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第29話

 屋敷に戻ると既に夕食ができていた。

 帰ってきた俺たちは食欲をそそるいい匂いに誘われすぐに席につき食事を始める。

 

「そう言えばティアの魔法(アーツ)ってどんな物なの?」

 

 唐突にティアの魔法(アーツ)について聞いて無かったと思い興味が湧いた。

 あの時のように戦いが待っている訳でも無ければ、こちらの魔法(アーツ)も知られている。

 それなりに信頼関係も築けつつあると思っている。

 

(多分、かなり強力な物のはずだよ)

 

 あれ?出掛けていた時は出てこなかったのに突然出てきたな…

 どうしたのだろうか?

 

(こっちにも色々あったの!休息とか…)

 

 つまり休んでた訳ね。

 ステラも疲れたりするんだな…

 

(私を何だと思ってるの?)

(いや、悪魔でしょ?)

 

 もしここで違うなんて言われたら困る。

 

(まぁ、合ってるんだけどね…悪魔だって体力使うのよ?)

 

 初耳だよ。まぁ生き物何だし体力の概念が有ってもおかしくはないけどね。

 けど、悪魔の様な神秘的存在が体力と言った概念に縛られているなんて誰も考えないだろう

 そんな事を考えていた時、ティアの口から放たれた言葉は俺とティアを驚愕させるには充分過ぎる物だった。

 

「そう言えば言っていませんでしたか…私の魔法(アーツ)は時間への干渉です。」

「えぇぇぇぇ!?」

(えぇぇぇぇ!?)

 

 なにそれ?無茶苦茶でしょ…

 時間を止めたり遡ったり出来ちゃうの?

 

(いくらなんでも強すぎだよ!?)

 

 だよな?よく俺もあの時、逃げ切れたな…。

 てかそんな魔法(アーツ)ならガルム単独討伐できたんじゃ…

 

「今出来るのは“自分の時間を進める(フェレス)”と“対象の時間を限りなく遅くする(ディレイ)”ですね。」

 

 遡ったり停めたりは出来ないのか…

 だけど充分過ぎるほどに強力な魔法(アーツ)だ。

 

「しかし、魔力の消費が激しく効果時間が短いのが難点ですね。」

 

 もしその弱点が無かったらティアに敵は居ないよ…

 いや、今でも勝てる奴なんてそうそう居てもらっては困る。

 もしうじゃうじゃ居れば俺は生きていく自信をその言葉一つで折れる。

 

「それが今まで凄い速さで動けていた理由か…」

「なんたって二つ名まであるくらいだからな!」

 

 えっ?二つ名?

 そんなのあるんだ。どんな感じでよばれてるんだろう

 

(氷の女王とか?)

 

 本当にありそうだなぁそれ…

 的外れだって言いきれないからな…

 なんたって外見は感情の無い冷徹な女領主だから。

 

「やめてください。ダグラス。」

「いいじゃねぇか。ユウ、お嬢はな?神に愛されし戦乙女(ワルキューレ)って呼ばれてんだよ。」

 

 あぁ~確かに似合ってるなぁ

 

(自分が呼ばれたら恥ずかしくて死ぬんだけどね…)

 

 きっと、そうなんだろうなぁ

 今も変な二つ名を知られて顔が真っ赤だもんな…

 

「ユウ、これは決して認めた訳じゃ…」

「うん、分かってる。大丈夫、似合ってるよ!」

「嬉しくないです!?」

 

 羞恥に悶えるティア。

 その否定一つでどれほどの苦労があったのかは察するに余りあるだろう。

 そのいつもと違い必死な姿が少し可愛く思えた事は秘密だ。

 

「だけど周りはみんな知ってるからな!いいじゃねぇか二つ名なんてそうそう付けられないんだから。」

 

 さすがに可哀想過ぎる。

 公開処刑じゃないかそんなの…

 だけどそれって誰がつけるんだろか?

