第三話、社長、RASISから逃亡!?
どうも、3話まで見ていただき、ありがとうございます。
この事務所、かなり企業支援に力を入れていますね。社長は、単なる司法書士事務所ではなく、お客さんのビジネスサポーターになりたいと、経営コンサルタントまでするようになったのです。社長は司法書士の叩き上げですから、つい昔の感覚でやってしまいますが、水野さんは、司法書士の上になんと、公認会計士の資格もとっており、頼もしい存在です。半年前に情報セキュリティマネジメント試験にも合格しており、クライアントとの話し合いでも手ごたえを感じています。
田中社長の「昔気質」と水野さんの「最新知識」の組み合わせがいい塩梅に物語を展開してくれると思います。あ、苗字呼び捨てはやめて”さん”付けでやっていきますね。
さて、今回のお話は、クライアントの横文字多用にいつも辟易している田中社長です。
水野さんはRASISを稲田さんに解説して、アルファベットだらけの難しい問題を出します。社長はウソの仕事を思い出して逃げようとします。
【問題】MTBF(平均故障間隔)とMTTR(平均修理時間)を使って、可用性即ち稼働率を上げるには、
①MTBFとMTTRを共に2倍にする。
②MTBFは変えずにMTTRだけ2倍にする。
③MTBFを2倍にしてMTTRはそのまま。
④MTBFを半分にしてMTTRは2倍にする。
稲田さんは、勘で③を当てましたが、水野さん「理由は?」と聞いてきます。
それでは、第3話、お楽しみください。
── 田中司法書士事務所・会議室 ──
(ホワイトボードの前に水野、机に座る田中さんと稲田さん)
「水野先輩、クライアントとの打ち合わせで『RASIS』 って出てきたんですけど……あれって何ですか?」
「おおっ、それワシも気になってたんや! 最近のクライアント、横文字ばっかりで全然ついていけん……!」と、自分も自然に横文字を使う田中社長です。水野さんは苦笑いして「じゃあ、今日は RASIS について説明しましょう!」と言って、ホワイトボードに次のような事柄を書き始めます。
「RASIS」⇒ITシステムの 信頼性や安全性を評価する5つの要素
•R(Reliability:信頼性) → システムが安定して動くか
•A(Availability:可用性) → どれだけ止まらずに稼働できるか
•S(Serviceability:保守性) → 修理しやすいか
•I(Integrity:保全性) → データが正しく保持されるか
•S(Security:安全性) → システムが外部から守られているか
これを見て、田中社長は「うわぁ、アルファベットばっかりやん……。頭痛くなってきた……。」と、首を曲げて腕組みします。
「えっ、先輩、ITの話なのに意外とシンプルですね!」と、稲田さんは早くも理解したようです。水野さんのOJTが少し効いてきたかな?
「そうそう。特に A(可用性) は、システムの稼働率に関わる重要な指標なんだ。で、ここからが本題!」
ーー【問題】可用性(稼働率)を上げるには?ーー
ホワイトボードのA(Availability:可用性)を指指し
「可用性は、MTBF(平均故障間隔) と MTTR(平均修理時間) の関係で決まるんだ。」と水野さんが言いますと、
「ん? なんやて? MTってことは、ギアチェンジか!?」
「違います!!!」と稲田さんは笑って「社長、落ち着いてください! これはITの話ですよ!」
「では、次のうち 可用性を上げる方法 はどれでしょう?」
①MTBFとMTTRを共に2倍にする。
②MTBFは変えずにMTTRだけ2倍にする。
③MTBFを2倍にしてMTTRはそのまま。
④MTBFを半分にしてMTTRは2倍にする。
と水野さんはホワイトボードに書いていきます。すると、
「ええい、ワシは急に思い出した! 重要な仕事があるんや!!」と言って、席から立とうとします。
「社長、逃げないでください!」水野さんは社長を制止して、稲田さんの方を見ます。
「さて、稲田さんの答えは?」
稲田さんじーっと見つめて「③!」、当たっていました。
「おっ、正解! でも 理由は?」と水野さんに聞かれて、
「えっ……あの……カンです!」とドヤ顔です。
「カンかい!! でも当たっててすごいなあ……!」と、突っ込んでから褒めます。
ーー【解説】可用性(稼働率)を上げるには?ーー
水野さんは、可用性(稼働率)の式をスマホで表示しました。
「MTBF(故障せずに動く時間)が長いほど、またMTTR(修理時間)が短いほど、可用性は高くなる。ということはーー」
「MTBFを2倍にすれば、分母が相対的に増えて可用性が上がる んですね!」
「稲田さん、その通り! 逆に、MTTRを2倍にすると、分母が増えて可用性が下がってしまう。ということです」
「なるほどなぁ……。ワシも司法書士業界の可用性を上げるために、MTBFを増やして、MTTRを減らさなアカンな……!」
「田中社長、それITの話なんで、あんまり無理やり応用しないでください。」水野さんが笑っています。
「社長が急に『重要な仕事を思い出した』って言いながら逃げるのは 可用性を下げてる ってことになりますよ!」と、稲田さんもさっそく応用しています。
「ぐぬぬ……! やっぱりワシ、RASISとか横文字だらけの話になると、つい逃げたくなるんや……!!」
── 完 ──