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第7話

 先日行われていた模擬戦の続きを行った二人にリーゼは呆れた目で見てくる。

「まったく」

 そう言いながら、疲れ果てた剣士二人を先導してダンジョンを進む。

「どこに行くんだ?」

 進んでいるルートが深い階層に向かうものではないことにコウが疑問を覚える。

「牢獄よ」

 簡潔にリーゼが答える。

「ダンジョン内部には囚人を捕らえておく所があるんだ。

 拠点だと牢屋に、わざわざ建物一つ分の資材を使わなくてはいけない。

 そんなの勿体無いという話がでてな。そこでダンジョンの壁を刳り貫いて鉄格子でも付ければいいという意見が出てそれが採用されたってわけだ。

 で、俺たちはそこの囚人の一人に用があるわけだ」

 コウが何かを言いかけたので、その内容を推察してバルが先回りして答える。

「その囚人に何のよう?」

「仲間になってもらうのよ」

 リーゼの答えに不安そうな顔をするコウ。それを察したのか。

「囚人と言っても犯した罪は復讐したことで、無関係な人物には危害を加えないわ。

 それに彼は、これからの私たちに必要よ」

 簡単に大丈夫な理由を挙げる。

「何で必要?それと囚人って勝手に釈放できるの?」

 他にも浮かんだ疑問を口にする。

「必要なのは彼が盗賊・・・ダンジョン内における罠の発見や解除に適した人材だからよ。

 今のメンバーだと深い階層だと罠に掛かって全滅なんて事態になりかねない。

 それに盗賊は常に人数不足、他にあてがない。

 釈放の件なら問題ない。一部の囚人は『システム』によって永久に外に出られない取り決めがあるけれども、それ以外は保釈金を支払うかペナルティを受けることで釈放できるわ。

 そして、もう交渉済み」

 答えを提示して先に進んでいく。

 コウも問題ないなら、それでいいと後についていく。

 バルにいたっては初めから知っていたのか特に何も言わず歩いている。


「待たせたわね」

 暫く進んで牢屋が立ち並ぶ部屋に出た。

 そこには看守と奇妙な格好の男がいた。

 全身を草臥れたローブで、すっぽりと隠し盗賊というよりは魔術師のような格好で、しかも手足には壊れかけて手枷足枷がついている。一瞬、装飾品の類かとも思ったが千切れた鎖がついているので違うだろう。そして極めつけは仮面をつけていることだ。目と口以外は完全に覆われている真っ白な仮面である。

 例え囚人という前情報がなくても怪しさで胡乱な目を向けられるだろう。

「・・・」

 男はリーゼの挨拶に反応して少し首を下げる。

 だが、言葉は発しない。喋れないのか、警戒しているのか、ただ無口なだけか分からない。

 そんな男の行動は分かっているとでも言いたげに、リーゼは看守らしき者たちと話をする。

「・・・」

 男はこちらをじっと見ているがコウとバルはそれを無視する。

「おまたせ」

 二、三看守と話をして、リーゼはこちらに戻ってくる。

「じゃあ、紹介するわね。彼の名前はアズール。見て分からないけで盗賊で腕は一流よ。

 ご本人は無口で、ほとんど喋らないわ。声を聞くだけでもかなりの珍事よ。

 まあ仲良くとはいかないかもしれないけど同じパーティーメンバーとして協力していきましょう」

 代わりにリーゼがアズールの自己紹介を済ませ、アズールが会釈する。

 コウも簡単に自己紹介を済ます。

 バルはどうやら顔見知りのようなので、久しぶりと挨拶をするだけである。

「じゃ、コウ、アズール模擬戦しましょう」

 いきなり、リーゼが可笑しな提案をした。


 四人は牢獄から移動し、それなりに広い部屋に来た。

「ここなら、おもいっきり戦っても心配ないわね」

 そんなことを言うリーゼに、三人、特にコウとバルは胡乱な目を向ける。

 先ほど模擬戦をして呆れた様子をしていたのは誰だったのかと言いたげに。

「い、言っておくけど、面白そうとかじゃないわよ。

 コウは私やバルとは数日一緒にいて、なんとなく実力が分かるでしょう?

 でもアズールとは初対面、アズールもコウの実力が分からないでしょう?

 なら、模擬戦でお互いの実力を測ろうっていうのが目的よ」

 視線に気づいたのか一応納得できる理由を述べた。

 それに、ここまで来た以上、やるつもりである。


「では、いくぞ」

「・・・」

 お互い位置につき、戦闘体勢をとる。

 コウは長剣を鞘から抜き構える。

 対するアズールは自然体で、ほとんど身動きしない。

「・・・」

 アズールがまったく動かないのを察したのか、コウが摺足の要領で少しずつ距離を縮める。

「ハァ!」

 剣の届く間合いになったと同時にコウは剣を振るう。

 狙いは左肩、模擬戦で相手に致命傷を与えるわけにはいかない。

 なので頭部は論外。胴体も臓器を傷つけないために極力狙わない。

 よって必然的に狙うのは手足になる。体格がさほど違わない二人なので、足よりも腕に狙いを定めた。

 そして手先よりも動きが少ない肩を狙う。

 多少の怪我は魔法で治すことが可能なので、断ち切る勢いで剣を振るう。

 アズールは、ほとんど反応すら見せずに剣が当たる。

 ガキィィィィィン。

 肩に当たったにしては、妙に甲高い音がなりコウが打ち込んだ反動で、少し後方に飛ぶ。

 おかしいと思い、コウがアズールを見ると目を見開いて驚愕の表情をする。

 一瞬前まで、ただ立っていただけなのに、今は左手を上げて肩への攻撃を防いでいる。手首には金属製の拘束具がついているので、先ほどの音は、それで剣を防いだ音だろう。

 驚愕に一瞬動きを止めたコウに隙ができ、それを見つけたアズールは追撃に切り替える。

 ローブの裾にでも隠していたのか、右手にナイフを持っており、表面は明らかに毒物ですとでも言うように濃い紫紺色である。

「やば」

 後方に飛んでいたコウは足が地に着いていないので、回避は難しい。

 剣で迎撃せんと振るうが、かわされる。

 目の前にナイフが迫ってくる。

「くっ」

 苦悶の表情を浮かべ、体を捻る。

 剣を振った反動と重心の移動で空中を機動する。

 軽業師の称号が動きを補助し、ナイフを何とか回避する。

 アズールを突き放そうとコウは空中で回転しながら、蹴りを顔の右側面に叩き込む。

 しかし、これも左手で受け止める。

 だが反動で両者、吹き飛び距離がひらく。

 お互いすぐに体勢を整えて突っ込む。


 この時、お互いに相手に対して。

「強い」

 その一言で表していた。

 そして、コウは始めての、アズールは久方ぶりの緊張と興奮を味わっていた。




名前:コウ

ランク:Ⅵ

基本アビリティ:筋力Ⅵ(5108)⇒Ⅵ(5148) 耐久Ⅴ(4055)⇒Ⅴ(4101) 器用Ⅳ(3911)⇒Ⅴ(4021) 俊敏Ⅴ(4003)⇒Ⅴ(4097) 魔力Ⅳ(3609)

修得アビリティ:吸収Ⅵ 物質化Ⅲ 再生Ⅴ 逆転の一撃Ⅲ 転移Ⅲ 生産Ⅱ

称号:転生者 不死者 神の尖兵 剣士 軽業師 竜殺し 中級魔術師

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