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第24話

「とても似合っていますよユウ。」

「ティアに貰った服なんだけどね…ティアの方こそ似合ってるよ。凄い綺麗だし、俺なんて服に着られてるみたいで…。」

 

 今日は、ティアと街を観光する日だ。

 当然、プライベート用の服に着替えている。

 まぁこの服もティアから渡された物なのだが…

 

 ティアもプライベートの服に着替えている。

 先ほどの会話はよくあるやり取りだが心の底からティアは綺麗だと思う。

 なんだか…自分がティアと並んで歩くなんて気後れしてしまうほどに…

 

「綺麗ですか…嬉しいです。」

 

 ほんのりと頬を赤らめて答えるティア

 そんな何気ないやり取りをしながら門番に挨拶をして街に繰り出す。

 この機にティアには存分に息抜きをしてほしい物だ。

 

「まだ、舞台までは時間があります。色々と物色していくとしましょう。」

「だけど貴族がこんな所に居れば騒ぎにならないか?」

 

 金銭面ではガルムのおかげで潤っているので問題は無いのだが

 貴族が街をうろついていれば色々と問題があるに違いない。

 

「大丈夫ですよ。そのためにこの服装なのです。」

「確かに華やかな服ではないけど…」

「それに隠匿(ハイディング)の効果がある法具がありますから。」

 

 例の結界みたいな感じか…

 だけど俺はしっかりとティアを認識出来てるが…

 

「貴族にはすり替わりを防ぐため強い隠匿(ハイディング)効果を持つ物の着用は禁止されているのです。今身に付けているのはそれほど強い効果が無く私を何度も見ているユウには効果が無いんです。普通の人なら私を私と気付く事はまずないでしょう。」

 

 そうなのか…

 質が悪い物しか使ってはいけないだなんて妙な法律だな…

 だけど確かに貴族だけの催しで隠匿(ハイディング)の法具なんてされれば不届き者が侵入出来るようになるからな…

 

「それなら安全だな。じゃあ、まずはあの屋台なんてどうだ?」

「分かりました。行ってみましょう。」

 

 凄いなぁ…全く見た事のない食べ物だ。

 今までのサラさんの料理は馴染み深い物ばかりだったのに対し街では見た事のない食べ物ばかりだ…

 未知の食文化に心が躍る。

 

「見た事が無いのですか?」

「あぁ…見た事のない物ばかりでテンションが上がるよ!どれもおいしそうだ!」

「そう言ってくれるとこっちも作りがいがあるってもんだ!安くしといてやるからもっと食って行きな!」

 

 おぉ!気前がいいなおっちゃん!

 じゃあ、御言葉に甘えてもっと貰うとしよう。

 

「もしかしてユウは貴族だったのですか?屋敷での食べ物は慣れた感じで食べていましたが…」

 

 どうやら元の世界の食事は貴族に出回る事が多いようだな。

 今度からは食事の反応にも気を付けるようにしないと…

 

「そんな訳ないじゃないかティア。たまたまじゃないかな?」

「そうですか。おじさん、私にもください。」

「はい、嬢ちゃん。彼氏に影響されたか?良い食いっぷりだもんな。」

 

 おいおい、おっちゃん…それはないわ

 確実に釣り合わないだろ。

 大体、こっちは付き合った事すらないのにさ…

 

「か、か、彼氏ですか……そう見えますか?」

「おうよ!お似合いだぜ?」

 

 おっちゃん、気持ちは嬉しいがお世辞もそこまでにしとけって

 ティアも恥ずかしさで俯いちゃってる。

 

「おっちゃん、お世辞もそこまでにしてくれよ。俺たちはそんな関係じゃないって。」

「おぉ、そうだったのか。すまんすまん嬢ちゃん。」

「いえ、気にしないでください…」

 

 まぁ、こんな雰囲気もたまには良いかもしれない

 こんな風にバカな話をして街を周るのも…

 

「じゃあ、おっちゃん。他のとこも周るから」

「おう!また来いよ。」

「分かった!」

 

 そのまま、ティアを連れてその屋台を後にする。

 いや、気持ちいいおっちゃんだったな…

 

「次はどこに行く?」

「あそこなんてどうでしょうか?」

 

 ティアが行きたいと行ったのはアクセサリーを売っている屋台だった。

 すぐ傍にまで行くと様々なアクセサリーがあった。

 どうやらおばあさんが売っているようだ。

 

「ゆっくり見て行っておくれ…」

 

 2人で眺めるがどれも良くてなかなか良い物が決まらない。

 こういう時は店主に聞くのが一番だよな。

 

「おばあさん、どれがお勧めかな?」

「この辺りだね…これは星座を象ったペンダントでね…」

 

 へぇ~この世界でも星座があるんだな…

 確かにここは夜空が綺麗だしそんな事があってもおかしくは無いのか?

 だが星座なんてほとんど覚えていない…

 ただ、二つだけ好きな星座があった。

 

「おばあさん………ある?」

「それにするのかい?」

 

 ちょうどティアは何か考えていて上の空だ。

 こっちが何か買っているとは思いもしないだろう…

 

「お願いします。」

 

 するとおばあさんは屋台の奥に行き頼んだ通りの物を持って来てくれた。

 どうやら本物は奥にしまってあるようだ。

 確かに盗られたら大変だもんな。

 

「高いが大丈夫かい?」

「はい、これで…」

 

 ふふっ…これはガルムの収入があって助かったと言うべきだろう

 いつ、渡そうか…ティアは喜んでくれるかな?

