表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/92

第22話

「着きましたよ~」

 

 馬車に揺らされる事、数分…

 そこまで離れてはいないようだ。

 俺は馬車から眺める街の外観に見入っていた。

 ティアはあの話からずっと何かを考えているような感じでほとんど言葉を発してはいない。

 

「ここが別荘か…やっぱり凄いな…」

「まぁ、貴族ですからね。普通の住宅とは違いますよ。」

 

 アルカディアの屋敷よりは小さいがやはり普通よりは大きな屋敷だった。

 まぁ、前までここが領地だったのならこのくらいの大きさでもおかしくは無いか…

 

「しかし、生活に不要な物はほとんど売りましたので豪華ではありませんが」

 

 どうやら思考の海から戻ったのかティアも話に入ってくる。

 まぁ、豪華じゃない方が俺は良いからちょうどいい

 

「そのくらいがちょうどいいよ。あんまり豪華絢爛だと萎縮しちゃうし」

「それなら良いのですが」

 

 そこから中に入りサラさんから屋敷の案内を受ける。

 やはりサラさんも何度かここを訪れているようだ。

 

「えぇっと、ここがキッチンです。えっと、ここに包丁が…あれ?ここじゃない?どこにしまったのでしょうか?」

 

 大丈夫だろうか?

 どこに包丁をしまってあるかを忘れるのはメイドとして危ないと思うのだが…

 

「俺も探しますよ…」

「うぅ…すいません…」

 

 この調子じゃ料理とか絶対つくれないだろ…

 そうこうして探しているとサラさんがずっと連れていたリオがある棚をずっと見ているのでなにか言いたいのだろうかと思い意思を聞いてみると「ここだ。」いうイメージが飛んでくる。

 

「おぉ、凄いな?本当に見つけていたぞ。」

「ふぇ?どうしたんですか?」

「リオが包丁を見つけたぞ!」

「えぇー!凄いですね!」

 

 これはサラさんの傍にリオをつけて正解だな…

 これから頑張ってサラさんを助けてやってくれよリオ。

 そこからの案内はサラさんがドジをしては何故かリオがフォローすると言う事を繰り返しなんとか終わった。

 

「そう言えばティアはどうしたのですか?」

「何か調べごと専門の兵士たちに頼んでいたので調べごとかと…」

 

 何か気になる事があったのだろうか?

 まぁ、グリゴレウスと言う領主と色々話しこんでいたみたいだし不思議でも無いか。

 そんな事を考えていると屋敷前の門番をしていた兵士がこちらに向かって歩いてきた。

 

「すいません。聖教会の神父様とシスターがティア様にお話しがしたいと来ているのですが…」

 

 ん?聖教会と言うとあの神父がいた宗派か…

 まぁ、あの神父は基本的にあの教会からは出ないと言う話だしここまで追いかけては来ていないだろう。

 と言うことはここの街にある教会の神父と言う訳か…

 

「わかりました。ティア様に聞きに行きましょう。」

 

 そのまま、俺たちはティアの部屋へ向かった。

 ティアの部屋に行くと少し嫌そうな顔をして渋々と言った感じで話を聞くという返事をした。

 

 すぐさま神父とシスターを客間に案内するために兵士が門に戻り、サラさんはお茶を用意しにキッチンへ向かった。

 そのまま俺もサラさんの手伝いに行こうとするとティアに呼び止められる。

 

「ユウ、客間の隣の部屋で静かに待機していてください。」

 

 どうしてだろうか?

 別に見つかっても何も無いだろうに…

 まるで隠すかの様に

 

「不思議かも知れませんが今は時間がありません。取り敢えず隣の部屋に」

「わかった。」

 

 まぁ、ティアの言葉だ。

 何か意味があるのだろう……

 きっと、この後に説明もしてくれるだろうし、ここは大人しく従うとしよう。

 俺はすぐさま客間の隣の部屋に入り息を潜める。

 

 するとだんだんとこちらに…いや客間に向かって歩いてくる足音が聞こえてくる。

 

(数は4人ね…)

 

 ほぅ…よく分かったな…

 合ってるかどうかは知らないが

 

(案内の兵士が2人、後は神父とシスターだろうね)

(そう言えばティアはまだジオを連れていたのでは?)