 

「二つ名って、誰が決めてるんですか?」

「誰がって訳じゃないな。大抵は酒場でそんな噂が流れてだんだん皆に認められるって感じだ。」

「酒場には依頼を受けたり報告に来る傭兵さんが集まりますからね。その者達からすれば強い人の話は盛り上がりますから。」

 

 やっぱり噂からか…

 だけど皆に知られるとは凄いな傭兵の情報網

 だけど酒場で依頼?どういうことだ?

 

「さっきの依頼ってどういう事?」

「酒場には傭兵に仕事を凱旋するというもう一つの役割があるのです……」

 

 と言う事は元の世界以上にここの酒場と言うのは重要な情報交流の場となる訳だ。

 そして依頼で色々な所に行くから酒場の情報が広がって行くきしかもそこで手に入れた情報はまた傭兵を通じて拡散されていく…

 

「それは…収まりがつかないな…」

 

 もうティアの二つ名については諦めるしかなさそうだ。

 強く生きてくれティア。

 

(つまり酒場での話の主導権を握り、より面白く伝える事ができれば世の中の情報操作も出来ちゃう訳だ?)

 

 まぁ、俺にはそんな事出来ないけどね?

 だが、ステラの言う事が実行可能な人間による情報操作が存在しない訳ではないだろう。

 情報収集の必要がある場合は酒場に行けば簡単に情報が手に入る…しかし、不確かな情報に踊らされてはいけないと…

 

(お姉さんについて?)

 

 そう、正解。

 酒場で姉ちゃんについて聞くのも悪くないなと…

 本人に聞くという手段も無くは無いのだが…

 客観的に見た姉ちゃんの印象が気になるんだよね。

 姉ちゃんなら何か面倒事の100や200抱えていてもおかしくない。

 姉ちゃんはいつも何かの中心にいると言ってもおかしくなかった。

 こちらでも巻き込まれていたりする可能性はある。

 

「私は二つ名の話しよりユウのお姉さんのミチさんについて聞きたいです。」

 

 って、ティア…話を変えるために俺を利用したな…

 しかも、その話題…

 

「おっ?なんだ?ユウに姉が居たのか?」

「私もそれは気になります!」

(私も聞きたい!)

 

 食い付かないはずがない…

 っていうかステラもか…

 

「ん~そうだな…」

 

 どんな話をしようか?

 やっぱり学校での話が良いかな?

 学校での姉ちゃんの人気は凄かったしね…

 

「じゃあ、学校での話でも…」

 

 俺が姉ちゃんの学校でのエピソードを話そうとしたその時…

 部屋の扉が勢いよく開かれる。

 

「て、敵襲!敵の位置は不明!門番が門の付近で気絶していました!」

 

 その報告に和やかだった食卓の雰囲気は一変し緊張感のある戦場のような雰囲気になる。

 ティアとダグラスは今、この瞬間に何が起こっても対応できそうなくらいに緊張感を帯びていた。

 

「ユウ、敵の捜索をお願いします。」

「分かった。失楽園(パラダイスロスト)

 

 呼び出したのは飛鳥だ。

 捜索、探索ならやはり飛鳥だろう。

 

(頼んだぞ。)

(分かりました。)

 

 俺の意図を察してティアがすでに窓を開けていた。

 夜空に向かって飛び立つ飛鳥。

 敵を見つけ次第すぐに報告してくれるだろう。

 

「サラ、オメェは隠れてろ。」

「はい、御武運を…」

 

 今この場ではサラさんは戦力では無い。

 すぐにサラさんは姿を隠す。

 ティアとダグラスは屋敷内での遭遇戦に備え懐からナイフを取り出す。

 

失楽園(パラダイスロスト)

 

 心の中で言葉を紡ぐ

 初めてだったが一応、呼び出すのには成功した。

 呼んだのはハウンドだ。

 これで準備は整った。

 

「行きますよ…」

「おう…」

 

 まずはハウンドが先行。

 そこからダグラス、ティアが進んでいく。

 そうやって慎重かつ迅速に探していく…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか!!」

 

 ダグラスがその声と共に勢いよく開けた部屋には誰もいなかった。

 だが、ここが最後の部屋…どういう事だ?

