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第33話

「取り敢えず、みんな自己紹介からだ。俺はカインです。ミチ団長に拾われたんですよ。」

 

 いきなりの爆弾発言だ…

 拾われたってどういう事?

 確かに俺の事も拾った姉ちゃんならありえなくもないが…

 

「じゃあ、次は俺かな?カインの兄のゾルです。同じく拾われました。」

 

 兄弟そろって拾ったの!?

 というかこの人、道で客引きしてた人じゃん。

 

「私はトーラ。同じくミチ団長に拾われました。」

 

 今度はエルフの女性だ。

 さっきの2人は俺より年下っぽいのに対しこの人は同い年くらいだ。

 ってかこの人も拾ったの…

 もう、なんだか頭がクラクラしてきたよ…

 

「俺はカームだ。俺は拾われこそしていないが団長に命を救われた。」

 

 こっちを呼んでいた獣人の男だ。

 歳は成人したてみたいな感じだな…

 というか命を救われたってどういう事…場合によっては拾われたのと変わらない気が…

 

「こっちのリョクとボールス、シルは俺と同じで命を救われてる。」

「リョクです。よろしくッス。」

「ボールスだ。よろしくな」

「シルよ。よろしくね?」

 

 リョクとボールスはカームと同じ獣人の男だ。

 シルと呼ばれた人も獣人で女性だ。

 リョクは俺より下っぽいがボールスはカームと同い年って感じか…

 シルさんはカームさんより少し年上のようだ。

 

「「そして私達はミラとイラ!よろしくね?」」

 

 獣人の双子だな…この2人…

 取り敢えずはこの二人に不幸な過去が無くて良かった。

 こんな子供に不幸な出来事があったら心苦しい

 だが次の人は…なんというか…絶対に何かある…

 

「私はシエル。」

 

 狼のような白銀の耳からして獣人…

 とても綺麗な紅い瞳に耳と同じ白銀の髪の女の子、俺と同い年くらいなんだけど…

 無口…そして、暗い…

 そして俺の直感が告げる…彼女は生い立ちについて何も言っていないが…

 

 ―――何かある。

 

 これは確実だ。

 あの時の自分と同じ匂いがする。

 

「「相変わらず人見知りだねシエルは」」

「別に…」

 

 あぁ…これはダメだ…

 初対面の俺が踏み込める領域にない…

 取り敢えずはこちらも自己紹介と行こう。

 

「俺は神崎 悠。ユウって呼ばれてる。みんなに姉ちゃんの事を教えて欲しくてここに来た。」

「あんたの事はよく聞いてるよ」

 

 そう答えるのはカームだ。

 なにやら皆のまとめ役っぽいな。

 

「事あるごとにユウはイイ子だった。とかユウに会いたいとか言ってたもんなぁ」

「そうそう、酔ってる時は弟が一番、それ以外の男は碌でもない奴ばっかとか言ってるもんね。」

 

 姉ちゃんはなんでこんな恥ずかしい事をこの兄弟に言ってるんだ!!

 いや、待てよ…あんたの事はよく聞いてるってまさか…

 

「俺もよく聞いている。」

「そうッスね。愛してる~だとかなんとか。」

「「結婚したい~だとかね。」」

「私はユウの為なら死ねると聞きました。」

 

 もう駄目だ。完全に姉ちゃんの悪い癖が出てる。

 嫌な事があると酒をのんで酔っ払うのだ…

 しかも酔うとこんな事を周りに言い始めるのだ。

 

「その事は忘れてください…」

「ははっ!誰も酔っ払いの戯言なんて本気にしないさ!だけど」

「あなたを大切に思う気持ちは本物だと思うわよ。」

 

 それについては完全に同意だよ。

 姉ちゃんが俺を大切にしてくれているのは分かる。

 

「自慢の姉だよ。そう言えばカインとゾルは拾われたと言っていたけど…」

「あぁ、事情があって俺達兄弟は路頭に迷っていてトーラと出会った。」

「そして、ミチ団長と出会いました。」

「劇をしないか?って言われてからという物…大変でしたよ…」

 

