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『ちょこれゐと ゐず びゅうてぃふる』シリーズ

ちょこれいと まいんど

 『ちろるちょこ』が20円になっていたという事をご存じだろうか。それ自体は大した出来事ではない。『ちろるちょこ』を生産している人達にしてみれば重大な決定だったに違いないと心中お察しするのだが、世間的には大したことがないという印象である。10円が20円になったところで安い事には違いないのは確かである。



 だが『ちょこれいと』をこよなく愛している僕のような人間にしてみればこれは憂慮すべき事の一面を映し出していて、重大な問題を孕んでいるように思われるのである。




 『ちょこれいと』の哲学的、美学的、経済学的問題をここで取り上げよう。まず最初に発せられるべき問いは「『ちょこれいと』の魅力とは何か?」である。「『ちょこれいと』とは何か?」というより哲学的な問いを発する事も可能だが、『ちょこれいと』が大切で無くてはならないものと既に認めてしまっている僕にとっては愚問であり、『ちょこれいと』とは『ちょこれいと』というトートロジーしか出てこないような問いである。僕は『ちょこれいと』に何の疑問も持っていない。ただこの世で一番美味しいもの…のカテゴリーだという認識である。



 『ちょこれいと』の魅力は当然、美学的な側面などから考えられるべきでもある。『ちょこれいと』のブラウンは美学的に美しいだろう。そして、食べる事によって得られるエネルギーを考えると、少額でも十分なカロリー摂取が可能な食物である。言いようによっては経済的かも知れない。が、一般的には…









 あ”””””ぁ”””””””””””面倒くさい。こんなレポートを書いていていても『ちろるちょこ』が20円になったり、よくある『板ちょこ』が微妙に薄くなっているという事実は覆らないのだ。確かに原料国の取れ高とか、豊かになってきた他国と物量を取りあわなければならない関係になったりだとか、輸送量がガソリンの値上げでどうたらこうたらとか、配慮しなければならない事情は多いけれど、端的に言えば僕が食べられる量が相対的に減ってしまうという事にもなりかねないのは確かなのだ。




『ちょこれいと』を食べるという事は自然な事である。アレルギーがある人もいるかも知れないけれど、僕にとっては逆に食べない方が精神的な地獄である。この溢れんばかりの想いをどこで訴えればいいのだろう。要するに問題は…。




「ねえ、どうしたら『ちょこれいと』沢山手に入れられるかな?」


「え…?もっと貰いたかったの?」



『せんとなんたらさん』の誕生日を祝うイベントで「義理ではないらしい『ちょこれいと』」を貰って以来、何故か仲良くなった同僚の女の子、『荒井さん』に僕は何気なく訊ねた。丁度その時、僕等は社食で昼食を採っていたのだ。



「そりゃ貰えるものならもっと貰いたいけどね」



 何故か不機嫌そうな顔をし始める荒井さん。荒井さんもチョコレート愛があると思っていたから共感して貰えそうな話だと思っていたのに、反応は芳しくない。



「わたしの事好きって言ったじゃないですか…」



「え?それと何か関係あるの?」



「なにそれ…他の人にも手を出すつもりですか?酷い」



時々この人は何を言っているのか分からない時があるが、今はまさにその時である。



「何で他の人に手を出すとかよく分からない話になってるの?『ちょこれいと』が欲しいって言ってるだけじゃん?」



こう言うと、荒井さんは不思議そうな顔に変わった。



「ただ『チョコレート』が欲しいって言うんですか?女の子じゃなくて?」



「『ちょこれいと』以外に何を求めるのさ。普通に『ちょこれいと』が欲しいだけだよ」



不思議そうな顔から、頭にはてなを浮かべているような顔になっている。



「じゃ、聞きますけど、わたしと『チョコレート』だったらどっちが欲しいですか?」



 意味不明な質問である。哲学的な問いでもあるが、同じ次元に属していない事を比べろといわれても土台無理な話である。



「『ちょこれいと』は欲しいよ。荒井さんとは仲良くなったし、優しいし好きですけどね」



答えようがなかったので、思っている事をそのまま言う僕。その答えで満足だったのか、少し恥ずかしそうだがニヤニヤしだした。謎である。



「高嶋さんは素直に『好き』って言ってくれるから好きです…」



「荒井さんって時々変ですよね。当たり前の事を聞いてくるから」



「高嶋さんも変ですよ。わたしてっきり『チョコレート』が好きなだけかと思っちゃいましたもん」



「それは間違いじゃないよ。『ちょこれいと』は好きだよ。好きだから沢山欲しいって言ってるんじゃん」



「ふふふ…高嶋さんて正直なんですね」



「そんな事より、どうやったら『ちょこれいと』が沢山手に入るかを考えてよ…」



そう言うと、荒井さんは何か思いついた事があったようで、先ほどのようにニヤニヤして言う。



「一つ良い方法がありますよ」



「なに?」喰いつく僕。



「わたしがまた手作りでチョコレートをプレゼントしますよ。毎日でも。ふふふ…」



 僕は少し考え始めた。これは根本的な解決にはなっていないように思えるものの、確かに魅力的な提案である。ただ気になる事があった。



「でも荒井さんの負担になりませんか?最近は『ちょこれいと』もばかになりませんからね」



「う~ん…そうですね…それは今度何処かに連れて行ってもらうという事でどうですかね?」



「え?別に良いですけど…そんなんで良いんですか?」



「『そんなん』で良いんです…わたしにとっては。ふふふ」




荒井さんは幸せそうに微笑んでいる。いつもは『ちょこれいと』の事ばかり考えている僕だが、この時ばかりは<良い笑顔だな>と思ったりした。




 余談だが、『ちろるちょこ』は10円の時よりも大きくなっているそうである。悪い事ばかりでもないのかなとか思う今日この頃。

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― 新着の感想 ―
この『ちょこれいと・ばか』のおにいさんに恋した彼女が気の毒で、ハラハラします(笑)。
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