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田中オフィス  作者: 和子
29/90

田中オフィス外伝「進撃のミサタマ」

東京の春は、いつも少し慌ただしい。


佐藤美咲、二十二歳。情報系の大学を卒業し、基本情報処理技術者の資格を手に、意気揚々と上京してきた。憧れだった東京の中堅ソフトウェア開発会社「Vシステム」に新入社員として入社したのは、ちょうど一年前のことだ。


だが、現実は思っていたほど華やかではなかった。忙殺される日々、何のために仕事をしているのかわからなくなるようなタスクの連続。ふと立ち止まれば、自分の足元が揺らぐような不安に襲われる。


そんな中、彼女の転機となったのは、Vシステムの先輩・倉持 渉と一緒に取り組んでいたプロジェクトだった。業務で知り合ったのが、田中オフィス東京出張所の水野幸一――スーツ姿も言葉遣いもきっちりした、どこか空気の澄んだような人だった。


「今の仕事……無理してない?」


ある日、ふとした沈黙の合間に、水野がそう声をかけた。思いがけない問いだった。けれど、それはどこか、ずっと心の奥で自分自身に問いかけていた言葉でもあった。水野はパソコンの画面から目を離さず、ただ声の調子だけでそっとそう言った。


まるで、何もかも見通しているように。


美咲は一瞬、言葉に詰まった。心の奥に、何かが静かに触れたような気がした。


数か月後、美咲は田中オフィス東京出張所への転職を決めていた。誘ってくれた水野の言葉が、まだ心に残っている。「うちみたいな小さな事務所でも、人の役に立てる実感はあると思うよ」


ーー洗礼ーー

そして今、美咲は初めての連続休暇を使い、京都本社を訪れている。念願だった田中オフィスの本拠地。今日は、社長をはじめとする本社メンバーに初めて顔を合わせる日だ。


ビジネスの基本として、訪問先の責任者には事前に一報を入れる――そのとき、電話口で橋本部長は笑いながら言った。

「緊張しすぎやで、佐藤さん。社長、けっこうユルいから」


京都本社に行く前のことだった。

けれど今、美咲は田中オフィスの玄関前で足が止まっている。手順はすべて終えた。あとは入るだけ。

なのに、心臓の音ばかりがやけに大きく響いていた。


入社前から趣味の合う奥田珠実――たまちゃん――とはSNSで交流していたし、渋谷の慰労会では社長の田中卓造や稲田美穂とも顔を合わせている。だが、本社の空気はやはりどこか違った。


「初めまして、佐藤美咲と言います。先月、東京事務所にご採用いただき、たいへん有難く思っています。今日はご挨拶させていただきたく……あの、なにもわかりませんけど、よろしくお願いします……」


緊張で声が上ずる美咲に、田中社長がニッと笑いながら言った。

「そんなに固くならんとき。せっかくの機会や、みんなにも顔見せとかな、な?」


その言葉をきっかけに、藤島専務、橋本和馬、佐々木恵、半田直樹、伊原隆志、島原真奈美が順に挨拶を交わしていく。


美咲はふと思った。

――ああ、ここから、何か新しい物語が始まる気がする。


温かい拍手が、少し緊張気味の佐藤美咲を包み込みました。ぺこりと頭を下げる美咲に、一番近くにいた奥田珠実が、キラキラした笑顔で駆け寄ります。


「みーさきちゃん!ようこそ京都へ!会いたかったよ~!」


たまちゃん、こと奥田珠実の明るい声に、美咲の顔にもようやく笑顔がこぼれます。


「たまちゃん、こちらこそ!やっと来られたよ。」


二人はぎゅっと手を握り合いました。まるで久しぶりに再会した親友同士のようです。


田中社長が、腕を組みながら二人を見て、にこやかに言いました。


「まあ、二人はもう顔見知りやからの。ゆっくりしていき。」


続いて、少し離れた場所に立っていた、落ち着いた雰囲気の女性が、優しく微笑みかけました。


「佐藤さん、ようこそ。私は佐々木恵と申します。何か困ったことがあれば、遠慮なく声をかけてくださいね。」


「佐々木さん、ありがとうございます。」

美咲は少し緊張しながらも、丁寧に頭を下げました。


次に声をかけてきたのは、眼鏡をかけた、少しくだけた雰囲気の男性でした。


「やあ、佐藤さん。直接会うのは初めてやけど、電話ではお世話になってましたね。橋本です。ま、技術のことはからっきしやけど、何かあったら何でも相談してな!」


「あっ、橋本さん!はい、ありがとうございます。心強いです!」


美咲は、少し安心した表情を見せました。


その後も、藤島専務が穏やかな笑みを浮かべながら「歓迎しますよ」と声をかけ、半田直樹が少し照れくさそうに「よろしく」と挨拶し、伊原が、美咲に向けて不器用ながらも静かに口を開いた。


