がある。
確か安い事で有名の店で沢山呼んでもいっぱい食べれることから選んだんだった。
扉を開き中に入るとやはり多くの人で賑わっているようだ。
しかし、店自体が大きいのでまだ座れる席は残っている。
「おっ?噂をすればなんとやらというやつか」
「幻創の霧じゃねぇか!」
ん?噂?
最近は噂になるほどの騒ぎは起こしていないはずだけど…
噂なんて碌な物がない。
幻創の霧なんていう訳の分からない二つ名がその証拠だ。
「噂って何のこと?」
「あんたの弟の事だよ。」
ユウ?どういう事?
ユウは何をしていたのだろうか?
「何の用でユウはここに?」
「ん?なんでか知らねぇがあんたの事が知りたいって言ってたから教えたんだよ。ついさっき帰ったばかりだが会わなかったのか?」
私の事をなんでわざわざこんな時間まで聞きに来ていたのだろうか?
まぁ、後で聞けばいいか…
前とは違って今は会おうと思えば会えるのだから…
「おーい、おっさん!いつものあれだ!」
「私は………」
よっぽど、お腹が空いていたんだろう。
みんなも注文を始める。
しかし、シエルだけは注文をなかなかしない…
私が連れてきて以来、シエルはなかなか心を開かない…
こういうことについてくるようにはなったが、未だに消極的だ。
「シエルは?」
「ミチと一緒の物でいい。」
この調子だ…
感情が少なく、多くを話したくないが故にこんな事を言う。
「そう、まぁそれでいいなら良いけど…」
「そういや団長~ユウ君が彼女をつれてきたらどうするんですか~?」
突然、シルがそんな事を言い始める。
一体、シルは何を言っているのかしら…
そんな事あるはずがない!
「そんな事はありえないわ!ユウはずっとお姉ちゃん子なんだから!」
「もしもの話よ~」
百歩…いや、百万歩譲ってもありえないけど…
もし、そんな事があれば…
「それがユウに相応しい女か確かめるわ」
「「それってどんな女なの~?」」
ミラとイラまで乗ってきた。
この歳であまり興味を持つような話じゃないんだけど…
そうねぇ…
「まず、そんじょそこらに居るありふれた女じゃダメね。ユウを好きな気持ちが誰よりも強い事が前提でユウを守れる強さもないとダメ。」
「うわぁ、強さも求めるのかよ」
「しかもありふれた女じゃダメって…」
カインとゾルがこちらをジト目で見てくる…
当然の事でしょ?ユウを守れないのに傍に居ていい訳がない。
そう言うやつはいずれ自分も守れなくなってユウに迷惑を掛けるに違いない。
「それから…」
「まだあるのか…」
「当り前よカーム!当然だけど、私より何においても優れていないとダメでしょ…」
全く、カームは分かってないわ。
この世で一番大切で何をおいても優先されるべき存在であるユウがどこの馬の骨とも知れない女にやれるもんですか!
「ユウさん、結婚とか難しいだろうな…」
「まさかの自分じゃなくて周りにこんな障害があるんだもんな。これはまず彼女なんて許す気無いぞ?」
「条件がヤバいッスもんね。団長に何一つ劣らない人なんて俺知らないッスよ?」
他にも、ユウが危ない時に命を投げ出してでも守れる覚悟があるかどうか…
ユウが悩んでいる時には共に悩み解決するもしくは悩みの種を取り除けれるかどうか…
「あとは…」
「もう、分かった。分かったからもういい。」
「そう?」
まだまだ言い足りない感じもするのだけど…
まぁ、それでいいと言うのならいいか…
「だけど私たちが出会ってほぼ半年とちょっと…ユウさんに彼女ができてても…」
そんなはずはない。
なぜなら、ユウはつい最近、この世界に来たのだから…
まぁそんな事は言えないのだが
しかし、ティア・シンフィールドと言う女…あの女は警戒しなければならない…
「許さないわ。もしユウに言い寄る女には立ち去ってもらうわ。」
「例えば…どういう風になんですか?」
恐る恐ると言った感じで聞いてくるトーラ。
だけど、どうやって立ち去ってもらうか…
「まぁ、まずは脅しからね。」
「話し合いねぇ…」
どうしたんだろうか?
カインが全然、信じてない顔でこっちを見ている。
全くもって心外ね…
「それでも聞いてもらえないなら?」
「次は、その人の周辺捜査かな。」
「うわぁ、笑えねぇ…」
ん~、普通だと思うんだけどなぁ…
なんでみんなあきれた顔をしてるの?
「まぁ、見当はつくが最後は?」
「そりゃあ、最後は実力行使。Daed or a live(生死を問わず)よ?」
「「「「「怖えぇぇぇぇ!」」」」」
一斉に酒場中から戦慄の声が上がる…
どうやら酒場の客もこの話を聞いていたようだ。
普通だと思うんだけどなぁ…
まぁ今までは第一段階でほとんど大人しく手を引いてくれた。
だからユウ関係では第三段階を実行はした事はない。
「ん~ユウ君可愛いから仲良くしようと思ったんだけどなぁ…」
「まぁ、シルなら友達、親友までは良いよ?」
みんなは第二の家族みたいなものだから
恋愛感情ならダメだけど、友情なら…良いんじゃないかな…多分…
するとリョクが驚いたように言う…
「おいおい!それって普通なら女友達も許さないってことッスか?」
「当然でしょ?ユウに悪い虫がついたらどうするの!?」
「ユウさん可哀想だな…出会いの機会なんて絶対無かっただろうな…」
友情から発展していってそれが恋になったりでもしたら悪い女に騙されちゃうじゃない!
友人も私が見てダメだと思った子にはさっきと似たような処置をとるわ。
「合コンにでも誘ってやるか?」
「そうだな…」
ボールスとカームが何かを話している…
合コン?そんなの…
「私も行くわよ?」
「姉同伴の合コンか…」
「ゴメン、ユウさん俺達にはどうにもできない…」
そこからもユウの話題で盛り上がり…
宴も酣になってきた頃合い。
そこで急に耳にある会話が聞こえてくる。
「おっさん、今日は帰るわ。」
「毎度あり、また来てくれよ!」
「おう!」
どうやら誰か帰るようだ。
なんでもない会話…なんでもない日常…
しかし………
「お、おい!なんだこれ!」
そんなおびえるような声が酒場に響き渡る。
どうしたんだろうか?
そう思い、ふと振り返る…すると、扉の向こうには歩く死体が居た。




