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第5話

「はっ!」

「やあ!」

 空中で剣と剣が交差する。

 甲高い音が鳴り、火花が飛び散る。

「やるな!」

「どうも」

 戦っているのかコウと金属鎧を纏った禿頭の戦士、体がコウより二周りは大きく厳つい顔の三十代の男性。

 この男がリーゼに紹介された剣士で、名をバルという。

 彼は第一線を退き、現在は30階層拠点の守衛をしている。

 拠点というのは、ダンジョン内部に存在する街みたいなものである。

 この世界の街は地表に全長数百キロに及ぶ巨大なものが1つあるだけで、端は侵入不可の壁に阻まれているので街と言えばそれしかない。

 だが、ダンジョンを深く潜るには途中で休息や物資の補充が必要である。

 そこで人々は考えた。なら途中で街のようなものを作ればいいのではないかと。

 まず目をつけたのはダンジョンの構造だ。ダンジョンは1~9階層、11~19階層と最後の桁に1~9とつく階層は洞窟や遺跡のような外観をしている通路で、幅も高さもかなりあるし、一部の特殊な地帯を除いて壁が発光しているが、あまり街を作るのには適していない。

 だが、10・20階層といった所は遮るものはない空間で、全長数十あるいは数百キロメートルあり、草原、森林、荒野、山岳、河川、砂漠、海洋、大空といった絶景が広がり、資源採取の拠点とダンジョン探索の補給基地の役割を兼ねて階層の出入り口付近に拠点を建設したのだ。

 すると拠点を維持するために色々な役割の人が住み着くようになり、その役割の一つである守衛にバルはなったそうだ。

 因みに拠点は50階層までの合計5つあるそうだ。


 それは置いといて何故二人が戦っているかというと、コウがリーゼからの紹介だといい。バルが訓練の話を了承して、最初のうちは素振りをして悪いところを指摘するといった、ごく普通の指導をしていたのだが。

 暫くすると。


---称号:剣士見習い が 称号:剣士 へと変化しました---


 というアナウンスが聞こえ。

 コウも驚いたが、バルはそれ以上に驚き、称号が剣士になったのなら模擬戦でもしようという話になって、今に至る。

「はっ」

「や!」

 二人の戦況は『アビリティ』ではコウに軍配が上がるが、技術、経験ではバルに分がある。

 本来なら両者そう簡単に決着はつかないだろう。

 ピキィ。

 だが、すぐに均衡が崩れた。

 バルの剣に亀裂が奔った。

 原因は武器の差だ。

 バルの剣は一級の物だが、材料にはこれといって特別な物を使っていない。

 しかしコウの剣は竜の骨と鱗をふんだんに使っており、まるで生前の姿のように漆黒の輝きを放つ剣は刃毀れ一つしていない。

 当然、バルは剣に負荷を掛けないように戦う。

 だが、そうすれば今までより攻撃の手数が減り、コウに反撃の機会を多く与えてしまう。

 ガッ。ガッ。カアアァァン。

 二振りの剣はぶつかり合う度に、漆黒の長剣が銀の長剣を削り取っていく。

 それでも明確に剣の差があるのに、いきなり折れてしまわないのは、バルの技量の高さを物語っている。

 だが、限界はくる。

 キイィィィィィィン。

 甲高い音と共に剣が折れる。

 そこで両者動きを止める。

 そして、お互い倒れるように寝転がる。

 剣を折られないように集中していたバルはもちろんのこと、コウもそのバルの技量に追随するのは肉体的にはともかく精神的にはかなり疲れるのだ。

 因みに二人が今いるのは、拠点から少し離れた草原である。

 ここで寝そべっていても誰に迷惑を掛けるわけではない。

 近くに動物やモンスターの気配もないので襲われる心配もない。

「寝るか」

「そうだな」

 バルの提案にコウも同意する。

 二人は瞼を閉じ意識を沈める。


「すまなかった」

 目を覚ましたコウがバルに頭を下げる。

 バルは心底分からないという顔で。

「何がだ?」

 と聞いた。

「いや、剣を折ってしまって」

 バルは鼻を鳴らしながら。

「そりゃ。お前のせいじゃない。

 剣を折りたくなければ最初から模擬戦なんてしなければよかったんだ。

 だが、俺は自分で決めて戦った。

 そのことまで、お前のせいにするつもりはない。

 剣を折ったのは俺の判断であり、俺の技量不足だ。

 それは誰にも文句は言わせない。

 分かったな」

 有無を言わせない迫力にコウは首を縦に振ってしまう。

「だが、剣は新調せねばならないな」

「あ。なら」

 コウは自分の荷物を漁りだした。

「これ」

「これって」

 荷物から取り出してバルに渡したのは黒のロングソード。

 少々デザインが違うが、紛れもなくコウが使っていたものと同じ剣だ。

 予備として製作した剣であるが、先ほどの戦闘で頑丈であることは確認できたので、当面は荷物の肥やしになるだろう。

 コウはこれをバルに渡そうというのだ。

「・・・」

 バルは受け取りもせず拒否もせず、じっとロングソードを見ている。

 バルも剣士だ。いい剣は欲しいが、折れたのは自分のせいだと言った手前、受け取るのはお門違いだと考えている。

 そんなバルの考えをコウは読んだのか。

「これは俺が渡したいから渡すんです。謝罪や賠償ではありません。それでも気になるなら俺の指導に力を入れてください。これはその報酬ということで」

 そう言って剣を押し付ける。

「ずいぶん高い報酬になったな」

 とりあえず、それで納得するといったポーズで剣を受け取るバル。

「よし、じゃあ本格的に始めるぞ。ついて来い」

 二人は立ち上がり歩き始める。

 先ほどの気まずさはなく二人は晴れ晴れとした気分で移動する。



「よろしくお願いします。師匠」

「・・・、バルでいい。師匠はやめろ弟子」

「なら、俺もコウでお願いします」

 軽口を叩き合って二人は草原を進んでいく。



名前:コウ

ランク:Ⅵ

基本アビリティ:筋力Ⅵ(5025)⇒Ⅵ(5102) 耐久Ⅴ(4011)⇒Ⅴ(4052) 器用Ⅳ(3785)⇒Ⅳ(3906) 俊敏Ⅳ(3887)⇒Ⅴ(4001) 魔力Ⅳ(3605)

修得アビリティ:吸収Ⅵ 物質化Ⅲ 再生Ⅴ 逆転の一撃Ⅲ 転移Ⅲ 生産Ⅱ

称号:転生者 不死者 神の尖兵 剣士見習い⇒剣士new 軽業師 竜殺し 中級魔術師

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