「……佐藤さん。京都本社へ、ようこそ。」


それだけで、場にほんの少しだけ温度が生まれる。

言葉は少なくとも、その声には誠実さと仲間を思う優しさが滲んでいた。


美咲は思わず背筋を伸ばし、はにかんだ笑顔で「ありがとうございます」と答えた。島原真奈美が好奇心旺盛な視線を向けながら「色々お話しましょうね!」と声をかけてくれました。


一通りの挨拶が終わり、田中社長が手を叩いて言いました。


「さて、美咲さんも来たことじゃし、そろそろお昼にしようか。たまちゃん、案内してくれるか?」


「はい、社長!美咲ちゃん、美味しい京料理、食べに行こう!」


たまちゃんは美咲の手を引っ張り、明るく笑いました。


初めての京都本社。初めて会う田中オフィスのメンバー。少し緊張していた美咲の心は、皆の温かい歓迎と、たまちゃんの明るさに、徐々に解きほぐされていくのを感じていました。

これから始まる京都での滞在が、彼女にとってどんな経験になるのか、まだ想像もできませんでしたが、確かなのは、温かい人たちとの出会いが、彼女の心に小さな光を灯したのでした。



ーー鳴動ーー

「進撃のミサタマ」の真の目的は、2.5次元舞台「京都義士伝(きょうとぎしでん)安政の血祭(あんせいのちまつり)!」、通称「ギシアン祭り」の観劇だったのですね!物語は新たな展開を見せそうです。


昼食後、田中オフィスのメンバーと別れ、たまちゃんと美咲は二人きりになりました。

「さあ、みさきちゃん!いよいよ私たちの本当の目的を果たす時が来たよ!」たまちゃんは目を輝かせ、拳を握りしめました。「『ギシアン祭り』!想像を絶するイケメンと殺陣と歌の洪水が、私たちを待っている!」


美咲も、東京を発つ前からずっと楽しみにしていた舞台のことを思い出し、胸が高鳴ります。「うん!私もずっと楽しみだった!まさか、初めての連続休暇で、こんな素敵なご褒美があるなんて!」


二人は、公演が行われる劇場へと足を運びました。道中、たまちゃんは「ギシアン」の魅力を熱弁します。「もうね、キャストの皆さんの殺陣が本当にすごいの!刀捌きが美しくて、息をのむっていうか!それに、ミュージカルパートの歌声がまた、心に響くんだよね~!特に、斎藤一役の〇〇くん!もう、眼福ものだよ!」


美咲も、事前にネットで情報を仕入れていたので、たまちゃんの話に大きく頷きます。「うんうん!私も動画で少し見たけど、本当に迫力満点だった!今日の公演が本当に楽しみ!」


劇場に到着すると、ロビーはすでに多くのファンで賑わっていました。パンフレットやグッズを手にする人々の熱気に、二人の期待もさらに高まります。


席に着き、開演を待つ間も、たまちゃんの興奮は収まりません。「ねえ、みさきちゃん!今日の席、結構良いんじゃない!?表情もばっちり見えるかも!」


美咲も周囲を見渡し、頷きました。「うん、そうだね!本当に楽しみ!」

そして、ついに舞台の幕が上がりました。


舞台狭しと繰り広げられる、若手俳優たちの熱のこもった演技、息をのむような殺陣アクション、そして、観客の心を揺さぶる歌声。美咲は、たまちゃんと二人、瞬きもせずに舞台に釘付けになりました。


特に、たまちゃんが熱く語っていた斎藤一役の俳優が登場するシーンでは、その圧倒的な存在感と、クールな眼差しに、美咲も思わず息を飲みました。舞台上で繰り広げられるドラマに、二人は笑い、時に涙し、全身で「ギシアン祭り」の世界を堪能しました。


公演が終わると、興奮冷めやらぬ二人は、ロビーで感想を語り合いました。「たまちゃん、本当にすごかったね!想像以上だった!」美咲の頬は紅潮しています。


「そうでしょ!そうでしょ!だから言ったじゃない!『ギシアン』は最高だって!」たまちゃんも、興奮した様子で頷きます。「今日の〇〇くんの殺陣、一段とキレがあったと思わない!?あと、最後の歌のシーン!もう、涙腺崩壊だった…!」


