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第32話

「それでこの領主さまの元に居た訳ね…」

 

 今、俺はみんなと朝食を囲んでいた。

 しかし、いつもとは違い。

 俺の姉ちゃんがこれからは一緒だ。

 そして、ティアの元に来た辺りまでの説明をしていた。

 

「そして儀式を受けるとあら不思議、紋章が紫ではありませんか…ってわけ?」

「そうです。」

「ユウもめんどくさい事に巻き込まれちゃったわね…」

 

 全く持ってその通りだ。

 何故に誰かに追われる生活を送らなければならないのか…

 

「で、ユウの魔法(アーツ)は?」

「“想像の中の意思を持った者たちを呼び出す”って魔法(アーツ)だよ。」

「大体見当はついていたけどやっぱりユウは凄いわね!」

 

 まぁ、この魔法(アーツ)は確かに強力なんだろう

 けれどあまりにも強い奴はステラの力があっても出せないし…

 呼 び出したのに負荷に耐えきれないなんて言う事故が森での練習してた時に起こる時もあったし

 

「俺なんて全然だよ…ステラが居なかったら…」

「ステラって誰?」

 

 あっ!失言だった…

 姉ちゃんの声が低くなっていく。

 ヤバい…早く誤魔化さないと!

 

「いや!あ、あれだよ。人じゃないって!俺の中に居るやつの名前だって!コミュニケーションを取るとなると人じゃなくても名前は必要でしょ?」

「………ふーん、嘘じゃないみたいね…呼び出した存在とコミュニケーションもとれるんだ…」

 

 まだ疑うような眼差しだがなんとか誤魔化せたようだ。

 嘘はすぐにばれるから誤魔化すのに苦労するんだよなぁ…

 ステラは悪魔で人じゃないし、俺の中に居るはず。

 嘘はついていない…

 

「じゃあ、他にも…」

「今から訓練に行くから!あとはティアと姉ちゃんでゆっくり話していてくれよ!」

 

 何か姉ちゃんが言っていたがそう言って庭に出る…これ以上、ボロがでたら困る!

 三十六計逃げるに如かずだ!

 

 

 

 

 

 

 

「おーい!ダグラスのおっさん!早くするぞ!」

「なんだ。早いじゃねぇか!気合入ってんな!」

 

 庭ではダグラスがすでに剣を振っていた。

 全く…どうやったらそんな剣をこんな朝っぱらから軽々振れるのやら…

 獣人ってのは皆こうなのかね…

 

「そう言うあんたも気合入ってんじゃん。」

「お前の姉ちゃんにいいようにしてやられたからな!」

 

 あぁ…ダグラスはあの時、不意打ちで幻術に掛けられたからな…

 まぁちょうどいい。今回は憑依(エンブレイス)ありだからな

 

「今日の俺はそう簡単にやられないからな?覚悟しろよ?」

「なんだ?大口叩くじゃねぇか?いいぜ!構えな」

 

 大きな両刃剣がこちらに向けられる。

 これは練習だしアイツでいくか…

 

(その前にステラ、少し力を貸してくれ)

(何を代償にするの?)

(ん~特に決めてなかったな…じゃあ、喜びで)

(ふーん、分かったわ)

 

 身体に力が漲ってくる。

 しかし、前ほど強化されない…

 やっぱり、感情の量が足りないってことなんだろうな。

 別に戦いに喜びは感じないからな…

 

 まぁ、ともかく今回は特に誰かを呼び出したりはしていないし憑依(エンブレイス)はそれほど負荷が掛からないので身体能力全開で行ける。

 ステラの強化も掛かっているから一瞬で魔力切れは無いだろう

 

失楽園(パラダイスロスト)―――憑依(エンブレイス)!」

 

 身体と手に持つ剣を包むのは黄金の炎のようなオーラだった。

 その剣は片手剣で驚くほどに軽い速度重視の剣だった。

 

