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第16話

 あまりの眩しさに目を閉じてしまう…

 恐る恐る目を開けるとそこには先程のステラの世界じゃなくガルムとの戦いの為の戦場…。


「どうかしたのですか?」


 俺の戸惑う姿を見た部隊長が心配して声を掛けてくる…

 どういう事だ…?

 周りの状況を見るとそう…

 まさにステラに呼び出される前に戻った見たいに…


「やはり体への負担が限界を……」


 いや…戻ったのではなく

 元より進んでいなかったのか…


「いや大丈夫です。それより作戦を続けましょうか!」

「しかし、グリフォンもそろそろ出せなくなるようですし…拘束もできない状況…」

「代案があります!皆さんは指示通りに最後のダメ押しに加えこれをガルムに当ててください!」

「了解した!頑張ってくれ!」

「余裕ですよ!この程度、目を瞑ってでも出来ます!」

「?それならいいが…」


 ここで部隊長の男は不思議に思う。

 ユウの様子がつい先ほどからおかしいのだ…


 先ほどまではあそこまで自信が無かったはず…


 まるで中身が変わったかのように…

 しかし、それは良いことであり、悪い事でもある…

 自信はいずれ勇気となり勇気は人を強くする。

 しかし、行き過ぎた自信はいずれ過信となり、過信はいずれ身を滅ぼす…


「くれぐれも気をつけられよ…」

「大丈夫だって、心配性だな~」


 それじゃあ準備を始めますか…


(来てくれ!飛鳥!)

(?どうしたのですか?いつもと様子が違うようですが?)


 まぁここでステラの事を話す必要はないのだろう。

 なんせ悪魔だから聞こえが悪い。

 心配させるだけだろう折を見てまた今度、話すとしよう。


(まぁ気にするな!ここから先は飛鳥の時間だ!)

(そうですか…ではすぐに向かいます。)


 あの契約から力が漲るのだ。

 しかし全快したわけではない…

 言うならば…上限が増えってその分の魔力があるだけだろう…


 しかしそれでは足りるか分からなかった自分はさらに力を悪魔(ステラ)に求めた。

 だから今、俺は代償として一番大きい、そして一番大きくなっていくだろう“不安”をステラに捧げ続けている…


 しかし、それは激情足りえない…それ故にあまり強くなれない…

 だがそれだけで十分だ!


 俺は約束したのだ。ティアに“戦線を支える”と…

 男に二言はない!


「おっ?来たようだな。」


 突然、空を見上げそう呟くユウを見た部隊長は疑問に思い問いかける。


「何が来たのだ?」

「頼れる相棒だよ。」


 しかし部隊長の男の目に映るのは一羽の烏…

 人影など空にはなかった。

 しかし、頼れる相棒と言うのはまさにその烏の事だった。

 地に降り立つ飛鳥…


(到着しましたよ?でどうするのですか?)

(そこで立っていて、すぐに始めるから)


「少し下がって。」

「何をしようというのだ?」

「まぁいいからいいから」

「むぅ…分かった。」


 部隊長は怪訝な顔をしながらもなんとか一歩下がる…

 じゃあ始めますか…


楽園昇華(パラダイスシフト)!」


 俺は紋章のある右手を飛鳥に向ける…

 そして変化は始まる。

 紋章と飛鳥が呼応するかの様に光り始めたのだ。


(これは…)

「これは…」


 突然起こる不思議な現象に戸惑う飛鳥と部隊長…

 しかし、本当の変化はここから…


 あまりの眩しさに飛鳥を直視出来るものはいない…

 その光が収まると飛鳥の居た所には…


「!?なんだと…これはどういうことかね!?」


 人が一人乗れるほどに大きくなりその黒羽は輝いていた…

 どことなく神々しい様はもはや伝説の神獣と言われても周りの人々は信じるのではないだろうか?

 しかし、これは正真正銘、飛鳥だ。


(何でしょうか…力が漲ります…)

(満足いただけて何よりだ…しかし、喜んでいる暇はない!背に乗せてくれ!)


「部隊長!戦闘が始まるぞ!グリフォンはじきに消える!」

「なっ!おい!貴様ら戦闘再開だ!気合入れていけ!!」

「「「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 大気を震わす程の雄たけびをあげる兵士たち

 全員が決死の覚悟でこの戦いに挑んでいるのだろう…

 その全てを俺は背負おう!


