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「ゴメン、待ったか?」
『も~、遅いですよ?兄さん』
「本当ゴメンな」
『しょうがないですね、ここで言い合ってても仕方無いですし』
そう言って“彼女”は歩き出した。
“彼女”を追って歩こうとした時。
『た~だ~し❗️』
「えっ?」
『今日はい~っぱい奢って貰いますからね?』
そう言って振り返った“彼女”はとてもきれいな笑顔で・・・
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僕は自室で目を覚ました。
訳もなく寂しさを覚えた。
「寂しい?」
いつもと変わらない朝だ。
何も寂しさを感じる理由なんて無いのに・・・
ジリリリリリリ・・・
枕元で目覚まし時計が鳴り出した。
「っと、もう時間か」
着替えが済む頃には寂しさなんて物は、有った事すら忘れていた。
「おはよう、姉さん」
リビングに入るなりそう呼び掛ける。
『おはようございます。もう少しで出来るからね』
姉とは言っても本当の姉じゃない。
隣に住む伯父夫婦の娘、つまりは従姉だ。
「いつも言ってるけど、無理しないでいいんだよ?」
『無理なんてしてないよ~。
私がしたいから、やってるだけ』
いつも通りのやりとり
何時もの風景
なのに何故か彼女の隣が気になった。
『・・・どうかした?』
「えっ?」
『ぼ~っとしちゃって』
「ううん、なんでもない。」
『……なら、良いんだけど』
いつもと変わらない、だけど何かが違う朝だった。
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学校で用事の有る姉さんから遅れる事しばし、雪の舞う通学路を一人歩く。
“・・・・・・だ”
「何だ?」
“・・・・・こい”
聞いた事の無い、だけど聞き覚えのある声に誘われる様に通学路を外れた。
たどり着いたのはこの街の名所、大きな櫻の樹。
(にい……さん……!)
雪の中に咲き誇った季節外れの桜の花が
(来ちゃダメ!)
僕に寄り添うように舞い踊る
「帰って‼️」
幻想的なその光景と言葉にならない想いに、ただ涙が溢れた。