 あぁ、可哀想に何があったんだろう。

 その心労、察するに余りある…

 

「劇じゃなく傭兵の真似ごとまでしてましたから。」

「えっ!?どんな事してたの?」

 

 傭兵っての真似ごとって…

 姉ちゃんは人拾って何やらせてんだよ。

 

「街での手伝いから魔物討伐、盗賊退治もしましたね。」

 

 そう言って苦笑するゾル…

 本当にうちの姉がゴメン…

 詐欺だろこれは、劇やるって話が魔物や盗賊相手にしてるって。

 

「おかげで俺らはそれで救われたんだよな。」

 

 そう言って感慨深く頷くカーム

 どういうことだろうか?

 

「俺たちは傭兵団として活動していたころに盗賊に襲われたんだ。」

「私達もそこそこ腕の立つ傭兵団のつもりだったんだけど…」

「相手は滅茶苦茶有名な盗賊団だったんッスよ。」

 

 それは災難だな…

 有名ってことはかなりの力があったんだろう。

 それこそ、一つの傭兵団だけで潰せるなら有名になる前に死んでいる。

 

「当然、俺たちは全滅寸前ってところで団長が現れたんだよ。」

「まさに、正義のヒーローって感じだったッスね。」

 

 もう姉ちゃん傭兵団を率いた方がいいんじゃないか…

 姉ちゃんメッチャ強いし…

 多分、生活に困ることは無いと思うぞ。

 

「そんで命を救われた訳だ。そこからは行く宛てのなかった俺らを雇ってくれた。」

「じゃあ、ミラとイラは?」

 

 この二人には凄惨な過去はなさそうだがこの年で何故こんな所に?

 こんな子供を雇ってるはずはないし近所の子か?

 だがこの子はずっと仲の良い仲間って感じだ。

 旅団なんだから一定の場所にずっといる事はないだろうに。

 

「あぁ、ここには居ないが旅団のメンバーの夫婦の子供だ。」

 

 おいおい、夫婦連れて旅団やってんのかよ。

 まぁいいか、悲惨な過去が無いって分かったし…

 

「じゃあ、シエルはどういう…」

「何故…あなたに言わなければならないの?」

 

 これは完全に拒絶されてるな…

 こっちを睨んでいるようにさえ思える…

 と言うか睨んでいる。

 もう黙ってろオーラが物凄い勢いで吹き出ているし、ここは分が悪い…大人しく謝るとしよう…

 

「確かに言う必要はないな…ゴメン。」

「別にあなたが謝る必要はない…」

 

 そう言ってまるで興味を無くした猛獣のようにプイッと顔を背ける。

 仲良くなるには時間が必要になりそうだ。

 それ以前に、また会う事があるかさえ分からないが避けられてもおかしくない。

 

「「気にしないで?悪気はないんだよ?」」

「あぁ、分かったよ。ありがとう。」

 

 この歳でフォローとかするってどんな経験してきたんだよ。

 まぁ、それはともかくシエルの気持ちが全く分からない訳でもない。

 しかし、人の事情は人それぞれ…

 シエルについては暇があれば姉ちゃんに聞くか…

 

「取り敢えず、いろいろと分かったよ。ありがとう。」

「このくらいでお礼なんていいですよ。そう言えばミチ団長はどうしたんですか?見当はつきますけど」

 

 全く…なんで連絡してないの…

 あとでちゃんと姉ちゃんには言っておこうか…

 

「ティアの所に居るよ…言ってなかった?」

「ユウを取り戻す…とかなんとか呟いてどっかいきましたから…」

 

 うわぁ~絶対怖かっただろうな…

 そりゃ見当もつくわ…

 

「まぁ、これからもよろしくお願いします。団長がユウさんから離れるはずありませんから会う機会もあるでしょう。」

「あぁ、そうだね。よろしく」

 