(では行きます!)

(あぁ行ってくれ!)


 その羽ばたきは突風を引き起こし砂塵を巻き起こす。

 大空に飛び立つ飛鳥…


 そしてガルムと戦うグリフォンが消え始める…


(すまない…私は奴を倒す事ができなかった…)


 そう詫びる申し訳なさそうな声が頭に響く…

 しかし彼は立派に与えられた役目を果たした…


(いいや、いいんだ。俺がきっちり倒してやるからさ?)

(なんとも頼もしい主だ。)


 そうやって帰って行くグリフォン…

 これは楽園昇華(パラダイスシフト)の副作用

 これを使うと同時に顕現させ続ける事は出来なくなるのだ…


 そしてグリフォンが居なくなれば当然、相手は自由になるわけで…


「グルルルゥゥゥゥ!」


 怒りを露わにするガルム

 しかし、俺を標的(ターゲット)にされてしまうと困る…


「撃てぇぇぇぇぇ!」


 その声とともに二つの弩穹(バリスタ)から弾が撃たれる…

 どうやら弩穹(バリスタ)は弾かれないようだ。


「ガアアァァァァァ!」


 しかし、効果抜群とまではいかないようだ。

 まぁこれで標的(ターゲット)があちらに向いてくれたが…

 そしてギリギリまで引き寄せると渡しておいた“ゴレアスに渡されていた煙玉”を使う。


「ゴギャァァ…!」


 しかし、想像以上に煙玉の効力が高かった。

 その煙は一瞬にしてガルムの体を覆い隠すほどに広がる…

 しかも、催涙効果が効いたのか唸り声もほとんど上がらない…


(すげぇ威力だな…奴の背に飛び掛かるから姿が見え次第接近してくれ!)

(分かりました。)


 うわぁ影さえ見えない…

 ずっと出てくる瞬間を今か今かと上空を旋回して待ち続ける…


 そしてその瞬間は訪れる…

 煙からガルムが出てきた…

 その姿は少しぐったりしているように見えた。


(今だ!)

(行きます!)


 絶好のチャンスだ。

 これなら簡単に乗れる!

 旋回を止め上空から滑空していきガルムのちょうど真上を通った瞬間に跳び下りる…


「喰らえぇぇぇ!!」


 俺は手に持った短剣を思いっきりガルムに突き立てた。

 この短剣は俺がもしかすると俺があの時出会った魔物が襲撃に加わってくるかも知れないとふと思いゴレアスさんに毒を持っていないかと聞いたのだがちょうど持っていたらしい。

 それが塗られた短剣…これが俺の最後の作戦だ。


「ガルゥゥゥゥ!」


 ブスリと刺さる短剣と共に苦しみ始めるガルム…

 しかし最後の足掻きと言わんばかりに暴れ始めるガルムによって吹き飛ばされる。


「ったく!まだ動けるのか!」


 そこで前もって言ってあったダメ押しが始まるがどれも致命傷には至っていない…


「すまない飛鳥!強制送還(パラダイスリゲイン)!」


 それにより強制的に帰還する飛鳥…

 これですぐに他の誰かを呼び出せる…


「失楽園(パラダイスロスト!)」


 誰でもいい楽園昇華(パラダイスシフト)で強くなれるなら!

 そう思っていたら現れたのは…キツネ?


 キツネなんて…普通の動物だ。確かにさまざまな物語で登場するが…

 そうか!


楽園昇華パラダイスシフト!」


 先ほどとまるっきり同じ現象が起こる…

 しかし、結果は違う。

 確かに現れたのは大きくなったキツネだが大きく違う点がいくつかある。


 その一、大きくなった狐の周りを浮遊する青白い鬼火…

 その二、四つに増えた尾…


 そう…コイツはもうただの狐じゃない

 妖狐…そしてその中でも1000年以上を生きた…


 天狐―――


(殺れるか?)

