第23話
取り敢えず落ち着いたのでここで聞いていた中で気にかかる事を聞いていこう。
「そうだティア、彼らはなんであんなにもすぐに俺の存在を知ったんだろう?」
「恐らく、ガネスが本部に流したのでしょう。教会の連絡速度はかなりの早さなのですよ。」
凄いな…ティアがかなりと言う事は恐らく軍と比べても遜色ないということだろう
しかし、教会がなぜそこまで?
「教会はそこまで早いの?」
「貴族の私軍よりは確実に早いかと、数もそれなりに多くその多くの人員が魔法を使えます。本当の軍より劣るとすれば、数の少なさとしっかりとした訓練を受けた部隊は少数な事だけでしょうか。」
どうやらここの世界の宗教は元の世界とは似ている所があるようだが本質は別と思った方が良いようだ。
しかし、それでも宗教である以上は何かしらの教義に従うとかがあって軍とは程遠い物にあるはず。
なぜ一種の軍とまでティアは言いきれるのだろうか?
「そこまでの力があるの?」
「魔法と言う物は物によっては一騎当千になる程…そう考えればしっかりとした訓練を受けているのが少数でも、その少数だけであらゆる状況をひっくり返すことも可能…それに、様々な法具に聖遺物を彼らは使いますから。」
だから、あそこまで俺の紋章についていち早く関わろうと…
しかし、法具か…魔法の力が宿った物の事を指すというのは知っているがまさか教会がそれを握っているとはな…
「法具や聖遺物は正規軍にもあるんだろ?」
「教会に数は劣りますが一応…しかし、ほとんどは教会から手に入れる事が多いのです。」
だけどそこまで武力を保持していい訳がない。
そんな宗教という自分がどうこう指図出来ない勢力が無視できな武力を所持しているのだ…
それをこの国は許しているのか?
「軍縮はさせれないの?」
「人員はあくまでも信者ですから兵士ではないと…基本的にこの国の法では宗教の自由を認めていますから…」
「それでも何か方法が…」
「しかも、法具や聖遺物という弱点を握られていますから…機嫌を損ねる訳にはいかないのです。」
もうすでに手遅れってことか…
恐らく他の国でもそんな感じなんだろうな
そして教会からすれば俺みたいな特別は絶対に手に入れたいと
そこまで大層な事は出来ないんだけどな…
「なんでこんな俺を欲しがるのか…未だに理解出来ないよ。」
「もう少し自己評価をしっかりするべきですよ。大体、彼らも国にそのような特殊な人材を渡したくないだけですから。もう少し“ユウ”を見るべきです。渡しませんが…」
「俺も離れる気はないよ。だけど、これからどうするべきか…」
街に出て教会関係の人にからまれるのは少し、いやかなり厄介だ。
何かティアは考えていたりするのかな…
「そうですね…困りました…」
あっ…無いみたいだ…
「まぁ、なんとかなるか…」
「そうですね。」
いざとなれば逃げようか…ドッペルゲンガーや飛鳥もいるし余裕だろう
捕まっても見せるのを拒めばじっくり観察されない限り分からないだろうし
容姿が詳しく流されているとヤバいが…恐らく流れていない。
あの神父は容姿の説明をしていなかったし紫の紋章と少年、ティアの部下以外はばれていない…
紋章の色なんかは魔法が発動しない限り光らないし
「そう言えば、庭でダグラスが呼んでいましたよ?」
「分かった。今から行くよ」
どうしたんだろうか?
呼ばれたりするような覚えがないんだけど…
まぁ、特に忙しい訳でもないしいいか
「気をつけてくださいね。」
「?」
何を気をつけるのだろうか…
流石にもういきなり斬りかかってきたりはしないだろう
何をされるかもしかして知っているのか?
だけど教えてくれるのなら既に言ってくれているだろうし…
仕方ない…行くか…
言われた通り庭に出るとそこではダグラスが確かにいた。
「おう、来たみたいだな!」
「なんで俺は呼ばれたの?」
「なんだ元気がないな!せっかく俺が訓練してやろうと…」
あぁ、嫌な予感的中…
ダグラスの訓練とか絶対にろくなものじゃない。
生きて帰れますように…
「まぁ、まずは得物を選べ。まずはそこからだ。」
そう言って見せられたのは数多くの武器だった。
両手剣…片手剣…ナイフ…斧…槍…ハンマー…ハルバード…鎌…etc
鎌とハンマーは武器じゃなく無いか?
「なんだ?ピンとくる物は無いのか?」
「まぁね…武器なんてほとんど握った事が無いからさ…」
「じゃあ、仕方ねぇ…全部使うぞ!」
はぁ、性格から見極めるとかそう言うのは出来ないの?
いや、薄々気づいてはいたよ?
コイツがそんな器用な事、出来るはずがないって
「ほら!最初はこれだ!」
渡されたのは片手剣…
仕方ない…今までの少ない経験から出来る限り引き出してやれるだけやってやるか…
「ほら!打ちこんで来い!」
ダグラスは両手で持つ大剣だ。
正面から打ち合う事になればこちらが不利…
攻撃を回避してから現れた隙を狙うしかないか
「行くぞ!」
一気に距離を詰めに入る…
敵の間合いに入る…
って!早い!
初動は大剣を使っているとは思えない程早い…
振り下ろされた剣が地面を砕く勢いで叩く。
すぐに横に跳びなんとか躱すが…
「おいおい、手を抜いているのにこれか?」
「無茶言うな!なんでこんなに威力高いんだよ!木剣使え!」
「贅沢な奴だな…」
知るか!訓練で死ぬなんて御免だよ!
