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第6話

「バル。これじゃ鍛錬にならんぞ」

「そう言うな」

 コウとバルは雑談しながらモンスターの首を狩る。

依頼クエストなんだから、しっかりやる」

「わかっているよ」

 そう言って、また一体始末する。

 相対しているのはレッドゴブリン。

 初心者が狩るゴブリン。子供くらいの背丈で、醜い容姿をした子鬼のようなモンスター。その上位種だ。

 違うのは背丈が小柄な女性くらいまであり、皮膚がゴブリンは薄汚れた茶色だが、こちらは赤い。

 手には錆びた剣を持っているが、振り回すだけで然したる脅威ではない。

 目的は、こいつらの皮だ。

 なるべく綺麗な状態で10体分持ってくるのが今回の依頼だ。


 依頼クエストとは基本、この世界の何処かの人が、ダンジョン内の物資回収や問題解決などのために『システム』に報酬と引き換えに人員派遣を頼んで、それが認められたら『システム』の利用者から志願者を募り、仕事をしてもらうというものだ。


 そのため二人は受けた依頼を達成するために、遥かに格下のモンスターを倒しているわけだ。

 皮を傷つけないために、二本の黒剣が一閃で首を落としているさまは、戦いというより作業に近い。

「ほんとに何で、こんな依頼引き受けたのか」

 コウが、そうぼやく。

 横で見ているバルも仕方がないと思っている。

 二人が一緒に活動して数日、行った依頼といえば雑魚モンスターの討伐もしくは素材集め、拠点での力仕事や鉱石、薬草の採取が主だ。

 『戦争』を考えているコウにしてみれば、無駄といっていい。

 それでも、とりあえず依頼をこなしているのは、バルがいるためだ。

 バルは模擬戦の後、すぐに守衛の仕事を辞めたのだ。

 コウは止めたが宝貨数枚、あるいは十数枚する剣を貰ったので本格的に指導するためには定職についているわけにはいけないということだ。

 そのバルが主導で依頼を引き受けているのだから、コウとしては負い目があるので断ることができない。

 それに依頼の目的も理解できる。

 目的の一つ目は当然、金だ。これはこの世界で依頼を受けている全ての者に当てはまる。

 生活するにしても、ダンジョン探索するにしても、『戦争』に備えるにしても金は必要だ。

 だが、これはさほど重要ではない。

 今現在、それほどの大金は必要としていないし、いざとなれば手元にあるノワールドラゴンの素材を売りに出せばいいだけである。

 その場合、異様に目立ってしまうリスクはあるが。

 それに現在、稼ぎ出しただけでも金貨数枚から金板に届くくらいの額はある。

 けれど、もう一つ重要な目的がある。

 それは信頼度を稼ぐことだ。

 『システム』が公開している依頼であっても、その全てが受けられる訳ではない。

 過去にいくつもの依頼を受け、『システム』に可能と思われた者のみ受けられる依頼が存在する。

 そういった依頼を受けるためにもコウは簡単な依頼からこなしていく必要があるのだ。

 だが、コウは。

「必要ないだろ」

 と言った。

 参加したいのは『戦争』であって依頼ではない。

 だが、バルはその意見を真っ向から否定した。

 『戦争』には参加資格があり、毎回その基準が異なる。

 資格をまったく問わないものもあったが、そんなのは少数で専用の選抜イベントがあったり、特定の依頼を受けたりする。

 それでも、世界中の人が参加すると時間が足りないので、『システム』がイベントや依頼の参加者を選別するのだ。

 そのとき参考にされるのが過去に受けた依頼と、ダンジョン攻略における実績である。

 それを聞いてコウも不承不承であるが了承した。


「よし。確かに」

 拠点に戻って、『システム』を利用するパソコンのような端末を操作する。

 そして端末の下の方についている取出し口から、今回の依頼の報酬である銀板と銀貨を取り出す。

 この端末は本来、街にしか存在しないが、かなり昔の『戦争』参加者の褒章で拠点にも配備するよう頼んだらしい。当時は頼んだ参加者に使用料を支払わなければならなかったが、その者が亡くなって自由に使えるようになったそうだ。

「・・・」

 コウは無言で近くの壁に寄りかかっている。

「そう不機嫌そうな顔をするな」

 バルはコウの肩を叩きながら励ます。

 それでもコウの機嫌はよくならない。

「・・・」

「ははは。ガキだな。だが、もう退屈させないぞ!いよいよダンジョン探索だ!」

「!」

 また、つまらない依頼だと思っていたコウは目に見えて表情を変える。

「やっぱガキだな。出発は明日だ。今日は準備だけして早めに宿帰って寝ろよ。集合は拠点の出入り口だ」

 そう言って解散する。

「いよいよか。本格的に鍛錬できそうだ」

 知らず知らずコウの口元がにやけてしまう。


「おかえり」

「どうも」

 宿泊している宿の女将ダナに挨拶して、部屋に向かう。

 あれから探索の準備に色々な店に寄ったが、それほど時間は掛からなかった。

 元々、依頼を受けるために拠点近くの階層を探索したり、森林や山岳へ採取に行ったりした。

 必要な各種道具は取り揃えている。買い足すのは消耗品の携帯食料と薬品、装備の手入れ用品などが主である。

 なので、今日はバルが言ったように早めに休息を取ることにした。


「よお!」

「いくわよ」

「・・・」

 次の日、集合場所に来てみると予想外の人物がいた。

 リーゼである。

 何故?という疑問が浮かび上がるが、その理由はすぐに思い浮かぶ。

 横にいるバルだ。

 昨日は何も言っていなかったのに、当たり前のような顔をして挨拶している。

 とりあえずバルは後で殴っておこうと心に決めた。

 まずはリーゼに挨拶をしなくては。


「リーゼさん、お久しぶりです」



名前:コウ

ランク:Ⅵ

基本アビリティ:筋力Ⅵ(5102)⇒Ⅵ(5108) 耐久Ⅴ(4052)⇒Ⅴ(4055) 器用Ⅳ(3906)⇒Ⅳ(3911) 俊敏Ⅴ(4001)⇒Ⅴ(4003) 魔力Ⅳ(3605)⇒Ⅳ(3609)

修得アビリティ:吸収Ⅵ 物質化Ⅲ 再生Ⅴ 逆転の一撃Ⅲ 転移Ⅲ 生産Ⅱ

称号:転生者 不死者 神の尖兵 剣士 軽業師 竜殺し 中級魔術師

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