 俺もこのメンバーとは今後も縁があると思う。

 まぁ、仲間が増えるのは喜ばしい事だ。

 じゃあ、ここは精一杯楽しむとしよう。

 

「へい!俺のオススメだ!」

 

 そうして運ばれてきた料理に舌鼓を打ちつつ談笑しこの出会いを祝った。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、今日はこれくらいでお暇させてもらうとするよ。」

「おぉ、そうか。楽しかったぜ。」

「団長によろしくッス!」

 

 色々と話を聞けたし有意義な時間だった。

 だが俺にはもう一つの目的地がある。

 ずっと話しこんでいる訳にもいかない。

 名残惜しい気持ちを抑えながら次の目的地へと歩を進めて行く…

 

 次の場所は賑やかだろうが友好的な関係を築ける可能性は低い。

 向かうのは昨日の夜、飛鳥が追跡した結果辿り着いた酒場。

 昨日の件についてもあるが姉ちゃんはかなり強いし聞いた話でもかなりの腕だったらしい。

 となれば、あらゆる情報が集まる酒場でも何か話を聞けるかもしれない。

 

「確かここだな…」

 

 すでに夕暮れだ。

 知りたい事が分かればすぐに帰るとしよう。

 

「何だ坊主?道にでも迷ったか?ここは子供が来るようなとこじゃねぇぞ。」

 

 やはり友好的な関係は築けそうにない。

 まぁ、こんな時間に酒飲んで酔っ払ってるおっさんには元より興味は無いがな…

 取り敢えずは店主に聞くとしよう。

 

「なぁ、旅団雪月花の柊 未知について知らないか?」

「なんで知りたがる?」

「俺の姉ちゃんだからだ。」

 

 俺が弟だと明かしたその時、

 酒場に激震が走る。

 酒を飲んで酔っ払っていた者たちから楽しく談笑していた者たち、賭け事に興じていた者たちもが今までの事に手を止め口々にざわめく

 

「あの幻創の霧(ローレライ)の弟かよ…」

「本当に居たとはな…酔っ払いの戯言かと思ってたぜ…」

「ってことはあの坊主に何かあれば…」

「おい、縁起でもない事考えるなよ!」

 

 姉ちゃん…みんなに恐れられすぎでしょ…

 しかも、幻創の霧(ローレライ)って…姉ちゃんも二つ名付けられてたんじゃん…

 姉ちゃんもかなりの大物だったんだ…

 

「何が聞きたいんだ?」

「ん?話してくれるの?」

幻創の霧(ローレライ)の弟だぜ?何かしらの繋がりがあったほうがいいに決まってる。」

 

 そこまで言うか…

 まぁ、好都合だし色々と聞かせてもらおう。

 まずはこんなに周りが戦々恐々としている理由から…

 

「なんでこんなに有名になってるの?」

「あんたの姉ちゃんはヤバいヤマをなんなくこなしてくるんだよ。しかも刃を交えずに盗賊団を全滅とかいうおまけ付きで」

「挙句の果てに戦った相手はみんな霧のように消えて気づいたらやられてたって言うんだ。」

 

 幻術か…やっぱりこの世界でも馴染みのない魔法(アーツ)なんだろう。

 ティアは前にも戦った事があるみたいだったので姉ちゃん以外にも居る事は居るんだろう。

 

「しかも、幻創の霧(ローレライ)の周囲に手を出した奴は消されるんだよ。」

「前に幻創の霧(ローレライ)の事を無理やり自分の物にするって周囲に言った貴族がいるんだが…」

 

 どうなったんだろうか?

 逃げたのかな?だけどそれならここまで有名にはならないだろう。

 幻術があるんだし…もしや殺したか…?