 俺が呼び出す剣たちは何かしらの能力を持っているのだ。

 例えば、ティアと戦った時に使った祢々切丸なら相手から体力を奪う…とかだが

 生憎、それほど奪える訳じゃない…実際、ティアには効かなかったしな。

 その代わりにとても使いやすく、切れ味と頑丈さはかなりの物…

 特に、祢々切丸は他と比べ意思が一番落ち着いている。

 

 こんないい加減な能力になったのは俺が祢々切丸をよく知らなかったから…

 だがこれは違う…男なら考えた事があるのではないだろうか?自分が思う強い武器…

 俺はそれをいくつか考えたのだがその一つがこれだ。

 

「行くぞ…神葬霊剣(バチカル)!」

 

 強化された身体と剣の意思によるサポートを受けた俺は一瞬でダグラスを間合いに収める。

 しかし、その行動は読まれていたようでダグラスは剣で受けようとする。

 恐らく攻撃を弾いてよろめいた所で一撃をお見舞いしようって魂胆だろう…

 

「甘いな…」

 

 確かにこの剣の一撃は軽い為、簡単に弾けるだろうが…

 そう簡単には行かない…俺は神葬霊剣(バチカル)を横薙ぎに振るう。

 

「ッ……」

 

 ダグラスは弾こうとした一撃にのけぞらされる…

 あのスピード重視の剣なら確かに弾かれただろう…そうあの剣なら…

 

「クソっ…まさかその剣が変形するとはなぁ…やるじゃねぇか」

 

 俺が今握っているのは大剣…そう、ダグラスはあのスピードで振られた重量重視の剣を受けたのだ。

 そしてまた変化を始める…今度は追撃を掛ける為に槍に

 

「変幻自在って訳か…!」

 

 ダグラスは俺の突きを横に跳んで回避する。

 しかし今度は槍がハルバードに変化する…

 斧がついた部分で横薙ぎに振るう。

 

「っ!休む暇もないか…!」

 

 ダグラスは後ろに跳んで剣を投げる。

 その時、俺のハルバードが双剣に変わる…

 

「くっ…またか…」

 

 悔しげにそう呟き

 俺は横に跳んで回避する。

 だがそこでダグラスには疑問が浮かぶ…

 

「なんで双剣になった?」

「こいつの弱点だよ…コイツは変幻自在の剣じゃない。コイツの意思で変化する…息が合わないと使いこなせないんだよ…」

 

 恐らく双剣で今の攻撃の軌道をそらせってことなんだろうが…

 瞬時に相手の考えを理解するのはいくら憑依させているとは言えど難しい…

 荒削りの連携では防衛は息が合わなくなってしまう。

 それに攻撃にも少し時間差(ラグ)が生まれる時がある…

 

「つまり、言うこと聞かないじゃじゃ馬ってわけだよ。」

「そりゃあ、訓練するにうってつけの武器だな」

 

 そこからは何度も刃を交え俺と神葬霊剣(バチカル)の息を合わせていく。

 次第に神葬霊剣(バチカル)の意思が汲みとれるようになっていくのを自分でも感じる…

 時間差(ラグ)もほんの少しだが減ってきている。

 これに関しては何度も使って慣れて行くしかないか…

 そうして訓練の成果を実感していくが…身体に限界が訪れ始める…

 証拠に動きに精彩が無くなってくる。

 

「はぁ…はぁ…」

「そろそろ終わりだ。限界だろ。」

 

 まだ行ける…そう言おうとするが声が出ない。

 すると身体から力が抜けていく感覚に襲われる…

 

(約束だったんでしょ?もう限界だよ。これ以上は身体に異常がでる。)

 

 そうだな…約束だった。

 これのせいで憑依(エンブレイス)を使うなと言われれば本末転倒だ。

 そう思い、憑依(エンブレイス)を解き神葬霊剣(バチカル)を帰す。

 五分と言ったところか…それ以上は身体に異常が出る…

 

「よくやった。休んで良いぞ」

「体力トレーニングは?」

 

 本来ならこの後、筋トレが始まったはずだが…

 今日は無いのか?

