第1話
「よう」
目の前に白いローブをきた、男がいた。
無精髭を生やし、髪はぼさぼさのずぼらな感じの男だ。
「俺は神だ」
どうやら頭が逝かれているようだ。
「だれが逝かれているだ!」
心を読まれた。
「そうだ。まあいい・・・お前自分が誰だかわかるか?」
何を言って?・・・あれ?
「思い出せないだろう。ついでに自分の姿を確認してみろ」
よく見ると腕がない、足がない、ついでに頭もない。というか自分は光る球体だった。
「まあ魂状態ってやつだな」
俺は死んだのか?
「おう、けどなお前さんの死は予定外のものだったんだ。
ああ、別に俺が何かしたとかではないぞ。
だが、お前の死因は何というか世界の法則から外れる死に方だった。
なので通常の輪廻転生の輪に乗せることができない。
そのため他の世界に転生してもらう。
普通なら説明もせずに、そのまま転生なんだが、死因のせいで魂に少々異常が起こっている。
なので、おそらく肉体を得てもその影響を受ける。
そのため影響を最小限に留める体をこちらで用意する。
もちろんタダではない。少し利用というか俺を手伝ったもらいたい」
そう言って自称神様は悪い顔をしながら説明を始める。
これから転生する世界は、剣と魔法のファンタジー世界というかゲームの世界に近いらしい。
世界には巨大な街が一つとダンジョンが存在するだけで、他には何もないらしい。
その世界で生きるためには、ダンジョンにある物資を回収して、それらで生活しなくてはならず、必然的に多くの人がダンジョンに潜る。
ダンジョンにはモンスターも存在して危険も伴うが、この世界の人間は『アビリティ』なる能力をもっているので十分に戦うことができるらしい。
しかも『アビリティ』は訓練するか、モンスターと戦うことで強化していけるというのだ。
そして、この世界のもう一つの特色は『戦争』である。
この世界は自称神様が創り、他にも多くの神様がいて同じ法則の世界が無数に存在するとのことだ。
そして、数年毎に神様同士ルールを決めて、世界の代表者を競わせるのだ。
その結果によって世界は褒章を貰ったり、罰則を受けたりする。
神々でも何かあるらしいが、教えてもらえなかった。
そして目の前の自称神様は負け続けらしい。
「頼む。このままだと色々とヤバイ。世界の住人に手を加えるのは反則だし、君なら結構いけそうだと俺の勘が囁いている」
まあ、どうせその世界に行かなくてはいけないので、かまわないですけど。
「本当か?よかった断られたらどうしようかと。じゃあ早速、肉体を作ろう。・・・あ、名前は生前からぱくってコウでいいか」
そう言いながら、俺・・・コウに手を翳す。
光球の周りに何かが纏わりつき、体が形成されていく。
「ほら」
自称神様が鏡をつくり、コウに投げる。
「う~ん」
自分の姿を見て唸る。
黒髪黒目、可もなく不可もない顔、中肉中背。悪くはないがいまいちパッとしない。
「文句言うな。ほとんど生前と変わらないぞ」
「なかなかの男前だ」
「・・・」
賛同は得られなかった。
「まあいい。服はサービスだ」
そういえば生き返ったのに全裸ではなかった。
と言ってもシャツにズボン、靴に手袋どこにでもありそうな物だ。変わったところといえば、黒一色という完全な真っ黒黒助だ。
「それじゃお待ちかねの『アビリティ』だ。・・・なんじゃこりゃ?」
「どうした」
自称神様が驚いた声を上げる。
「ああ、待ってろいまカードにする」
そういって掌サイズの長方形の金属プレートを創り出し、こちらに渡す。
名前:コウ
ランク:Ⅴ
基本アビリティ:筋力Ⅴ(4890) 耐久Ⅳ(3782) 器用Ⅳ(3357) 俊敏Ⅳ(3561) 魔力Ⅲ(2975)
修得アビリティ:吸収Ⅴ 物質化Ⅲ 再生Ⅴ 逆転の一撃Ⅱ 転移Ⅲ
称号:転生者 不死者 神の尖兵
「これってどうなんだ?」
「ありえねーよ」
コウはよくわからないので、自称神様に聞いたら呆れられた。
「いいか、詳しく説明してやる。
まずランク、これは全ての基準だ。これで大雑把な能力がわかるし、強さの目星もつく、『アビリティ』もランクの値を超えることはできない。
だが、ランクは通常Ⅰから始まり、『アビリティ』を上げて一定の基準になったら『試練』を受けて初めて上昇する。
最初からⅤなんてありえないんだが、Ⅴなんて世界でも30人に満たないし、Ⅵ以上は両の手の指で数えられるぞ。まあいい。次だ。
基本アビリティは表示通り筋力、耐久、器用、俊敏、魔力の項目があり、万人に共通で個別にランクがある。これはさっき言ったとおりランクの表示より上にはいけない。()の中の数値は細かくした値でランクがⅠなら0~1000で、Ⅱなら1001~2000といったぐわいだ。
各項目はそれぞれに則した行動をとるか、モンスターを倒すことで上昇する。
次は修得アビリティだ。これはランクの数だけ修得でき、修得できるものは個々人で異なる。基本アビリティと違って詳細な数値は表示されず、それでも使用していけばランクは上昇する。上限は当然ランクの項目までだ。
効果としては魔法のような現象を起こしたり、基本アビリティ以上の能力を齎したり様々だ。
そして、お前のは再生は回復の上位版だな。怪我などを治癒することができる。転移は簡単に言えば瞬間移動だな思い浮かべた場所に移動可能だ。
だが、他のはよくわからないな。内容の推測はできるが、迂闊なことを言うより自分で検証した方がいいだろう。それに、使い方はなんとなくわかるだろう。本人の肉体や魂に刻み込まれているからな。
最後に称号についてだ、これは本人の行動や成果に応じて現れる。『アビリティ』のように効果のあるものもあるが、ただ表示されているだけのもある。
お前の場合、転生者が効果なし。不死者が再生のアビリティに上昇補正、神の尖兵は『戦争』時に全アビリティに上昇補正だな」
コウは今後に関わるので、自称神様の話を真剣に聞き入っていた。
「まあ、大体こんなところだ。じゃあそろそろ送るぞ・・・これは餞別だ」
そういって短剣を投げる。
それを受け取ると足元が光り輝く。
「じゃあな」
その言葉を最後にコウは異世界に旅立った。