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お題小説 AV 男の娘 猫耳 戦争

作者: 昧隆牙

「わぁ かえで君やっぱり似合う!」


 ここはとある高校の演劇部の部室。

僕の目の前で猫耳を手に抱えながら頬笑みかける女の子がいた。


「……ありがとう。」


全く嬉しくないがとりあえず彼女にそう返しておく。

僕の姿は今メイド服にニーソ。

何が似合うだ。

そんなこと言われても全く嬉しくないっての。



だって僕は――






男なんだから!









 時間をさかのぼる事数時間前……

僕はいつものように教室で居残り勉強をしていた。

家に帰ると親や兄弟がうるさいのでいつもこうして教室に残って今日の授業の復習をする。

僕は特別勉強が好きというわけではない。

ただテストの点数が悪いとクラスの奴らに馬鹿にされるから勉強をしているだけだ。

ただ勉強といってもそこまでしっかりするのではなく、ほどほどに。

テストで70点がとれるくらいしか勉強しない。

真面目に勉強して100点をとっても親はほめてくれるだろうが、クラスの奴らはそうはいかないだろう。

きっと嫉妬して突っかかってくるに違いない。

なんでそんなことわかるかって?

経験してるからさ。




 あれは3年前。


まだ中学1年生だった僕は母から中学校でいい成績をとっていたら将来必ずいい人生が送れると

言いきかされていた。

その母の言葉を真に受けて、僕は中学生の時は部活も遊びもせずに毎日勉強に明け暮れた。

その甲斐あってかいつもテストの点数は全教科95点以上を叩きだしていた。

母はテストの点数を見てとても喜んでくれたが、クラスの奴らは……

頭がいいからって調子に乗るな。 チビ。 女顔。 ガリベン。

毎日のように暴言を浴びた。

時には手を出してくる奴もいた。

それが中学3年間の間続いた……





 あの時の悲劇を繰り返さないように僕は極力目立つことはしないようにしている。

出る杭は打たれる。という言葉があるように、目立つ人間はいつか痛い目にあうのだ。


「はぁ……」


昔のことを思い出していると勉強する気も削げてきた。今日はもう帰ろう。

そう思って僕は椅子から立ち上がった。いつもと同じで腰が重い。

ふと窓の外を見てみると空はもう薄暗くなっていた。


「暗くなる前に帰ろう。」


急ぎ足で帰ろうと教室のドアに手を触れた時、急にそのドアが開いた。


「あ……」


空いたドアの向こうにいたのは僕と同じくらいの身長をしたどこか見覚えのある女の子だった。

僕の身長は150cm前後だからかなり小さい。


「あ……同じクラスの土井君。」


同じクラス……? ああ、思い出した。この子は同じクラスの斎藤 真央。

いつも教室の隅っこで本を読んでいる地味な女の子だ。


「あ……ごめん。」


ふと我に返り僕は彼女に道を開けてあげる。


「ありがと。」


彼女はいつも隅っこで本を読んでいるような地味な女の子からは想像もできないような

とても魅力的な笑顔で僕に笑って見せた。


「う、うん。」


不覚にもドキっとしてしまった。

そもそも彼女はどうしてこんな時間に教室へ来たのだろうか。

教室に入っていく彼女の姿を横目で見ながらそんな事を考える。

しかし正直聞きにくい。

僕と彼女の仲は悪いわけではない。

が、決して良いわけでもない。

前の席替えで隣の席になった時にちょっと話したことがあるくらいだ。友達ですらない。

彼女が何をしに教室に来たかなんて聞く理由が無い。

そんなことを思っていると。


「楓君はこんな時間にどうしたの? 居残り?」


と彼女が僕に向かってそんな事を聞いてきた。


「あ……えと、居残り勉強を。」


なんでそんなこと聞いてくるんだ?僕がここにいる理由なんてどうでもいいはずなのに。あ、好奇心か。


「居残り勉強!?よく自主的に勉強しようなんて気になるね。私は勉強嫌いだから

絶対そんなことしようと思わないよ。」