「うん、本当に感動した…。私も、すっかり『ギシアン』のファンになっちゃったかも!」美咲は、今日体験したばかりの感動を胸に、深く頷きました。


こうして、美咲にとって初めての京都訪問は、田中オフィスのメンバーとの出会いだけでなく、共通の趣味を持つたまちゃんとの絆を深め、「ギシアン祭り」という新たな感動との出会いをもたらす、忘れられない時間となったのでした。


オタクモード全開です!お二人の熱い語り、続けていきましょう。


「あぁ〜〜〜! 土方さんのあの包容力、ヤバすぎたよね!? 沖田さんを優しく抱きしめるシーンとか、もう、私の魂が昇天したわ…! あの二人の絆、尊すぎて無理…尊死…!」


美咲は完全にトリップ状態で、夢見る乙女の目をしている。彼女の脳内では、まだ舞台のクライマックスがエンドレスリピートされているようだ。


しかし、たまちゃんは美咲とは全く別の沼にハマっていた。


「いやいや、みさきちゃん、そこももちろん『わかる』んだけどね!? でもね、私が一番ブチ上がったのは、近藤さんが坂本龍馬を斬る、あのド修羅場なシーンよ!『おまえに斬られてよかった、お前にこの国を託す』って、血まみれになりながら倒れる坂本さん!あれはもう、神からの啓示…! ある種のカタルシス爆発だったわ!!」


たまちゃんの目は、もはや獲物を狩る獣のようにギラギラしている。


「でね!? その時の芹沢鴨の表情よ! 近藤さんに対する複雑な感情、嫉妬、焦燥、悲しみ…それが入り混じった、あの歪んだ眼差し! あれもまた、私の脳裏に焼き付いて離れないのよ!! ああいう、ドロドロした人間関係、ご褒美でしかないわ〜〜〜!!!」


美咲は、たまちゃんのあまりの熱量に、若干引いている。「え、たまちゃん…の攻めどころって近藤勇と坂本龍馬なの!? 『ギシアン』のガチ勢受けするところね、さすが…」


だが、たまちゃんは美咲の疑問など聞く耳持たず、さらにヒートアップしていく。


「しかもね!! あの時の照明効果!! 近藤さんの背後から差す真っ赤な照明が、彼のエグさを際立たせていて…! 音響も神ってたわ! 坂本龍馬が倒れる瞬間の、あの魂削り出すような息切れの喘ぎ! あれはもう、声が芸術の域に達している! 耳が幸せ、いや、耳が昇天したわ!!!」


美咲は、顔を少し引きつらせながらも、「う、うん…たまちゃんの熱量は、無限大だね…」と、なんとか言葉を絞り出した。どうやら、たまちゃんは「ギシアン祭り」の世界に深く入り込みすぎて、独自の深すぎる解釈を繰り広げているようだ。


「だってね、みさきちゃん! 舞台って、俳優の魂の叫びを、観客が受け止める聖域なんだよ!? だから、一人ひとりの見方があって当然! 私のこの考察もまた一つの真理なのさ!!」たまちゃんは、自信満々に胸を張る。


美咲は、そんな熱すぎるたまちゃんを見て、苦笑いを浮かべたが、そのオタクっぷりは、どこか憎めない。「まあ、たまちゃんらしいけど…」と心の中で呟き、二人はそれぞれの「ギシアン」の余韻に浸りながら、劇場を後にしたのであった。


この後、二人は京都の街を散策しながら、さらに熱いオタクトークを繰り広げることになるだろう。美咲にとって、初めての京都は、美しい景色だけでなく、個性豊かな友人との濃密すぎる時間としても、深く記憶に刻まれることになりそうだ。


ーー覚醒ーー

劇場を後にして、二人は京都の風情ある街並みに一歩足を踏み入れた。


「ちょ、みさきちゃん! 見て!! あそこに舞妓さんがいるんですけどー!?!?」


たまちゃんは、まるでレアキャラを見つけたかのように目を輝かせ、瞬時にスマホを構えた。


「チャンス! 激写案件! 自分撮り、自分撮り!」


小声でそう言いながら、舞妓さんに気づかれないように、まるでスナイパーのようにそっとカメラを向けようとする。


「ちょ、ちょっと、たまちゃん! 失礼だよ! マナー違反!」


美咲は慌ててたまちゃんをたしなめるが、たまちゃんは「大丈夫、大丈夫! 伝統美は公式記録に残すものなのよ!」と、どこ吹く風。結局、遠巻きに数枚、証拠写真をパシャリ。