(いけますよ~)


 なんとものんびりとした声だ…

 まぁそれも個性か…


(じゃあ殺ってくれ…)

(分かりました~いきますよ~)


「キュ~~~ン」


 その気の抜けた声とは裏腹に攻撃は物凄いものだった。

 周囲の鬼火がガルムに向かっていくのだ

 そしてその鬼火はガルムに纏わりつき燃やし続ける…


「ガァァァァ…!」


 ガルムはまるで悲鳴を上げるかのように咆える…

 しかし、粘り強い事にまだ抵抗しようと焔の弾を放つガルム…


 だが、足掻きも空しくいつの間にか補填されていた鬼火で迎撃される。

 しかし、迎撃した際に発生した爆炎で俺が吹き飛ばされてしまう…


「ぐあぁぁぁ!」

(ユウさ~ん~……)


 そのまま勢いよく地面を転がってしまう…

 そして、その際遂に体が限界を迎えた。

 元よりボロボロだった事にガルムに短剣を刺す際に乗る時と吹き飛ばされた時…極めつけに天狐の召喚は無理があった。


 これ以上は天狐を維持できない…

 あと少しだと言うのに天狐が消えていく…


 もうこの場にガルムに叶う者はいない…

 ガルムはここまで自分を追い詰めた敵に向かい焔を放とうと魔力を集めていく…

 隙だらけのまま転がる人間などガルムにとってはもはや敵ではなかった。


 ユウはその焔が放たれる瞬間、これから起こるであろう事を理解し反射的に目を閉じた…

 ………

 ……

 …

 しかし、死のその瞬間はいつになっても訪れない…

 恐る恐る目を開くと俺は地面ではなく誰かに抱きかかえられていた。


「間にあった…失わずに済んだ…」


 その声は聞き覚えのある彼女の声だった。

 あぁ…俺は助かったのか…。


「……ティア。」


 その言葉のあと俺の視界は暗転した。






「間にあった…失わずに済んだ…」


 なんとか刹那求望(フェレス)で危機一髪助ける事ができたが…

 もし少しでも遅れていれば失っていた。


 彼は最後の最後まで約束を守りボロボロになってまで仲間の為に戦ってくれた。

 だからここからは私が代わります。


「……ティア。」


 ゆっくり休んでください…起きた時には何もかも終わらせておきますから…

 だから少しここで待っていてください。

 そう心で呟きユウをその場に降ろす…

 私の大切な人を傷つけた罪…


「ここで…償ってもらう!!刹那求望(フェレス)!」


 動きの鈍い狼なんて死んだも同然…

 一瞬で接近し体のいたるところに傷を刻み込んでいく…

 なんとかガルムは抵抗を試みようとするが、すべてが空振りに終わる。

 一瞬にして現れ、切り裂き、ぶれるように消える。

 そんなティアの姿など手負いのガルムに捉えられるはずがなかった…


「さすがユウですね…既にここまでダメージを与えていたとは…」


 もしこのダメージがなければガルムはもっとまともにやり合えていただろう…

 しかし、グリフォンとの戦いと毒、そして鬼火である…

 もう少し続いていればガルムはあそこで死んでいただろう…


「だがお前がさっさと死なないからユウは無理をしてまで戦った…」


 その声はまたあの二人を惨殺(オーバーキル)した時の声になっていた。

 そして振りかざされる理不尽…

 ガルムにしてみれば生きる為に足掻いているだけ…

 そして戦いとは生死を掛けた勝負。

 そこに善悪はない。

 ここを襲った事を除けば戦った事は咎められる行為ではない。


 だが既にティアの頭の中には一つの掟があった。

 その掟は法や摂理を越えた唯一絶対にして、神聖な犯してはならぬものにまで昇華されていた。

 その掟とは…

 

「ユウを傷つける物は全て万死に値する!」


 更にスピードをあげたティア…

 もう誰もティアの姿を捉えることは出来ない…

 見えるのは見るも無惨にガルムに咲く紅い花…


深淵刹那(ディレイ)


 その言葉と同時にピタリとガルムの全てが停まる。

 紅く咲き誇る花も宙で咲いたまま散らない…

 正確に言うならば停まったのではなく…


 限りなく遅くなったのだ。


「ここが貴様の処刑場だ…」


 その言葉は時間を遅くされたガルムに理解される事はまずないだろう…

 だからこれは区切り…

 これでもう刑の執行を終わるという


 その瞬間、ガルムは体のいたるところから紅い花を咲かせ、その生涯を終えた…


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