 そのティアは今、上の空なのだが…

 

「どうしたのティア?」

「少し考え事をしていました。」

「邪魔しちゃった?」

 

 邪魔するつもりはなかったのだが

 ここでずっと立っている訳にはいかないし店の邪魔にもなるかも知れない

 

「いえ、では行くとしましょう。」

「そうだね。そろそろ舞台も始まるだろうし」

 

 そのまま、舞台があると言う劇場まで行こうとしてしばらく歩いていると

 もう目的地寸前でティアが…

 

「すいません。少し忘れ物をしました。」

「えっ?大丈夫?何を忘れたの?俺がとりに行くから…」

 

 ティアを行かせる訳にはいかない。

 何を忘れたのか教えてもらえれば俺が行って…

 

「どこに忘れたのかも分かっているので私が行ってきます。」

「じゃあ、俺も…」

 

 ついて行こうと思ったのだが…

 それを言い終わる前にティアは…

 

「先に行っていてください。」

 

 それだけを言い残し走って行ってしまった。

 仕方がない…ここで待っているか…

 

 

 

 

 

 

 

 少しばかり待っているとティアが走って戻ってくるのが分かる。

 そこまで急がなくても良いんだけどなぁ…

 

「すいません。待たせました。」

「待ってない待ってない。急がなくてもよかったのに。舞台もようやく人が集まり始めた頃合いだし」

 

 むしろ少し遅いくらいがちょうど良かったんじゃないだろうか?

 まぁそんな事はどうでもいい

 

「じゃあ、行こうか?」

「はい。」

 

 どうやら客席が舞台から扇状に広がった感じの場所になっているみたいだ。

 そして、俺が来た目的…それは“柊”という者の正体が気になったからなのだが…

 だが、俺の知っている者が居るはずがない…

 ここは異世界なのだから…

 

「楽しみですね…」

「あぁ、そうだな…」

 

 まぁ、精一杯楽しむとしよう。

 俺の考えている事はあたっているはずがない事なのだから

 人も徐々に集まりだしそろそろかと思っていると声が響き渡る。

 

「今日は旅団雪月花の劇にお集まりいただき、誠にありがとうございます。」

 

 声の主は舞台の上に立っていた。

 あれはあの時、宣伝をしていたエルフの少年じゃないか

 

「今回の演目は……」

 

 残念ながら俺にはこの世界の劇の演目なんて分からない…

 ティアなら知っているかな?

 

「あれってどんな演目なの?」

「残念ながら私は知りません。」

 

 うーん、まぁいいか。

 これから分かるんだし

 

「この劇では魔法(アーツ)を使いますのでそこについてはご理解いただければ幸いです。」

 

 まぁ、この世界には魔法(アーツ)があるのだ。

 それを使わない手はないだろう。

 

「それでは皆さん、良い物語の世界に旅立つ準備は出来ましたか?では行ってらっしゃいませ!」

 

 すると一瞬にして周囲が暗くなりその少年の姿が消える。

 どうやら始まったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー楽しかったな!」

「はい、恐らく魔法(アーツ)の扱いに長けているのでしょうね。細かい所まで演出が行き届いていてとても良かったです。これなら貴族に呼ばれるのも納得です。」

 

 内容はありふれたお姫様を助けるという物語…

 しかし、観客を飽きさせないシナリオだった。

 演出などは周囲に現れるシャボン玉だったりあの世界と変わらない程の照明技術は凄かった。

 おそらくあれも魔法(アーツ)なんだろう。

 途中でシャボン玉が妖精に変わり縦横無尽に飛び回ったりする所などは魔法(アーツ)をうまく利用していると言えるだろう。

 物語で登場するモンスターや建物については元の世界を上回っていた。

 実際にそこに建てたり現れたのかと思ってしまうくらいだった。

 そして、登場人物を演じる役者たちも流石だったというほかない。

 完全にその世界と同化していて演出と比べても劣りを見せない。

 

「凄かったなぁ」

「そうだなぁ」

「ママ、また来ようよ!」

「そうね。また来ましょう。」

 

 これは俺だけでだけでなく他の人たちも同じのようだ。

 次々に良かったやまた来ようなど先ほどの舞台を称賛するものばかりだ。

 こんな劇は元の世界では絶対に見る事ができなかっただろう。

 

「しかし、どんな魔法(アーツ)を使っていたのでしょうか?」

 

 やっぱり、これは創造系だろうな。

 建物なんて実際にあったとしか思えない。

 すぐに場面に合わせた建物を創造したんだろう。

 生き物もいたしこれは俺と同じ事ができるんじゃないだろうか?

 

「きっと術師は戦闘も強いんだろうな…」

 

 こんな長時間、大量に創造出来るなんて魔力もかなりの量だろう。

 実は傭兵のついでにこの仕事をしていたりしてたりな…

 

「おっ!挨拶が始まるみたいだぞ。」

 

 どこからかそんな声が聞こえる。

 この素晴らしい劇を作り上げた人たちを目に収めんと注目が集まる舞台。

 すると煙と共に突然舞台に現れる人影…

 煙が晴れてだんだんとそこに居た人影が明らかになっていく

 そこには先ほどまで役を演じていた役者も何人かいるのが分かる。

 そして、中央の人影が話し始める。

 

「今回は旅団雪月花の劇を見る為に集まって頂き、ありがとうございます。」

 

 ………えっ?

 この声、やはり聞き覚えがある。

 

「皆さんに楽しんでいただけたのならこの日の為に頑張った甲斐があると言うものです。」

 

 夢じゃない…

 聞き間違えでもない…

 

「紹介が遅れました。」

 

 そうこの声を忘れるはずがない。

 そして煙というベールが取れ始める。

 

「私は団長の柊 未知です……」

 

 その姿、声を聞いた俺の頭はそこから先を聞き取れず…

 

 理解が追い付かず…

 

 感情は滅茶苦茶に混ざり合い…

 

 真っ白になってしまった。

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