 

「どういう事だ?」

「すでに目標を達成して逃げたのか?」

「いえ、何かを盗られた形跡はありませんでした。」

 

 何故、犯人はここを襲ったのだろうか?

 物盗りでは無い…

 襲撃も無い…

 第一、目撃者だっていない…

 

「もしかして門番を襲う事が目的だった?」

「門番個人に対しての襲撃ですか…考え方は面白いですがリスクが高いですね…」

 

 まぁそうだろな。

 もっといいやり方があるはず…

 それにわざわざ門番をしている時に襲う必要もないだろうし…

 

「何かの警告か?それとも威嚇とかか?」

「これは一度、門番の居た場所に向かった方がいいかもしれません。門番は門の傍で倒れていたのですね?」

 

 ティアは報告をしにきた兵士に確認をとる。

 

「はい。門の傍で倒れていました。」

「では、行きましょう。」

 

 そのまま、俺たちは門番が倒れていたと言う場所に向かう事になった。

 だが不自然だ…

 

 屋敷の外には門番以外にも何人かの兵士が居たはず。

 それなのに…何故、戦闘が起こっていないのだろうか?

 戦闘があれば声や剣戟が響いていてもおかしくはない…

 しかし、その音もなければ飛鳥から戦闘があると言う報告はない…

 

(飛鳥…そっちはどうだ?)

(いえ、何も…強いて言うならば、襲撃があったのにも関わらず変化が無さ過ぎる。と言うところでしょうか…)

 

 外では見つかってないか…

 だとすれば犯人はすでに逃げたか、あるいは…まだ、誰にも認識されていないか…

 

「あれ?」

「えっ?」

 

 俺とティアの何かを思いついたかのような声が同時にでる。

 もしかして同じ結論に至ったのでは?

 なら次の言葉は…

 

「あなたは誰ですか!」

「お前は誰だ!」

 

 やはり、同じ答えに至ったようだ。

 

「な、何を言っているんですか?」

 

 心底、俺たちが何を言っているのか分からないと言う顔をし後ろに半歩下がる兵士。

 そう、報告に来た兵士…お前は誰だ?

 何故、外では多くの兵士が居たのに騒ぎの一つも無いんだ?

 何故、コイツだけは俺達に報告にきた?

 

 普通なら、あの報告を聞いて全滅したと考えるかコイツだけが気付いたと考えるべきだ。

 だが、全滅してコイツだけなら報告に他の兵士についての事がない所がおかしい。

 

 コイツだけが門番がやられた事に気付いた可能性…

 これはありえない。

 ここに来るまでに他の兵士にも言っているはず。

 言っていればもっと兵士達は慌ただしくなるはず。

 つまり…

 

「お前の存在はありえない!」

 

 その時、突然…

 ダグラスがこちらに剣を抜いてきたのだ。

 いや、正確にはティアを狙って。

 

「ダグラス!?」

「無駄よ。」

 

 なんだか聞き覚えのあるよう…

 って!もしかしてその声ってまさか…

 

「…って!ね、姉ちゃん!?何やってんだよ!」

「ユウを助けに…」

「だと思ったよ!やりすぎだって!」

 

 言いきっていなかったが大体わかってた…

 だんだん兵士が消えていき、姉ちゃんがそこに現れる。

 なんというか…無理やり自分の中でストーリーを立てて実力行使…

 こんな事は何度かあったのだ。

 特に約束を破った場合はこうなる…

 

「そうでもしないとユウが…」

「はぁ…別に永遠に会えないんじゃないんだから…ダグラスのおっさんに何したの?」

 

 だがその答えを姉ちゃんから聞く前に

 答えは思わぬところから出てきた。

 

「幻術ですか…」

「…さすがは神に愛されし戦乙女(ワルキューレ)と言ったところかしら…」

「その名前で呼ばないでください。」

 

 幻術と言う事はもしかしてあの劇での事は姉ちゃんの幻術!?