 

 そうだ!飛鳥の言うとおりティアとずっと一緒だったはず!

 視界を共有化(シェアライズ)すれば中の様子は分かる。

 

(問題は声ですが…)

 

 共有化(シェアライズ)では聴覚は共有できない。

 さて、どうしたものか…

 

(耳を澄まして聴けば聞こえるんじゃない?)

 

 そう簡単に聞こえるかな?

 客間での話しが漏れるような壁じゃないと思うが…

 

「どうぞ、こちらへここでティア様がお待ちです。」

「そうですか、ありがとうございます。」

 

 あの兵士と女性の…いや、シスターだろう人物の声が聞こえる。

 これはステラの言う通り、案外聞こえるかもしれない。

 

「ようこそ、今日はどのような用件で?」

 

 ティアの声が聞こえる。

 これはいけるな…

 

共有化(シェアライズ)

 

 視点が部屋の隅にいたジオに変わる。

 どうやら、2人ともエルフのようだ。

 

「はじめまして、まずは自己紹介を、私はこの街の聖教会の神父、カルロスです。」

「私はシスターのナターシャです。」

 

 ティアは初対面か…

 つまり、初対面でも分かる何かの理由があって俺を接触させたくない訳か…

 

「私はティア・シンフィールドです。」

「存じております。確かご両親は…」

「そのような話をする為にここを訪れたのですか?」

 

 おっと、ティアは楽しくお話をするつもりは無いらしい

 言葉に険が混じるのが分かる。

 貴族との話の上で褒めると言ったら…

 まず、家の功績って辺り…

 ティアにとっては火に油を注ぐような話の切り出し方だからな…

 

「失礼しました。この場でする話ではないですね。」

 

 相手もそこまでティアを怒らせる気は無いらしい

 まぁ、これからは一言一句に気をつけて話す事をお勧めするよ。

 恐らく、神父はこう言った話し合いに慣れていない。

 さっきのも、何も考えずに取り敢えず話をと思った結果だろう。

 

「…それで、ご用件は?」

「実は、とある噂が私の耳に届きまして…」

 

 噂…?生憎と街に来たのはこれが初めてだからそう言うのには疎いんだよな…

 ティアはもしかして知っているのだろうか?

 

「噂だけで私の元に来たのですか?私はそこまで軽く会える訳ではないのです。このままだとこれからはあなた達の事は門番に言い渡し門前払いにしてもらうかも知れませんよ?」

 

 うわぁ…きっついなティア…

 俺ならこんなの耐えれないね。

 

「いえいえ、ティア様を軽んじている訳ではないのです。しかし、私たちにとってはとても重要な事なので念の為、確かめに参った次第です。」

 

 重要ねぇ…

 どうやらここに何か訳がありそうだ。

 

「聞きましょう。」

「ありがとうございます。実は、その噂というのは手の甲に紫色で月と星の紋章を持った少年がティア様の下にいるという物でして、その人物に教会に来ていただきたいのです。」

 

 もしかして、それ……俺の事?

 それでティアは俺を隠したのか…

 どうするんだ?ティア?教えるのか?

