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第10話

 それにしても疲れが半端じゃない。

 流石に長時間の体への負荷は堪えた。

 早く帰らないとな…

 あの声については後々考えていくとしよう

 そのあと狼を呼び出して村の近くに走ってもらった

 村の近くで狼には戻ってもらいそこからは歩いて屋敷に帰った。


 空はもう既に暗くなっていて屋敷に帰るとサラさんがあたかも帰ってくるのをわかっていたかのようにに迎えてくれた。


「お帰りなさい。晩ごはんの用意が出来ていますよ。」

「あぁ…ありがとう…ずっと待っててくれたの?」

「いえいえ、帰ってくる気がしたのでさっき出てきただけですよ。」


 凄いな…一流のメイドはやっぱやることが違うな

 気がした…だけでよく出てこれるよ。

 しかも当たってるからなんとも言えない…

 しかし時々ドジになるのはどう言うことなんだろうか…


「遅くなってすいません…」

「いえいえ、構いません…しかし今度からは昼御飯の時には帰ってきてくださいね?料理は私の数少ない特技ですから振る舞わせてくださいよ?」


 何をしてたのかを訊いてこない彼女は実は全部知っているのでは無いかと勘繰りしたくなる。

 怪我をしているし服は汚れているのに…

 彼女は何も訊いてこない…

 俺の事などどうでもいいのか…全部知っていて尚訊かずに見ててくれるのか…


「着替えを用意してますのでこちらへ」


 確かに着替えないと…ティアに余計な心配をかけるかもしれないしな…


「おりがとうサラさん」

「礼には及びませんよ…ティア様にはあまり心配をかけないで下さいね?ティア様は自分の周りから人が消えるのが怖いのです。」


 声を小さくしてそう言うサラさんの顔には確かに心の底から主を心配する心情が読み取れた。

 予想以上に俺はティアを心配させてしまったのかもしれない…

 今度からは気をつけないとな


「すいません…今度からは気をつけます」

「なら安心です。着替えを用意してますのでこちらへ」


 このままでティアの前に行くと更に心配するかもしれないのを考えるとここはお言葉に甘えさせて頂くとするか


 しかしこんな事を言うのは何だが俺が帰ってこないのを心配してくれる人がいると言うのは罪悪感だけでなくどことなく嬉しく思ってしまう。

 そしてティアの事を考えると心配していると言うのにそれを嬉しく思っている自分が少し醜く思えて軽い自己嫌悪に入る


 着替えを済ませて食卓に着くとティアも来ていた。

 さっき俺が着替えをしている間にティアをサラさんが呼びに行っていたのだろう


「すまないティア…遅れてしまって」

「謝らなくてもいいです。無事で帰ってきてくれればそれで…」


 俺の姿を見るなりそっと胸を撫で下ろしている様子を見る限りどうやらティアは取り敢えず安心してくれたみたいだ。


「ギュー」


 そこで俺の腹も安心したのか食事を寄越せと抗議の声をあげる


「はぁ…取り敢えずご飯にしましょう。私もお腹が減りました。」

「うぅ…すいません…」


 拍子抜けしたティアは呆れた顔をしながらもそのあとしょうがないなといった感じの顔に変わっていた。


 確かに朝に一食食べただけでそのあとはなにも口にしていない。

 それで一戦乗り切ったというのだから腹ぐらい減っていて当然だろう。

 その後の食事はとても美味しかった。

 サラさんの腕前に空腹という最高の調味料を使っているのだからまさに鬼に金棒だろう


 これから先、俺は例の期限ギリギリまで毎日魔物と戦いを続けるつもりだ。

 今日の事を振り返ると今の俺が役に立つとはとても言い切れない

 あの声がなければもし周りにすがれる人がいたら…俺はグリフォンを呼び出すことすらできなかっただろう。


 魔法(アーツ)を使わずに戦う事ができるようにとまではいかなくとも死の恐怖に耐えて魔物と戦えるようにはならないと役に立てると言えない


 しかし今回の魔物の事だがどうするべきだろうか正直な話、魔物の量はかなりのものだった。

 俺にすればお世辞にも少ないと呼べるものではない