渋々木剣を持ってきたダグラスだが…あの威力じゃ木剣でも死ぬかもな…
「軽いな…今度はこっちから行くぞ!」
そう声を上げるダグラス。
気づけばすぐ傍に居るのだから性質が悪い…
なんとか剣で受けるが…
「バカだろ!なんでこっちが吹き飛ばされんだよ!」
耐えきれず3メートル程後ろに飛ばされた…
なんとか膝はついていないがこんなのやってられない!
「仕方がない…次の武器だ!」
コイツ…何も分かってない…
ただでさえ今のでボロボロなのに
こんなの…全部やり終えた頃には……
庭には一体の死体があった。
「おーい!早く起きろー」
「…全部やっただろう!」
正確には限りなく死体に近い状態になっていた。
なんとか全部の武器を使ったが当然、結果は
「全部同じじゃねぇか!」
同じ負け方をずっとしていた。
しかし、俺からすれば片手剣とナイフ、槍はまだマシだったしハルバードも手ごたえがあった。
だが、他はからっきしだった。
「仕方ねぇ…また今度同じ事するか…」
「じゃあ、今日は終わりか?」
やった!終わりだ!
俺はやりきっ…
「な訳ねぇだろ!日が暮れるまで腕立て伏せだ!」
あぁ、よりにもよって時間指定…
しかも、手にダメージが蓄積されているというのに…
仕方ない…やるか…
「何やってんだ!これを背負ってに決まっているだろう!」
「あんた俺を殺す気か!これハルバードじゃねぇか!」
大剣の次に重い武器だ…
こんなの何の役に立つんだよ!
「聞いたぞ!お前の魔法には負荷っていうデメリットがあるみたいだな?つまり、それに耐えれば耐えれるほど長く戦える訳だ!筋力も上がるし一石二鳥と言うやつだ!」
クソッ…確かにそうだ。
やるしかないか…
気づけば日も沈み夜の帳が下りていた。
しかし、俺は腕立て伏せをした後に腹筋もやらされ…
まさに、満身創痍の瀕死状態の時にサラさんのご飯の呼び出しがあり…なんとか訓練は終了。
だが、あんなにも激しい訓練の後だったので俺に合わせて少し遅れてのご飯となった。
「大丈夫ですか?ユウ…」
「あぁ…なんとかね。」
俺の事を心配してティアが大丈夫かと聞いてくるがなんて事はない。
少し目の焦点が合わなくなり身体中に力が入らなくて自分ひとりじゃ動く事ができない程度だから
(きっとそれを大丈夫とは言わないよ?)
ステラの言うとおりだが、大丈夫じゃないなんてティアには嘘でも言えない
男のちっぽけなプライドってやつだ。
「ランニングもしたかったんだが…何せこの辺りに詳しくないからな…」
おい、まだしてない事があったのかよ!
まだメニューが増えたらこのちっぽけなプライドなんてすぐに砕け散る…
「当分は控えてください。もしユウが迷いでもすれば教会の者に何をされるか分かりません」
おぉ、それじゃあこれ以上増える事は…
「それもそうだな。他のメニューを増やしてランニングは諦めるか」
他が増えるのね…
次の訓練が永遠に来ない事を願う。
「結局はどんな武器を使うことになったんですか?」
「まだ、コイツに合った武器は見つかってない。筋の良い物さえ見つかんねぇ」
残念ながら事実だ。
どれを使っても技術面では普通の兵士以下だろう…
なんとかステラとの契約で流れて来ていた大量の魔力で身体能力が強化されているから普通の兵士には勝てるだろうが…
「やっぱり憑依での武器だけしか使えないと思うよ?」
憑依で呼び出した武器たちは意思を持っているため俺の動きを補佐というか導いてくれる。
おかげで技術面も底上げされる。
だからもともとの実力は関係がない。
「ダメですよ。身体を壊す、自壊覚悟の魔法なんて」
だけどあれが意外と練習にもなる。
あの憑依の時の感覚が無ければ俺は手が折れてる。
それにダグラスの訓練も憑依も大して変わらないような…
「そうだな、まずは頑強な身体を作ってからにしろ。今のお前にはそれが一番だ。」
「頑強な身体があってもそんなのダメですよ!」
同じ男であるダグラスはあの憑依にあまり否定的ではないが女性陣2人は否定的なようだ。
まぁ、心配してくれるのは嬉しいし申し訳なくも思う…
だけど、ガルムの一件では自分の力不足をはっきりと思い知った。
いざという時には憑依が重要になるかも知れない…
「だけどやっぱり…俺は憑依を使いたい…」
「………」
「………」
2人は俺の真剣な気持ちを感じてくれたのか黙りこんで考え始める。
しかし、その中でダグラスは…
「……そこまで言うなら、俺は良いと思うぞ」
静寂の中、ダグラスの声はよく聞こえた。
何故だろうか、今この場で一番俺を理解してくれているのはダグラスの様な気さえする。
もしかしたらダグラスも同じ気持ちになった事があるのかも知れない。
「………分かりました…しかし、絶対に身体に無理が及ばない範囲ですることとしっかりと身体づくりをすることを約束するならですが」
「私もティア様と同じ意見です。」
「分かった!約束する!」
これで俺も強くなっていける。
絶対にみんなと並び立つくらいに強くなってやる。
「本当に分かっているのでしょうか…」
「仕方ありません、男の子と言うのはこういう生き物だと私も聞きます。」
目の前ではやる気を漲らせるユウを見て先を心配するティアそして諦観しているサラの様子にユウは気付かないまま自分の手を見つめて訓練の事を考えていた。
「それだけやる気があるなら教える方もやる気が出るってもんだ!覚悟しろよ?」
「おう!」
訓練をしていた時の事を忘れたかの様に溌剌とした返事を返すユウ…
微笑ましい空気の食事を終え、エリアス一日目を終える一行だった。