 

「それは個人の問題です。その噂の本人に聞いてください。」

「では、その本人に会わせてくれませんか?」

「残念ながらその“本人”とやらが誰なのか私にはわかりませんので無理ですね。」

 

 ……ティア、中々に逞しいな

 ティアへの感謝の念が込み上げてくる。

 しかし、大丈夫だろうかいくらティアでも相手は大人だ。

 

「それではティア様の下にいる。少年に会わせてもらえますか?」

「残念ながら私も全ての部下を把握している訳ではありませんので…」

 

 凄いなぁ…俺ならこんなやり取りは無理だ。

 ティアの受け答えには一瞬の逡巡すらも無かった。

 俺なら間違いなくすぐにボロがでるね。

 

(まぁ、領主だからね。そこらの奴に舌で良いようにしてやられてればここまで生きてないでしょ。)

 

 それもそうか…

 そんなことをこんな歳からしないと生きていけないなんて…

 

「そこをどうにかしていただけませんか?私たちが聞いたことが確かならこれは教会にとって、大きな意味を持つかもしれないのです。」

 

 隣にいたシスターが今まで一言も話していなかったのにこれでは収穫が無いかもしれないと焦って口を開くが…

 

「私には部下を保護する義務があります。」

 

 とティアが一刀両断する。

 なんだか少し情けない気持ちになるなぁ…

 ティアにここまで守ってもらって…

 

(その分、他の事で返すしかないでしょ?)

 

 確かにそうだよな

 ここは大人しく守ってもらうとしよう

 しかし、何故シスターを連れてきたのだろうか?

 このような話し合いの場ではこのシスターは不用だろうに

 

(まぁ、おおよその検討はつくけどね?)

 

 おっ?どうやらステラには理由が分かったらしい

 どんな理由があるんだ?

 

(また後でね)

 

 まぁいいか、別に滅茶苦茶知りたいと言う訳でもないし今は話を聞き取ろう

 

「……もし、見つかれば僅かながらに御礼も用意しております。どうでしょうか…」

 

 ………神父め…そこまでしてどうして俺を探すんだ?

 普通なら何の取り柄も無い一人の身を出すだけで御礼(かね)が手に入るのだ…

 さし出すのが当然、当たり前なのだ。

 俺はもしここで突き出されても文句を言うつもりはないしむしろ喜んで出ていくが……

 

「それは大切な仲間を売れと?そういう事でしょうか?」

「いえ、そういう事では…」

「シンフィールド家を侮らないでください。もし、私がその噂の少年を知っていたとしても、どれほどの金額を積もうと…そんな考え方のあなた方との取引に応じるつもりはありませんので!そのような人はいずれ金で裏切るのですから。」

 

 そのしっかりとした言葉は俺の心にも刺さった。

 一瞬でもティアが俺を突き出されたらなんて思った自分が恥ずかしい、いや許せない…

 ゴメン、ティア…

 

「け、決して侮っていたのではなく…」

「これ以上は聞きたくありません。どうぞお帰りください。」

 

 ティアの声は冷静にそして、しっかりとした怒りを感じさせる声だった。

 今、ティアはどんな顔をしているのだろうか…

 死角になっていて見えない事を俺は残念に思った。

 

「……すいませんでした。では…」

 

 その声と共にドアを開ける音が聞こえる。

 そろそろ終わるかな…

 

「また、機会があればその時に…」

 

 んー、粘るなぁ…

 まぁ、理由があるのだろうな…

 そこから足音が遠ざかって行くのが分かる

 すると今度はこの部屋を開ける音が聞こえる。

 

「終わりましたよ。すいませんでした。」

「いや、いいよ。俺の為だったんでしょ?」

「も、もしかして…聞いていたのですか…」

 

 どうしたのだろうか?

 突然、顔を赤くして声が震え出す…

 あぁ、照れてるのか…

 

「嬉しかったよ?俺の為にあそこまで怒ってくれて…」

「そ、その…あれはシンフィールド家の誇りとか…」

 

 あぁ…凄く可愛いなぁ…照れてるティア…

 下を向いてうつむき、声が小さくなっていくティア

 なんだかこっちまで恥ずかしくなってくる…

 

「まぁ、ありがとね。どんな思惑があったとしても俺は嬉しかったからさ…」

「うぅ…そんな…当然の事をしたまでで…」

 

 それでも自分を守ってくれたのが嬉しくて仕方がない。

 だけどこのままだと話が進展しない

 

(誰のせいだろうね?)

 

 俺のせいか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