 じゃあ、兵士たちはダグラスを含め…全員、幻術の中?

 

「そんな呑気な事言ってる場合?あなた…もう、ダグラスが見えないんじゃない?」

「もしかして…ティアも…」

「少し厳しいですね…」

 

 と言う事は恐らく俺が見ている物も現実か幻術か怪しい…

 そのせいで不用意に援護に入れない…

 

「ちょうどいい機会だし音に聞く神に愛されし戦乙女(ワルキューレ)がどれほどか…見させてもらおうかしら?」

 

 姉ちゃんの武器は薙刀

 一体どこでそんなの手に入れたんだよ姉ちゃん…

 

「その不名誉な二つ名は断じて認めませんが受けて立ちましょう。」

「ならこの男は邪魔ね…」

 

 そう姉ちゃんが言うとダグラスがどこに向かって歩いて行く。

 あれは本物なのだろうか…本物なら2人を相手取って戦わなくても済むが…

 幻術に掛かっている今なら一対一でもきついだろう…

 

「ダグラスと一緒じゃなくてもいいのですか?」

「いても邪魔なだけだしね。」

 

 どうしてもこの戦い止めないと…

 どちらが傷付くのも嫌だ…

 だが幻覚に掛かっていれば止めに入るのも無理…

 

「行くわよ?」

 

 だが俺がいくら考えていても時間は止まらない…

 遂に、戦闘の火蓋が切って落とされた。

 当然のごとく、姉ちゃんが最初に動いた。

 ダグラスの攻撃速度を上回るスピードでティアに迫る。

 

 振るわれた薙刀はティアを切り裂かんと迫る

 と思いきや薙刀がティアに当たる寸前で霧になる姉ちゃん。

 あれは幻術で作り出した幻ってことか…

 つまり、俺も幻術の中……これは拙いか…

 

 そう思った瞬間、ティアが瞬時に斬り返し虚空に向けて一閃する。

 何を?と思ったのは一瞬…起こったのは火花…

 

「よく分かったわね…」

「気配…と言う物でしょうか…何かを感じました。」

 

 気配…で?そんなことできるの?

 ティアってどんだけ規格外なんだよ…

 

(まぁ、こういう人らの気配っていうのは色々な事を無意識の内に知らず知らずの内に感じ取った結果と言う事らしいよ…)

 

 あぁ…空気の流れや魔力、足音とかそんなのを知らず知らず感じ取っていたってことか…

 そう言われてもピンとこないな…

 

「貴女…目は捨てているでしょ?」

「幻術士との戦いでは何の意味もなしませんから」

 

 視力と聴力を捨ててる!?

 だからさっきの幻には反応しなかった訳か…

 そんな事…確かに理にかなってはいるけど…

 そう簡単に出来るわけじゃない。

 

「他の幻術士とでも戦った事があるの?」

「えぇ、少し手こずりましたが勝ちました。」

 

 戦った事があるの!?しかも勝った?

 と言うことは実際に気配で捉えたってこと…

 

神に愛されし戦乙女(ワルキューレ)ってのもあながち大袈裟じゃないみたいだね。)

 

 あぁ…まさに、ティアの為にあるような言葉だ。

 

「そうなんだ…関係無いけどね。」

 

 姉ちゃんも物凄い自信だ…

 ソイツは私に劣る。私は貴女に勝てる…

 そう言わんがばかりの自信だ…

 だが姉ちゃんの目に驕りは見えない。

 

「ユウの姉とは言え、手加減はしませんよ?」

「こっちもよ!」


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