次にあぶらとり紙の専門店を見つけると、二人のテンションは再び急上昇アゲアゲモードに突入する。


「ぎゃー! 種類が豊富すぎるんですけど!? どれにするー!? 全種コンプリートしたい衝動に駆られる!」


「これ、はっきり言ってヤバくない!? 鼻アブラの吸い込み力がブラックホールレベルよ! まさに毛穴のラスボス!」


「こっちの桜の香りも気になる! フローラル系は、やはり女子力の基本要素よね! マストバイ案件!」


と、オタク専門用語を連発しながら、大量のあぶらとり紙を爆買いしていく。


そして、和食スイーツのお店に入ると、そのカオスっぷりは最高潮に達した。抹茶パフェが運ばれてくるやいなや、たまちゃんは一口食べるなり、


「きたー! この深い味わい! まさに、京都の奥ゆかしさが凝縮されている! これは…ウマシッ! はい出ました〜!」


と、まるで食レポ系YouTuberのように叫んだ。


美咲も、白玉ぜんざいを味わい、


「うんうん! この餅もち感! たまらない! そしてこれは…ウケる!」


と、謎の共感を示す。


店員さんが不思議そうな顔をしているのもお構いなしに、二人は、


「このあんこの甘さ、ジャストミート! 攻め度高い!」


「このアイスティーのリフレッシュ感! 受ける!」


などと、二人だけの暗号のような言葉で、ケタケタと笑い合っている。


周囲の観光客は、彼女たちの奇妙な行動を、遠くからちら見しているが、二人は全く気にしていなかった。自分たちだけの不条理な世界を心ゆくまで楽しんでいるのだ。


「あー、笑った笑った!」


たまちゃんは、抹茶パフェを完食し、満足そうに言った。


「やっぱり、オタク同士のセッションって、偉大な力だよね!」


美咲も、白玉ぜんざいをきれいに平らげ、


「本当に! 言葉なんて、コミュニケーションのたった一つの手段に過ぎないんだね! 私たちの魂は、もっと深いレベルで共鳴し合っているんだわ!」


と、もはや哲学的な結論を述べる。


こうして、美咲とたまちゃんの京都観光は、美しい景色と美味しい食べ物に加え、二人にしか理解できないオタク言語による、ぶっ飛んだけど深い交流によって、さらに彩り豊かな思い出として刻まれていくのでした。


ーー鎮魂ーー

田中オフィスの玄関で、美咲は深々と頭を下げ、皆に挨拶をしました。


「皆様、昨日は温かく迎えていただき、本当にありがとうございました。短い時間でしたが、とても楽しく、充実した時間を過ごさせていただきました。東京に戻っても、今回の経験を活かして頑張りたいと思います。本当にありがとうございました!」


田中社長は、いつものように鷹揚に頷き、「ああ、ご苦労さん。またいつでも来なさい」と声をかけます。他のメンバーも、それぞれに温かい言葉をかけてくれました。「東京でも頑張ってくださいね、佐藤さん」「何かあったら連絡してください」「お気をつけて」


そんな中、たまちゃんは満面の笑みで美咲に近づき、肩を組んで言いました。


「いや〜、みさきちゃん! 昨夜は本当にディープな夜を過ごせましたね〜! 私たちの魂がそれによって深く共鳴するなんて、思ってもみなかったわ!」


美咲は、少し頬を赤らめながら、たまちゃんの腕を軽く叩き、「もう〜、やだ〜、たまちゃんったら! 言い方が!」と、照れ隠しのように言います。しかし、その表情はどこか嬉しそうです。


二人の様子を見て、近くに立っていた半田直樹は、目を丸くしてドギマギしていました。「え、何それ? ディープな夜って…一体何があったんですか?」彼の顔には、純粋な疑問と、ほんの少しの好奇心が入り混じっています。


たまちゃんは、ニヤニヤしながら半田さんの方を向き、「ふふふ、半田さんにはまだ早いわよ。これは、ハイレベルなオタク同士の、秘密の暗号なの!」と、意味深な笑みを浮かべます。


美咲も、「まあ、色々と…濃密な時間を過ごした、ということで…」と、曖昧な表現でごまかしました。しかし、その顔には、昨夜の熱狂的なオタクトークを思い出してか、笑みがこぼれています。


半田さんは、ますます混乱した様子で、「はあ…そうですか…」と、納得がいかないながらも引き下がるしかありません。他のメンバーも、二人の独特な雰囲気に、微笑ましそうに顔を見合わせています。