 

「この後は休憩を入れるようにってお嬢のお達しだよ。」

 

 ティアは心配性だな…まぁ、その好意はありがたく受けとるとしよう…

 今は行きたい所があるしな…

 

 

 

 

 

 

 

 街に繰り出すために私服に着替え、サラさんには日没までには帰ると言い残した。

 これで準備完了。行くとするか…

 街ではあんな騒ぎがあったというのにいつも通り賑わっていた。

 正直、あれだけ明るくなったりアンデットが出たからには噂で持ちきりで少しは賑わいも収まっているかと思ったのだが…

 

「どうだいそこの兄ちゃん!これうまいんだぜ?安くしといてやるから食って行きなって!」

 

 この調子である…

 この世界の住人はやはりこういうことにやっぱり慣れているかな…

 

「美味しそうだし一つ貰うよ。」

「まいどあり!」

 

 まぁ、それはそれで買い食いは楽しむのだが

 この世界の物を色々知るのは大事だし…

 こうやって賑わっている街の事をあんな事の後で買い食いを楽しんでる奴がどうこうは言えないか…

 

「あれ?あの時の人?」

 

 ん?どうやら俺の事のようだ。

 誰だろうかと思い振り返るとそこには見覚えのある男が居た。

 

「ん?…もしかして雪月花の団員さん?」

「はい!あの時、応接室まで案内した…」

 

 思いだした!

 あの俺がティアに頼んで無理やり案内してもらった団員さん。

 あのときは分からなかったがエルフみたいだ。

 ずっと謝ろうと思ってたんだ!

 

「あ、あのときはゴメン!」

「いや、気にしないでください。私たちもまさかあのユウさんだとは…」

 

 えっ?どういう事だ?

 “あの”なんて呼ばれるほど有名な人間じゃないんだけど…

 大体、なんで俺の名前を?

 

「なんで俺を知ってるの?」

「あぁ、それは……そうだ!ちょうどいいですし一緒にご飯どうですか?仲間と集まる予定なんですよ!」

「いいんですか?ちょうどあなた達に会おうと思っていたんですよ。」

 

 そう、今回の外出の目的は彼ら…

 旅団雪月花の団員たちに会いに来たのだ…

 しかし、会えるかどうか分からなかったのだがあっちから誘ってくれるとはちょうどいい。

 

「分かりました。ミチ団長のことですね?ついてきてください。この食堂です。」

 

 案外、近かったようだ。

 店は決して高い物しかないレストラン…

 などではなく…いかにも庶民向けと言わんばかりの食堂だった。

 やっぱりこんな感じが一番落ち着く。

 

「おーい、こっちだ!」

 

 店の端の方で団員の事を呼ぶ男がいる。

 そこでは10人の人が集まっているのが分かる。

 そして後ろに人数分の武器が置いてある…やはり、武器は外出でもしっかり持ってくるんだな。

 そんな事を考えているとここの店主と思しき強面の屈強な男が声を掛けてくる。

 

「なんだカイン。今日は新しいお友達を連れてきたのか?」

「粗相はしないでくれよ?なにせミチ団長の弟だ。この人になにかあればミチ団長が黙っちゃいない。」

 

 おいおい、大げさだな…

 そこまで姉ちゃんは過保護じゃ…ない…はず……多分…。

 いや、過保護だった…。

 

「おぉ、コイツがあのミチの嬢ちゃんの弟か!ゆっくりしていきな!お前の姉ちゃんには借りがあるからな!」

 

 一体、姉ちゃんは何をしていたんだ…

 強面で屈強な身体をしたこのおっちゃんに貸しを作るって…

 これから聞くつもりだが怖くなってきたよ。

 

「気にしないでくださいよ。あと注文は店主のお勧めで。」

「おう、分かった!腕が鳴るぜ!」

 

 なんだろう…凄い張り切りようだ…

 今から魔物でも狩りにいくんじゃないかと言わんばかりの様子で料理を始める店主。

 そのまま集団の所に行くとさっきこちらを呼んでいた獣人の男が喋りだす。

 

「なんだ?その男は?」

「聞いて驚け!あのミチ団長の弟だよ。」

「「「「えぇー!」」」」

 

 全員が驚きの声をあげる団員達…

 一体、俺が何をしたというのだろうか…

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