第8話 凛の隠された過去
―― 学校の朝、探索部室 ――
朝の部室はまだ少しひんやりとしていた。
俺たちが集まって今日の活動予定を話していると、ドアが静かに開いた。
白峰凛が一人で立っていた。
彼女は制服の裾を軽く握り、先生に向かって小さく頭を下げた。
「…見学しても、いいですか?」
高橋先生が立ち上がって両手を広げた。
「大歓迎だ、白峰さん! 君の解析スキルは昨日見たぞ! これで4人だ、正式パーティー登録もすぐできる!」
花がすぐに笑顔で近づいた。
「凛さん、来てくれて嬉しい! 桜井花です。よろしくね」
剛が胸をドンと叩いて大声を出した。
「大山剛だ! 兄貴の相棒! よろしくな、凛ちゃん!」
俺は自然と微笑んで言った。
「佐藤健太です。昨日は本当にありがとう」
凛は少し目を伏せて、静かに答えた。
「…白峰凛です。よろしく…お願いします」
4人で簡単な自己紹介が終わり、先生が地図を広げて今日の目標を説明した。
みんなの笑顔が部室を明るくした。
―― 放課後、廃墟ダンジョン入口 ――
放課後、4人でいつもの廃墟ダンジョンに入った。
ゲートをくぐると、凛が初めてパーティーとして本格的に動いた。
道中で剛が軽くスライムに当たって傷を負った瞬間、凛が素早く手を翳した。
「癒しの光」
柔らかい白い光が剛の体を包み、傷がみるみる癒えていく。
剛が目を丸くして飛び上がった。
「すげえ! 凛ちゃん、これめっちゃ便利だ! ありがとう! これで俺、もっと前衛張れるぜ!」
花が感心した顔で凛の手を軽く握った。
「凛さん、すごい…私も勉強になるよ。ありがとう」
俺は胸が熱くなって言った。
「本当に助かる。凛さんのおかげでパーティーが一気に安定した」
凛は少し照れたように目を逸らしたが、口元がわずかに緩んでいた。
―― 廃墟ダンジョン中層・午後 ――
中層に進むと、突然地面が揺れた。
中ボス級のオークキングが咆哮を上げて現れた。
巨大な体躯、鉄のような棍棒、目が血走っている。
「みんな、連携!」
俺が声を張った。
花が流星剣を繰り出し、剛が鉄壁の盾で正面から受け止める。
凛が解析の眼で弱点を瞬時に教えてくれる。
「膝の裏…!」
しかし、次の瞬間、凛の動きがピタリと止まった。
目が虚ろになり、顔が青ざめる。
オークキングの棍棒が彼女に向かって振り下ろされる。
「凛さん!」
俺は即座に体を滑り込ませて彼女を庇った。
「まだ諦めない!」
努力の結晶が全力で回転した。
集中力強化、指揮の鼓動、耐久の意志を同時に発動。
息が上がる、汗が噴き出す、腕が悲鳴を上げる。
でも、凡人の俺が今できる最大の努力を続けた。
「花、右から! 剛、俺をフォロー! 凛さん、回復をお願い!」
凛のトラウマがフラッシュバックしているのが分かった。
過去に大切な人を失った記憶が、彼女を縛っている。
俺は歯を食いしばって叫んだ。
「俺たちがいる! 一人じゃない!」
その言葉で凛の目が少し焦点を取り戻した。
癒しの光が俺に降り注ぎ、HPが回復する。
4人の息が再び重なった。
花の連続剣撃、剛の突進、凛の精密解析、そして俺の指揮。
オークキングの膝が崩れ、最後の咆哮と共に倒れた。
【経験値獲得】
【レベルが8に上昇しました】
静けさが戻った。
―― 戦闘後、ダンジョン休憩エリア ――
休憩エリアのベンチに座った凛が、初めて本音を少しだけ漏らした。
「…私は、仲間を失うのが怖くて…ずっと一人でやってきた」
声が震えていた。
花が優しく凛の隣に座って手を握った。
「大丈夫だよ、凛さん。私たちなら絶対に大丈夫。一緒に守り合おう」
剛が照れくさそうに頭を掻いた。
「兄貴がいるんだから、俺たち全員で最強になるぜ!」
俺は凛の目を見て微笑んだ。
「凡人の俺でも、みんなと一緒なら頑張れる。凛さんも一緒に頑張ろう」
凛は少し目を潤ませて、ゆっくり頷いた。
花が明るく提案した。
「じゃあ、今日はお疲れ様に部室でお茶でも飲もうよ! 凛さん、好きな飲み物ある?」
凛の口元が、初めてはっきりと緩んだ。
「…紅茶が、好きです」
女子二人の小さな会話が、休憩エリアを温かくした。
―― 夜、自宅リビング ――
夜、自宅のリビングで俺は弟のゆうたに今日のことを話していた。
「今日、新しい仲間が本格的に加わったかも。凛さんっていう転校生だよ」
ゆうたが目をキラキラさせて飛びついてきた。
「兄ちゃんの最強パーティー、どんどん強くなってるじゃん! 動画撮って見せてよ!」
母の恵子さんがキッチンから笑顔で声をかけてくれた。
「健太、友達が増えてよかったわね。危ない時はちゃんと先生に相談してね」
俺は温かい家族の声に囲まれながら、心の中で誓った。
(みんなと一緒に、最強パーティー目指す。凛さんのトラウマも、俺たちの絆で乗り越えよう)
今日の努力が、また少し俺を強くした気がした。