 

「どうなったの?」

「消えたよ。未だに死体すら見つかっていない。」

 

 完全犯罪か…

 俺の意思としては自衛の殺人をどうにか言うつもりもないし監禁したり遺体を隠したりしていたとしても姉ちゃんに何か言う事もなければ含むところもない。

 そう言う世界なんだからここは…

 

 だが俺はそれができない…むしろ俺の方が異常なんだろう…

 きっとこの臆病はいつか俺に害という形を持って降りかかるだろう…

 その前になんとかしないと…

 契約で俺が罪悪感や不安を消してもそれは能力を使っている間だけで

 解けばその感情はまた心を蝕む…

 根本的な解決には至らない…

 

「被害者が貴族だっただけに念入りに捜索されたよな。」

「かなり高報酬な依頼も出てみんな血眼で探したさ。けど見つかんねぇんだよこれが」

「結局、その事件はうやむやになった。」

 

 そりゃみんな怖がるわな…

 もし、機嫌を損ねてその貴族の二の舞は嫌だろうしな

 まぁそれだけで特に性格が悪い訳じゃないから繋がりは持っておいた方が身の為になると思った訳だ…

 

「ありがと、おかげで色々と分かったよ。」

「いいってことよ。お願いだから俺らを悪くは言わないでくれよ?」

「分かってるって。今日は帰るよ。」

「じゃあな。」

 

 はぁ…これで姉ちゃんについては色々と知る事ができた…

 これで今日の目的のほとんど(・・・・)は終わった。

 

(最後の目的も達成できたんじゃないの?)

(あぁ…)

 

 もう辺りも暗くなり人通りも少ない…

 俺一人で寂しく歩いている訳だ。

 目標(ターゲット)は単独…目撃者になりえる人影は一人もいない…

 

「格好のシュチエーションだよな?」

「…よく分かりましたね。」

 

 すぐ後ろの建物の陰から出てきたのは昨日の声と同じ男だ。

 今回の目的…本命はこれだったからな。

 まぁ、姉ちゃんの事について聞きたかったのは確かだがこの男を呼び出す…もしくは少しでも情報が手に入ればと思ったが…

 こんな簡単に引っかかるとはな…

 

「そうそう簡単に見つかるような尾行はしていないはずなんですが…」

「まぁ、確かに俺からは見つからない様に立ちまわれてたよ?」

 

 夜の闇に紛れて空を飛ぶ影が一つ…

 俺は朝の地点で飛鳥を空に放っていたんだから…飛鳥にバレずに俺を尾行はまず不可能だろう…

 まぁ事前に飛鳥の情報を手に入れていれば別だが

 

「協力者が居たのですか?」

「流石に教えれないよ?簡単に言える程、協力者の命は軽くないから」

 

 人じゃないけどね?

 まぁ、わざわざそれを教える気はさらさらないけどね…

 

「何故、会おうとしたのですか?エスコートに応じてくれる訳でもないでしょう?」

「ちゃんと言っておこうかと…あんたについていく気はないってさ。だから大人しく手を引いてくれって」

「そうですか…そうならば、力づくでついてきていただく他ありませんね…」

 

 そうだよな…そうなる可能性も考えていたよ。

 いや、むしろ、その可能性が一番高いと思っていた。

 だが、こちらから襲うのは難しい…街の中から声しか分からない男を探すのは至難の業だ。

 となればおびき出すほかない…

 

失楽園(パラダイスロスト)

 

 しかし、ここでは分が悪い…

 呼び出した狼にまたがりこの場を離脱するしかない。

 

(ここで勝負つけちゃえばいいのに)

(おいおい、そんなことすればティアにも迷惑掛けるだろ。)

 

 だが、街の外に出れば戦える…

 そこまで逃げ切れば勝ち目がある。

 しかし、相手も大人しく逃がしてくれるはずもない…

 

黄泉死還(リビングデッド)

 

 その声と共に男の周囲でいくつも地面が割れ…死人たちが顔を出す…

 しかも、そこには人以外…魔物の死体も含まれていた。

 全く、街中でこんな事して…教会関係者がやる事かね…

 

 そうして追いかけてくる魔物から必死に逃げる…

 前にも見たような逃走劇が街中で始まった。

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