 しかしこれがこの世界では少ない方なのかもしれない。

 それはティアかサラさんに聞けばそれで済む話なのだがこの話をすれば魔物と遭遇したという事を話さないといけない。


 仕方ないか…魔物との戦いを話せば心配をかけるかもしれないが…

 もしこれが何かもっと恐ろしい事の予兆かもしれない

 報告、連絡、相談は大切だとどこかで聞いた覚えがある。


「ティア、今日魔物と遭遇したんだ」

「……っ!?それはどういうことです!」

「なんで魔物と…!訓練をしていただけなんじゃないんですか!?」


 どうやらサラさんはかなり惜しいところまでは分かってたようだ。

 しかし訓練の内容までは分からなかったようだ。

 ティアもいつもの無表情はもう残っていなかった。


「体は大丈夫なんですか!?毒をもつ魔物もいるのですよ!?」

「頬に付いてるこの怪我はそのときに貰った唯一の怪我だよ。それ以外にはやられたとこはないよ」

「何にどうやってやられたんですか!?」

「ゴブリンに投げられた斧だよ」

「はぁ…良かった…」


 取り敢えずは落ち着いてもらえたようだ。

 じゃあ本題に入らないと


「一応ここも気をつけた方がいいかもしれない」


 俺はこの世界の住人よりも魔物について知っているわけではない。

 だけど魔物にとって俺たちは餌だ。

 餌を前に襲わないなんてまぁないだろうしそれを抑えれるほどの理性も感じられなかった。


「魔物が攻めてくると?しかし魔物が人里に下りてくるなんてそうそうないですよ?それこそ年単位で」

「それはおかしくないですか?」

「何故ですか?」

「だって俺達の場所を知っているのに襲わないなんて、奴らの理性を考えればおかしいでしょ?」

「確かにそれはそうですが、数年襲われていないのも確かな事実です。」

「もしもの話ですがどのくらいの襲撃までならここは耐え切れるのですか?」

「ここの戦力は都市にくらべるとしっかりしている訳ではないですが最低でも下級が50はいないとここは落とせないかと、しかしそんなことはまぁ起こり得ないでしょうからこの戦力なのですが」


 そうなのだ下級の魔物が50も集まる事などまずあり得ないのだ

 魔物は普通、他の種族と群れる事はないのだ。

 そうハウンドとゴブリンが群れを形成するはずがない。

 もちろん例外は存在するのだ。ペットのように飼いならされていることが

 しかしそれでも飼いならされていることはレアケースだ。

 大量に飼いならされるはずがない。

 そして1つの種族で大量に群れている事はもっとレアケースだ。

 それこそ50近くも群れるなんて……

 だからこの戦力にはまったく落ち度はないはずなのだ。

 そうそのはずなんだ…それなのに胸騒ぎがするのだ…


 しかしこれ以上は俺がまだダグラスの課題に応えられていないのにする話じゃないだろう。

 胸騒ぎという曖昧な理由ではまだ信頼を得ていない人間の戯言など無視するのが当り前だろう

 ダグラスの課題を終えてからもう一度話そう…


「まぁそれならひとまず安心ですね」

「一応頭の片隅に入れておきましょう。そういえば話は変わりますが、ダグラスのあの課題は達成できそうですか?」

「あぁ…なんというか…まだ五分と五分と言ったところです…」

「きっと大丈夫です」

「そうですよ!きっと大丈夫ですよ!」

「買い被りですよ…まぁその期待に応えれるように一応、努力しますよ……」


 期待させてしまったようだ。

 はぁ、どうやって期待にお応えしようか…


 食事を終えた俺は一人書斎に向かった。






 本を読み漁るがこれと言って良いものがない

 例えば、ある人は忠誠の証として自分の持てる財産を全てを捧げたとある。

 これについては全く意味をなさない。なぜなら何も財産が無いからだ。

 他には、自分の親族を全て人質として親族の合意のもと主に差し出したというのもあれば

 自分を奴隷の身分にまで落としたとか主の領地にいる化け物を討伐しにむかったなどがあったが…


 無理だ!

 親族?そんなのいないよ

 ってか奴隷!?そんなのいるの!?いやいやさすがに怖いよ!相手だって絶対ひくから!

