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第8話

「氷槍の雨」

「・・・」

 コウが剣で薙ぎ払いながら、魔法を行使する。

 アズールは左手で隠し持っていた針を投擲し、右手の拘束具から伸びた鎖を振り回す。

「はっ」

「・・・」

 飛んできた針をコウは剣で打ち払う。

 空から舞い落ちてきた氷の槍をアズールを鎖で薙ぎ払う。

 コウは長剣を片手に持ち替え予備の武器の短剣を抜き、アズールは右手に持っていたナイフを構える。

 キィン。

 互いに迎撃した二人は刃を交差する。

 短剣はナイフに食い込む。

「・・・」

 アズールはナイフを手放し、後方に下がり追撃されないように針を投げつける。

 途中で鍔迫り合いを終わらせられたコウは、僅かに重心が傾いたので追撃には移らず、体を捻り針を回避する。

 再び仕切りなおし。

 体勢を整える。

 コウは右手に長剣を左手に短剣を持ち、二刀流のスタイルに移行する。初めての試みだが、いけるという感じがするので、このままでいくことにする。

 対するアズールは自然体の構えである。

 お互いに様子を見てタイミングを計る。

 そして両者が動く。

「そこまで」

 二人に割ってはいる者がいた。

 リーゼである。

「これは実力を測るための模擬戦よ。これ以上は駄目よ」

 もっともらしく説得する。

 両者は暫く警戒するが、邪魔が入ったことで拍子抜けしたので、矛を収めることにする。

「うんうん。それじゃ互いのこともわかったし、本格的な探索を始めよう」

 そういえば、まだダンジョン探索は始まってもいなかった。

 コウはどっと疲れてくる。ちらりと他の二人を見るとアズールは仮面をつけて分からないが、うんざりした気配が漂っている。

「ほら、こっちこっち」

 こちらの気を知っているだろうが、関係ないとばかりにリーゼは手招きする。

 それでも怒りは沸いてこないのは、人徳かそれとも『戦争』に対しての真剣な思いを知っているからか、とりあえず着いていくのに否はない。


「着いたな」

 現在51階層、50階層拠点を通過して現在攻略中の階層に四人は足を踏み入れた。

 最前線は56~57階層辺りを探索中らしいが、50階層以前の階層と違って探索されていない領域が多く罠もほとんど撤去されていない。

「ここからは慎重に、先頭をアズール。罠と敵の察知に全力を注いで、次コウ。アズールの背後からより広い範囲を警戒して、敵が出たら前に出て二人で前衛。三番目は私。二人の援護をするわ。最後にバル。後方を警戒して不意打ちを防いで」

 流石に、ここまでくるとリーゼの声にふざけた様子はなく、寧ろ緊張した声音で指示を出す。

 三人とも頷き、足音や気配を消して先へ進む。


「おいでなすった」

 バルが喚起して後方に意識を向ける。

 数は七体。

 出現したのは大きさは人間と同じくらいで、全身が黒く輪郭が揺らめいている。

 シャドーウォーリア。

 影が実体化した魔物といわれ、物理攻撃が効きにくい厄介なモンスターだ。

「迸る雷、束縛する鎖、聖光の加護」

 素早く判断してリーゼが魔法を連発する。

 雷がシャドーウォーリアを二体穿ち消滅させる。

 残りを鎖で拘束する。

 最後にバルの剣に付与魔法を掛ける。

 付与と同時に斬りかかる。

 本来、物理攻撃が効きづらいが光属性となった剣なのでダメージを与えやすくなった。

「あちらは、大丈夫そうだな」

 コウはちらりと見るが、すぐにでもかたがつきそうなので、意識を前方に戻す。

 現在アズールが罠を解除しているので、この場を動けない。

 ここまでのモンスターの遭遇は全て罠の解除中によるものだ。

 そもそも、この面子でモンスターに気取られるような隠密行動や機動性をしていない。

 そして遭遇した場合は片側だけでなく。

「GUOOOOOO」

 当然、もう片側にも出現する。

 現れたのは棍棒を持った巨大な二足歩行の豚のモンスターが一体。

 オーク、という名が浮かんだが、ここまで深い階層だとオークは出ない。

 なにより岩のような皮膚と大きさが二周り違う。

 ギガントオーク。

 オークの上位種で完全に力で押すタイプである。

 だが、その力が驚異的だ。まともに喰らえば木端微塵になるだろう。

「まあ、当たればな」

ギガントオークが棍棒を振り上げる。上位のモンスターだけあり、パワータイプでもそれなりの速度はある。

 迫る棍棒は巨大で大木とほとんど変わらないサイズだ。

 コウなら回避も可能だ。

 だが、そうすると罠を解除しているアズールにあたる。

 なので回避ではなく防御を選択する。

「物質化、盾。空間固定」

 盾を創りだし、魔法で固定する。

 棍棒と盾が衝突する。

 甲高い音がして火花が散るが、盾はびくともしない。

 その間にコウが回りこむ。

「物質化、ハルバート。硬化の魔装」

 つぎにハルバートを具現化し、硬化する。

 所持している武具では、あの巨体の表皮は削れても肉を断つのは難しい。

 なので巨大な得物を用意する。

 ブン。

 そして一閃する。

「GYU?GYOOOOO」

 ギガントオークの上半身と下半身が分かたれる。

 断末魔の悲鳴をあげ、事切れる。

 盾とハルバートはその場に打ち捨てる。

 魔力で構成した物は、徐々に魔力を消耗して自壊する。

「・・・」

 アズールがこちらに目を向ける。

 どうやら罠の解除が終わったようだ。

 後方にも目を向けると、そちらも戦闘は終了したようだ。

 お互い無事か確認しないあたり、個々の実力は認め合っているのだろう。

 倒したモンスターから素材を剥ぎ取り、先へと進む。

 再び罠があり、戦闘に入る。その繰り返しだ。


「ついたわよ」

 何度目かの戦闘の後、多くの人がいる部屋へと出た。

 それぞれ数人から数十人で固まって、思い思いに過ごしているようだ。

 ある者はテントを張って休んだり、ある者は御座を引いてその上に素材や道具を置いて商売したり、またある者は先のダンジョン探索の打ち合わせを行ったりしている。

「ここが最前線、56階層の仮拠点よ」

 リーゼは懐かしそうに、そして悲しそうにそう言った。




名前:コウ

ランク:Ⅵ

基本アビリティ:筋力Ⅵ(5148)⇒Ⅵ(5201) 耐久Ⅴ(4101)⇒Ⅴ(4106) 器用Ⅴ(4021)⇒Ⅴ(4072) 俊敏Ⅴ(4097)⇒Ⅴ(4123) 魔力Ⅳ(3609)⇒Ⅳ(3763)

修得アビリティ:吸収Ⅵ 物質化Ⅲ 再生Ⅴ 逆転の一撃Ⅲ 転移Ⅲ 生産Ⅱ

称号:転生者 不死者 神の尖兵 剣士 軽業師 竜殺し 中級魔術師

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