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第9話

「ちっ」

「いいかげんにしなさい。それで何度目よ」

 舌打ちするコウをリーゼが嗜める。

 注意され一応やめるが、不機嫌な態度は直らない。

 この原因は先ほど立ち寄った仮拠点にある。

 最初はコウも興味津々だったが、仮拠点にいた者がこちらに気づき空気が変わった。

 こちらを確認し、コソコソ喋りだしたのだ。

 その内容がリーゼに対して「悪の魔女」「死神」「嘘つき女」、アズールには「囚人」「罪人」「殺人鬼」などである。

 これで心穏やかでいられるはずがない。

 そして極めつけは、銀髪の狼の獣人と空色の髪をしたエルフの言動だ。

 この二人は最前線の常連組みで、リーゼたちとも一応顔見知りだ。

 だが、その言動は失礼千万な物言いだった。

 獣人の方は周りの陰口と同様の内容を目の前で言い放ち、あげく「ここを利用するな」と命じたのだ。

 エルフの方は、そんな獣人の言動を嗜めていたが、言葉の端々に嫌悪や拒絶の雰囲気を醸し出していた。

 そんな二人をコウは我慢ならず、叩っ斬ろうとしたが、慌てた三人がコウを連れて素早く退避したので、事なきを得た。

 仮拠点を離れてコウも当人たちが何も言っていないのに、自分が行動するのが筋違いだということは分かっていたので、一応矛は収めた。

 それでも怒りが消えるわけではないが。

「切り替えろ。コウ、ここは現在ダンジョンの最前線。未知の領域だ。

 そんな調子じゃ、自分だけでなく俺たちも巻き込んで全滅することもありうる。

 冷静さを失った状態じゃかえって足手まといだ。

 何なら引き返すぞ」

 珍しく怒気の篭った声でバルが注意する。

「すまん」

 今回は全面的に自分が悪いことが分かっているので、素直に謝る。


「・・・」

 ダンジョン探索を再開して、アズールが足を止める。

 こういった場合、罠を発見した。もしくはモンスターが接近しているかだ。

 全員、五感を研ぎ澄ますが生き物の気配は感じることができない。

「・・・」

 アズールが手招きして、壁に手を当てる。

 現在の階層の外観は遺跡風で、壁は石材を積んだように格子模様である。

 特に変わったところも見当たらないが、コウもアズール同様に壁に手を当てると違和感を見つけることができた。

「風?」

 僅かな隙間から空気の流れを感じ取れた。

 つまり、この壁の向こうに空間があるということだ。

「隠し部屋?」

 確認のためにアズールに問うと首を縦に振る。

「それぐらい。喋れよ」

「・・・」

 無視された。

「どうする?」

 前が頼りにならないので後ろの二人に聞いた。

「う~ん」

「そうね・・・」

 だが、明確な答えは返ってこなかった。

 その理由はコウも何となく察しがつく。

 隠し部屋は財宝があるか、意地の悪い罠が仕掛けられている。あるいはその両方だ。

 正直どちらでもありがたくない。

 財宝は余程の物でなければ、嵩張って邪魔にしかならない。

 罠は言わずもがなだ。

 なら無視すればいいかと言われればそうではない。

 未確認の領域を発見して、そのまま放置すると何かの拍子に問題が起こると近くの通路が使用できない状態になる可能性がある。

 すると街や各階層に物資が行き渡らなくなり、深刻な物資不足に陥り最悪死者がでる可能性がある。

 本来なら救援を求めて、改めて調査するのが一般的だが仮拠点の反応を見る限り徒労に終わるのは予想にできる。

「行くしかないか」

 すごく気が進まないが、放置するのは躊躇われる。

 他の面子も同様の考えで渋々了承した。

「・・・」

 パカ。

 アズールが壁を操作すると一部が扉のように開け放たれる。

 全員、扉から何か出てこないか警戒するが、数十秒待っても変化がない。

「・・・」

 アズールが先行して部屋に入る。

 後に三人が続く。

「なんだ、こりゃ?」

 バルが奇妙なものを見たとでも言いたげに声を上げる。

 他の三人にしても心情は、ほとんど同じだろう。

 部屋の中には床に巨大な魔法陣と、その中央にガラスの棺ようなものが置かれているだけ。

「あれ、なんか嫌な予感しかしないんだけど」

 棺を指差し、感じたことを言う。

 全員、同感だとでも言いたげに肯定する。

「でも、調べないわけにはいかないわよね」

 リーゼが嫌そうに言う。

 そして、この場合調べるのは盗賊であるアズールか、魔法関係ということでリーゼのどちらかになるが、詳しく知るにはやはりリーゼだろう。

 本人もそれが分かっているのか文句は言わず魔法陣の周りを調べ始める。

 流石にすぐさま魔法陣の中に入ったりはしない。

 残った三人は部屋の内外両方の警戒をする。


 調査を始めて小一時間経ってリーゼが三人を呼ぶ。

 分かったことは二つだけ。

 一つ目は、とても古く複雑な魔法陣なので、効果は発動させなければ分からないし、正しく起動する保障はないということ。

 二つ目は、この魔法陣はダンジョンが産み出したものではなく、人の手で産み出されたものである。

 コウは疑問を覚え、リーゼに質問する。

「古いものなんでしょ?人が作ったって、随分昔にこの階層に到達した者がいたってこと?」

「そうよ」

 リーゼは肯定する。

 それでも納得できない。

 ここは現在の最終階層である。到達したのは、それほど昔ではない。

 肯定したリーゼも半信半疑のようだ。

 これが事実だとしたら目の前の魔法陣を作った者たちは、記録が残らないほど昔に到達したか、少数で秘密裏に潜ってきたかである。

 可能性があるのは、まだ前者である。

 後者はありえない言ってもいい。自分たちも少数で潜っているが、拠点を利用して休息、物資の補給を行いながら潜ってきたのである。

 ここまで無補給でくるのは至難の業である。

「まあいいや」

 コウは思考を切り上げる。

 情報が少なく、また探索中に考えるには時間が足りなすぎる。

「わからないなら、仕方ない。それよりあの棺はどうする?」

 コウは指差し、他の面子に問う。

 現在、重要なのはそれだ。

「「「・・・」」」

 三者とも即答できないようだ。

 それはそうだろう。

 あれはどう見ても罠か、それに類するものだろう。

 それでも何らかの行動は起こすべきだろう。

「いくか」

 他の者も同意見のようだ。

 全員いつでも戦闘に移行できるように身構えながら棺に近づく。

 そして先頭のアズールが触れる。

 ピカァァァァァァ。

 触れると同時に発光し、空気が振動する。

 そして、この時皆が同じことを思った。


「やっぱりな!」

 嫌な予感しかしない中、戦闘体勢に移行する。



名前:コウ

ランク:Ⅵ

基本アビリティ:筋力Ⅵ(5201) 耐久Ⅴ(4106) 器用Ⅴ(4072) 俊敏Ⅴ(4123) 魔力Ⅳ(3763)

修得アビリティ:吸収Ⅵ 物質化Ⅲ 再生Ⅴ 逆転の一撃Ⅲ 転移Ⅲ 生産Ⅱ

称号:転生者 不死者 神の尖兵 剣士 軽業師 竜殺し 中級魔術師

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