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王女と異端の騎士  作者: 瀧野せせらぎ
第三章 異端の騎士[前編]
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追われる者

 夜明けが近い森の中を白い輝きが駆け抜けていた。そして、地面蹴って飛び上がると木の幹を足場に身を翻す。

 ザン――ッ

 呪力の輝きを纏った浮遊する剣が空から垂直に落ち、地面へと突き刺さる――と、何も存在しなかった地面に白い小型の獣が姿を現した。

 剣によって縫い留められた獣は、光の粒子となってその存在を消滅する。

(厄介な。追跡を振り払うには数が多すぎる上に、〈剣〉の使い手を仕留めようにも力の有効範囲を見極めることができないのでは意味が無い)

 空中へ身を躍らせたリカルドは舌打ちをしながら、呪力を宿した瞳で木陰と茂みに潜む獣たちを睨みつける。

(諜報員からの報告にはなかったが、このような使い手がいるとはな。下手に情報を与えれば、こちらとしても動きづらくなりかねん)

 即座に判断を下し、〈剣〉を持っていない手を獣たちへと向けた――瞬間、地面に突き刺さった〈剣〉が浮かび上がり、空を翔けて獣の一匹を仕留めた。

 そして、上空から同じ形状の剣が降る。計十本の剣によって獣たちは駆逐されていった。

 光の粒子が夜明け近い森を照らしては消失していき、やがて認識できる範囲の獣は存在しなくなる。

 要したのはほんの数瞬であるが、気がかりがある今の状況では無駄な浪費であるとリカルドは感じていた。

(よく言い聞かせたつもりだったが、あのじゃじゃ馬相手に細かい指示は無意味だったか)

 何度も簡潔な説明を行い、少女に復唱させて記憶させる様子を思い出して嘆息する。

 思考を途中で切り、白み始めた空を見上げた空を見上げて手に握っていた〈剣〉を封印せず、自らの体へと納めて森を縫うように駆け出す――と、先ほどすべて駆逐したはずの獣が視界の端に映る。

(この追手が聖教本山から派遣された者とは考えづらいが、……公国や王国の手の者だとしても油断できん)

 リカルドは相手の正体を看破できないことに対して苛立ちを覚えていた。しかし、冷静に思考を行っていく。

(いずれにせよ、この追手を撒くには人気のある集落に紛れ込む必要がある。時間の浪費は避けたいが、やむをえん)

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