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第2話

「う~ん」

 自称神様に転移されて、コウは唸っていた。

 転移先は当然、世界で一つしかない街になると思っていたが、辺り一面岩だらけ、どうやら洞窟のようだ。

 まあ、それはいい。どこに出るか聞いていなかったし、ダンジョンに出ることもあるだろう。

 しかし、目の前の存在については許容できない。

 漆黒の鱗、鰐のような頭部、二本の立派な角、蝙蝠のような羽、高さは5メートルを超え、体長は数十メートルはあるだろう。

 明らかに竜・・・ドラゴンである。

 異世界について早々ボスクラスとエンカウントは勘弁してもらいたい。

「いや、実はこの世界では実はドラゴンは雑魚という可能性が」

「GYAAAAAAAA」

 こちらの言葉に反応したのか、いきなり襲い掛かってくる。

 こちらを噛み砕こうと迫りくる牙。

 対応できない速度で攻撃がくる。

「やば!」

 直感だが直撃はまずいと本能が訴える。

「ちっ」

 考える前に動いていた。

 両の手を前に出し、魔力を練り上げる。

 一度も行ったことがないけれど、体が勝手に行ってくれる。

 どういった行動が適切か理解できる。

 練り上げた魔力を外に放出し、物質化する。

 形状は盾、自身の全身を覆うほどの巨大なものを創り上げる。

 そして、牙と盾が衝突する。


 ガキィィィィン。ビキッ。


 衝撃ですぐさま盾に罅が入り、一瞬で食い破られる。

「転移」

 元々、その一瞬を稼ぐつもりでいたコウは、慌てず騒がず転移を実行する。

 移動先はドラゴンの頭上。

 戦いながら『アビリティ』を理解してきたコウには、逃走は不可能だと判断する。

 転移では、長距離の移動は時間が掛かりすぎるので駄目。

 周りを見たが逃走できそうな通路は存在しない巨大の部屋のような所だ。この時、頭の中に目の前のドラゴンを倒さなければ出ることができないと、なんとなく頭に思い浮かんだ。

 これは、この世界の仕様かとコウは考え、神々は世界をゲームとしか捉えてないようだ。

「物質化、大剣」

 先ほどの要領で巨大な剣を具現化する。

 そのまま持ち上げる。

 腕にかなりの不可がくると思ったコウだが、小枝でも持っているような感覚しかこない。

 これが『アビリティ』で強化された筋力によるものだとわかった。

「はっ!」

 ドラゴンの頭部に落下しながら、剣を振り下ろす。

 命中し剣に罅が入る。

 だが、気にせずに押し込む様に剣を振るう。

 元々が急造品なので惜しくはない。

 剣が耐えられずに砕ける。コウは中に投げ出されるが、器用と俊敏の効果か宙で体を捻り、体勢を整える。


---称号:剣士見習い を手に入れました---

---称号:軽業師 を手に入れました---


 コウの頭の中でアナウンスが響く。

 そして一瞬動きを止めてしまう。


 ゴウッ。

「つっ」

 ドラゴンが尾を振り回し、コウを吹き飛ばす。

 苦痛に顔を歪めるが、すぐさま体勢を立て直す。

 追撃にファイアブレスが迫るが、転移して回避する。

「?」

 コウが自分の体に違和感を感じる。

 尾の一撃は強烈で、コウの耐久をもってしても完全に耐え切ることはできなかった。骨折とはいかなくても骨に罅くらい入っていてもおかしくないほどに。

「そうか再生か」

 持っている『アビリティ』の一つを思い出す。

 どうやら任意でなくても発動するようだ。

「回復能力は本当にありがたい」

 そう思いながら攻撃の手は休めない。

 次は投槍を物質化し放つ。

 バチッ!

 ドラゴンの鱗にぶつかる直前、火花が上がり投槍は弾かれる。

「!バリアかよ」

 確実に命中していたはずなのに、弾かれる。よく見れば薄っすらとであるが、全身を蒼い膜のようなもので覆われている。

「勘弁してくれよ」

 強い上に攻撃が通らないでは、倒しようがない。

 とりあえず、今は防御と回避に専念して勝機を待つしかない。


「GYAAAAAAAAAAA」

「え?」

 何十度目かの攻防の末、コウはドラゴンの爪に引き裂かれそうになり、咄嗟に腰に差していた自称神様から頂いた短剣を使い迎撃し指を斬りおとしたのだ。

「もしかして、この短剣てすごい?」

 仮にも神様の餞別なのだし。

「うっし。勝機が見えてきた」

 そう言ってコウはやる気を漲らせ戦闘体勢をとる。

 逆にドラゴンは瞳に僅かな恐れを見せ、一歩後に引く。

 そして、再び戦闘が始まる。


「ふっ。楽勝」

 倒れたドラゴンを確認し、コウはそう呟く。

 だが、そう言うほどコウに余裕はない。

 体中、血と土で汚れ、傷口からは血が流れている。再生の効果で塞がり始めているが、再生箇所が多すぎて追いついていない。これが常人だったら出血多量で死亡していただろう。というか五体満足であるのが不思議なほどだ。

 この状態になったのはドラゴンが強敵だったこともあるが、有効な武器が短剣一本だけだったことも原因だろう。

 いくら防御を無視できる斬撃を繰り出せるとはいえ、所詮短剣である刃の短さはいかんともしがたい。

 そこで、コウがとった行動は、まず短剣でバリア?、鱗、表皮の硬い部分に切り込みを入れ、そこから物質化した剣や槍を突き刺し、ダメージを蓄積させていくことだ。

 だが、本来この方法でも剣や槍ではドラゴンの肉に食い込ませることはできなかった。

 例え表面の硬い部分を突破できても、内部も相当の強度があるのだ。

 しかし、コウには『アビリティ』逆転の一撃がある。

 これは相手との実力差があるほど自身の攻撃力があがるというもので、この効果でドラゴンの内部に攻撃が届いたのだ。

 因みにコウは、まだこの効果に気づいてない。平常時に感覚を研ぎ澄ませてみれば『アビリティ』の詳しい効果が分かったかもしれないが、転移してすぐさま戦闘に突入したのでその余裕もない。

 また、逆転の一撃のランクがⅡと低く、鱗を破るまでにいかなかったので、効果が実感できなかった。

 ドサッ。

 戦闘が終了して気が抜けたのか、コウが倒れ伏した。


---称号:竜殺し を手に入れた---

---『試練』突破を確認 基本アビリティ要求値を満たしています ランクアップを行います---

---ランクⅤ⇒Ⅵ になりました---


「まったく、ソロでボスモンスターを倒すなんて規格外もいいところだわ」

 そんなアナウンスと女性の声を最後にコウの意識が闇に沈む。



名前:コウ

ランク:Ⅴ⇒Ⅵ

基本アビリティ:筋力Ⅴ(4890)⇒Ⅵ(5021) 耐久Ⅳ(3782)⇒Ⅴ(4011) 器用Ⅳ(3357)⇒Ⅳ(3601) 俊敏Ⅳ(3561)⇒Ⅳ(3887) 魔力Ⅲ(2975)⇒Ⅳ(3427)

修得アビリティ:吸収Ⅴ⇒Ⅵ 物質化Ⅲ 再生Ⅴ 逆転の一撃Ⅱ⇒Ⅲ 転移Ⅲ 生産Ⅰnew

称号:転生者 不死者 神の尖兵 剣士見習いnew 軽業師new 竜殺しnew


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