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楽しそうなひと
わたくしは。
それなりの、
花です。
道の向こうは。
華やかな花が。
咲き競うところです。
お昼ごろに。
丸いカバンを肩から下げ、
懐中電灯を持ったひとが、
やって来ました。
華やかな花畑を、
じっと眺めたあと。
言いました。
うん。
美しさが。
明らかだな。
離れて見ても、
十分に分かる。
いっぽう。
こちらの。
それなりの花は。
恥ずかしがり屋なのか。
太陽をちょっとだけ見たいのか。
そのぶんくらいしか開いていない。
しかしね。
そのうちがわは。
びっくりするくらい、
さまざまで。
同じ種類の花だとは、
とても思われないくらいだと、
知っているんだ。
そのひとは言いながら。
私たちに光を当てて。
透かして見ては、ふんふん頷いて。
色鉛筆で、分厚いノートに、
ていねいに描いていきます。
なんだか、このひとは。
とても。
楽しそうにしています。
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