【1】装備と戦闘力の確認
サァーーーーーーー!
遮る物のない草原を風が駆け抜けて行く。 空は紺碧の青さを誇り、その中心で太陽は暖かな光を纏い輝いて、大地には色とりどりの謎の草花が伸び伸びと生えてる。
実に穏やかな風景、これで弁当でもあれば気分はピクニックだ。
しかし、残念ながら約1名、そんな陽気とは対極の暗雲を纏ったかのような暗い顔をして、トボトボと舗装された白い道を歩く美女がいた。
「はぁ~…………はぁ~」
トボトボと歩きながら幾度となく溜め息をついている。
溜め息の数だけ幸せが逃げて行くと言う。
しかし美女は、前払いでこの先一生分の不幸が降りかかったから、これ以上不幸になりようがないと開き直ったかのように溜め息を吐き続けていた。(現在進行形)
「はぁ~~~やっぱり美女だな俺」
腰のバッグから手鏡を出して自分の性別を確認する。 何度見ても美女だった。
転生して草原で目覚め、体の変化にショックを受けてから数時間後、とりあえず体の変化は棚上げして、現在自分を取り巻く状況を確認する事にした。
俺が最初に確認したのは、装備品だ。
俺が現在身に付けている服は、前世の中央アジアの民族衣装クルタによく似た形をしている。
クルタ擬きは、袖口がゆったりとしたワンピースで細やかな花や草の刺繍が施され、下半身にも同じく刺繍の施されたズボンをはき、足にはパンプスのような底の薄い靴、頭には白いスカーフをかぶっている。
ワンピースのメインカラーは赤でかなり華やかな装いだ。
腰には、ウエストポーチのような茶色の革のバッグがあり、コレが超→便利アイテムで見た目の容量よりかなり物を入れる事が出来るようになっているらしい。
具体的にどのくらいかと言うと、俺が着ている服を一式として、365式入れてもまだまだ入るらしい。 どこかの金持ちのように1日一式、一年間一度着た服は着ない、そんな使い方しないけれど。かなり便利だ。生物は不可らしい。
現在バッグに入っているのは、次の4点だ。
【手鏡と櫛】
綺麗な絵柄の書かれた手鏡で、この手鏡で自分の顔(転生後の)を見て、自分が美女になったのを知った。
櫛も手鏡と同じ絵柄が彫り込まれた高級感のある品で、これでウェーブが緩く入った紅紫色の長髪を梳き三つ編みにした。
前世で短髪だったので、顔の周りの髪の毛が鬱陶しかったから。
【アクセサリー】
本物の貴金属と貴石で作られているであろう指輪、腕輪、耳飾りそれから、髪を留める留め具、などが複数入っいた。
三つ編みにした髪の毛を留めた物もこの中の物を使った。
【衣類(服)】
今着用している服と似たデザインで、メインカラーが赤で統一された服が数種類。
【衣類(下着)】
女物の下着。
詳しくは省く…………
以上がポーチ型のバッグに入っていた物だ。
武器やお金の類が一切入っていないのが不親切だ。
これはあれか、武器は己の体ひとつてやつか……
そして金は自分で稼げと……
確かに当たり籤の転生だけあってこの体(美女)は凄い力をもっていた。
体が女になった変化についていけず、イライラしていた数分前の俺は、八つ当たり気味に小石を蹴っ飛ばした。
すると、小石が粉砕された。 びっくりしたが脆い素材の石だったのかと思い、今度はもう少し大きい、俺の胸の片方(メロン台)ほどの石?岩?を蹴っ飛ばした。
結果は、白い道を挟んで草原があり、その向こうに森が広がった場合があるのだが、そこまで凄いスピードで飛んでいき2~3本の木をなぎ倒した。
ヒューーーーーードッカーン×3
俺は、思った。
「今なら熊とタイマン張って勝てるな。 ハァハハ(渇いた笑い)」
そんなこんなで、この草原にモンスターが出ても怖くはないのだが…………
トボトボ歩いていると、目指している街の方向と逆、つまり背後から馬車が近いて来た。
俺は、道の真ん中を歩いていたので端の方に避ける。
通り過ぎるかと思っていたが、その馬車は俺のすぐ横で止まった。
馬車と言っても豪華な箱型の馬車ではなく、荷車に屋根を付けたようなボロボロの馬車だ。
中から髭もじゃの山賊のような風体の男どもが次々と出てくる。
皆、1年間風呂に入っていないのではないかと思われるほど汚らしか格好をしていた。
嫌な予感しかしない。
「えへへへ。 いい女だな~」
「うおー! まじでおっぱいデカい女だ」
「よーねぇちゃん、俺と楽しい事しない? ゲヘゲヘ」
最低の気分だったのが、もっと最低な気分になった。
これは、その原因に責任を取ってもらわないとね?
「そうね~♡ 全員相手してあ・げ・る!」
続く