 最後のこれだけどなんだかんだで一番ありふれている信頼を勝ち取る手段なんだよな…

 まぁこれは化け物だけってことではなく自分の武勇を示すことに意味があるので強い奴に勝つということが認められさえすればいいのだが…


 強い奴というと…

 ダグラス…ティア…最初に遭った狼の魔物…

 正直、言おうどれも正面からやりあって勝てる気がしない…

 どれも接近されてやられる未来が見える…

 かといって搦め手とかはまぁ信頼を得ることは難しいだろう


 どうすれば勝てるか…

 こういう時はだれかに相談だ!


失楽園(パラダイスロスト)


 そこで現れたのは、現れたのは飛鳥だった。


(御呼びでしょうか御主人様)


 はっ?御主人様?誰が?

 もしかして俺?そんな訳ないはず…


(いえ、あなた様の事です。)


 はい、どうやら俺の事のようです。

 しかも伝わっていたようです。


(お願いだから“御主人様”とか畏まった呼び方はやめてくれ…)

(何故でしょうか?私にとって御主人様は御主人様なのですが。)


 なんなのだろうか皆なんでこんな忠誠心高いの?


(だけどなんというか…恥ずかしいし…そんな御主人様とか大層な人間でもないし…)

(では、ユウ様で)

(それもな……まぁ、御主人様よりかはマシかな…)


 その内様付けなんてしなくなるだろうし

 まぁいっか…


(では、ユウ様、私になにか御用でしょうか?)

(じゃあ飛鳥を見込んで頼みがある。どうやったら卑怯な手を使わずにティアやダグラスに勝てると思う?)


 言葉だけ見ればメイドとその主の会話に見えるかもしれない

 がしかしこれは傍目から見れば中学生が普通より少し大きな鳥に相談している…という全くもって情けないものになる。


(申し訳ないのですが決闘という方法を前提とするならば…不可能に限りなく近いかと…)

(うん…まぁそうなるよね…)


 改めて言われると少し傷付くが事実だ。

 実際彼らが本気で戦っている姿は見たことがないがダグラスと初めて会ったときの事を思い出す限りティアやダグラスはかなりの強者だと分かる。


(近接戦になるとまず勝ち目は無いでしょう…遠距離戦にしてもあれほどの強者が遠距離戦になったらあっさり一方的にやられてしまう…なんて事は無いでしょうし……相手の魔法(アーツ)についての情報が皆無……)

 

 一番心配なのが相手の魔法(アーツ)を知らないと言うことだ。

 特にティアの魔法(アーツ)はかなりのものという話だ。


(そうなんだよね…相手が魔法(アーツ)を使わなくてこっちが魔法(アーツ)をフルで使って勝てるか分からない相手なのにもし魔法(アーツ)がダグラスもとんでも性能だったら…)


 もしかしたら相手が魔法(アーツ)を使えない…なんて甘い考えはなかった。

 ダグラスはティアの軍の中でもかなりの高い地位にあるのだろう事はなんとなく初めての時から予想がつく

 上に立つ者が遠距離対策をしていない筈がない。


(考えたくもないですね…)


(そこで僭越ながら提案があります。複数を相手にするのです。)

(勝つ確率消え去っちゃたよ…)


 もはや戦いにすらならずイジメになる。

 もし本気でかかってこられたら死なない結末が見えない


(確かに正面からやりあえば勝ち目は薄いでしょうが…)


 薄い?そんなの死んでも無理だよ!


(屋敷を城に見立てて攻城戦をするのです。)

(えっティアの持つ戦力は50の下級で攻めても勝てないんだよ!?)

(下級50体でということは恐らくここの戦力は30人ほどしか人手はいないと思います)

(いやいや30人もいるんだって!1対30はおかしいって!)

(いえ、条件さえそろえばユウ様の魔法(アーツ)は数の差を無視できるほどのものです。これは一切の誇張や贔屓のない事実なのです。)

(そんなに…?)


 やはりそんな実感は全くない


(あなたの想像にいる者たちは良くも悪くもあなたの想像通り(・・・・)にしかならないのです。そしてあなたが知っている物語たちを夢物語から実話にすることができるのです。)

(……できると思うか?)

(あなたなら…)


 まったく何故ここまで信じられているのか…

 まぁ期待にはしっかりと応えないとね


「じゃあ頑張ってみますか…」

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