と彼女は照れたような顔で笑った。


「僕も勉強は嫌いだよ。でも点数悪かったら親に怒られるし。」

「楓君ってたしか平均70点くらいとってたような……それでも足りないの?」

「いや、それくらいとってればいいんだよ。」

「ふぅ~ん……」

「斎藤はどうしてこんな時間に教室に?」


彼女がこちらに質問してきたので、こちらも彼女に質問してみる。

彼女は自分の席に歩いて行って、机の中を漁りそこから出てきたものを僕に差し出してくる。


「これを持って帰るの忘れちゃって。」


彼女が僕に差し出してきたものは、所謂ラノベと呼ばれるものだった。

まぁラノベを読んでいるのはいい。僕も読んでみたけど面白いものばかりだ。

でも僕の前に差し出されたそれは……

表紙に「こんな可愛い子が女の子のはずがない!」と丸みをおびた文字で書かれていて、

さらに帯の部分の説明には「可愛い女の子かと思ったらなななんと男の娘だった!?」

という衝撃的な文字が堂々と書かれている。

とても普通の女子高校生が見るものとは思えない。


「へ、へぇ……そうなんだ。」


僕は若干後ずさりをしながら彼女に返答を返す。

僕は男の娘というものが何かを知っている。

知っているからこその後ずさりだ。

男の娘とは「女の子」にしか見えない容姿をした「男の子」である。

男の娘と呼ばれる人は主に女装をしている。

要するに変人だ。

そんな変人が出るラノベを読んでいるとなるとやっぱり引いてしまう。


「んー……」


何やら彼女が僕に熱い視線を向けてくる。超絶嫌な予感しかしない。


「な、なにか用かな?斎藤さん。」

「楓君。ちょっと付き合ってもらってもいい?」

「へ?」

「付き合ってもらってもいいよね? ね?」

「へ? あっ。ちょっと!?」


返事をする間もなく彼女に手を取られ、僕たちは教室を後にした。

彼女に手を取られて連れてこられたのは、演劇部の部室。


「楓君。これ着てみて?」

「え? これを?」

「うん。これ。」


彼女が僕に差し出してきたのはメイド服。


「え? いやこれメイド服「着てみて」

「はい……」


彼女の謎の圧力に負けて僕は渋々メイド服を着ることになったのである。

で、今に至る。


「なんでこんなことに……」

「あ、その表情いいわ! とってもそそる! クラスの女の子と可愛さ戦争しても負けないわ!」


彼女はキャーキャーいいながら僕の事見てるし……


「なぁ、もう着替えてもいいだろ?」

「駄目よ。まだ写真撮影が終わってない。」

「写真撮影!? 聞いてないぞそんなの!」

「駄目?」

「駄目に決まってるだろ!」


誰がOKするんだよそんな申し出。もしOKするやつがいたらそいつは正真正銘の馬鹿だ。


「そっかぁ。駄目なら仕方ないなぁ。」

「当たり前だ。」

「そっかそっかぁ……じゃあさっきこっそり撮った楓君の写真クラスの子に送っちゃおうかなぁ。

いや、AV作ってる会社とかに送って……」

「はぁ!? ちょっ。マジかよ!?」


なんて事してくれるんだこいつ! 大人しそうな顔してやることが下衆だ!


「写真撮影。やらせてくれない?写真は私の誰にも送らないからさ。」


断ったら写真をばらまかれる。かといってOKしても彼女が写真を誰かに送らないとは限らない。

どうすれば……


「……わかったよ。」

「本当!? ありがとう!」


散々考えた結果彼女の言うことを信じることことにした。

断ったらばらまかれること確定だし、苦渋の選択だ。


「じゃあ始めるよー。」

「おい、お前ら。何やってるんだ。」


斎藤が携帯のカメラをこちらに向けると同時に演劇部のドアが開き、男の先生が入ってきた。


「げ、先生……」

「斎藤に……土井……か?なんだその格好。」

「い、いやあぁぁぁぁぁぁぁ……!」


暗くなった空に僕の出した悲鳴がいつまでも響いていた……

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