田中社長は、そんなやり取りを面白そうに眺めながら、「まあ、若い二人のすることじゃ。気にせんでええ」と、大人の余裕を見せました。


そして、美咲は改めて皆に一礼し、「本当にありがとうございました!」と、感謝の言葉を述べました。たまちゃんは、名残惜しそうに美咲の手を握り、「みさきちゃん、またすぐにでも京都に来てね! 今度は、あの幻の同人誌即売会に一緒に行こう!」と、次のオタク計画を立て始めています。


美咲は、「うん、絶対に行く!」と笑顔で答え、田中オフィスを後にしました。


残された田中オフィスのメンバーは、美咲を見送りながら、それぞれの思いを抱いています。特に、昨夜の「ディープな夜」の真相が気になって仕方ない半田さんの心中は、しばらく穏やかではなさそうです。しかし、美咲とたまちゃんの間に生まれた強い絆は、これからも続いていくことでしょう。そして、それは、彼女たちの「進撃」の原動力となっていくのかもしれません。


ーー萌芽ーー

翌朝、東京事務所のドアが勢いよく開き、佐藤さんの元気な声が響き渡りました。「おっはよーございまーす!」


朝の静けさを切り裂くような明るい挨拶に、デスクワークに集中していた倉持さんは、肩をビクッと震わせ、胸を押さえました。「わ、こわっ!心臓止まるかと思った!」と、大げさに息をつきます。


ラヴィさんは、にこやかに佐藤さんを見上げ、「佐藤さん、京都旅行は盛り上がったようですね!エネルギーに満ち溢れています!」と、楽しそうな笑顔を向けました。


「はい!おかげさまで、とっても充実した時間を過ごせました!」佐藤さんは、満面の笑みで応じます。「お休みありがとうございましたー。皆さんへお土産です。八ッ橋と落雁、少しですが、後でおやつにお出ししますね!さあ、休んだ分、今日からまた頑張りますよ!」と、元気ハツラツです。


そして、鞄から何かを取り出し、水野さんのデスクに近づきました。「水野さん、皆さんからくれぐれもよろしくと伝言を預かっています。それと、稲田さんから、これを預かってきました。」


水野さんは、差し出された小さな包みを見ながら、「何だろう?」と首を傾げます。


佐藤さんは、少し照れたように言いました。「あの、香水と聞きました。私、ちょっと気になって意味を調べたんですけど、『もっと親密になりたい』っていう意味があるそうです。これもお伝えすべきだと思いましたので…。」


水野さんは、一瞬驚いた表情を見せましたが、すぐに笑って言いました。「香水ねえ。もしかして、落として割らないように気をつけて、ってことじゃないの?」と、冗談めかして言います。


しかし、隣で二人のやり取りを聞いていたラヴィさんは、目を輝かせて身を乗り出しました。「これは完全に告白ですね、水野さん!香水にそんな意味があるなんて、ロマンチックじゃないですか!稲田さんの気持ち、男として真摯に受け止めないと、もったいないですよ!」と、興奮気味に畳み掛けます。


水野さんは、ラヴィさんの言葉に苦笑いを浮かべ、「いやいや、ラヴィさん、考えすぎだって。稲田さんのことだから、単に京都のお土産を選んでくれただけじゃないかな。」と言いながらも、少しだけ顔を赤らめているようにも見えます。


佐藤さんは、二人のやり取りを少し戸惑った表情で見守っています。自分が伝えた情報が、思わぬ方向に発展していることに、少し困惑しているのかもしれません。


倉持さんは、相変わらず胸を押さえながら、「朝から刺激が強すぎる…」と呟いています。


東京事務所の朝は、佐藤さんの元気な挨拶と、稲田さんからの 予想外のプレゼント(?)によって、早くも騒がしく、そして 少しロマンチック な雰囲気 に包まれたのでした。水野さんが、この香水の真意をどう受け止めるのか、そして、東京事務所の人間関係に新たな展開が訪れるのか、今後の展開が気になるところです。


オタクツアーのストーリーかとおもったら、佐藤さんが愛の伝書鳩、いや、キューピットになりましたね。


「進撃のミサタマ」は、オタク女子二人の京都珍道中記かと思いきや、 予想外な展開 で、佐藤さんが愛のキューピット役を担う展開となりました。


美咲とたまちゃんの強いつながりが物語の主軸であることは変わりませんが、京都での 楽しい時間を経て、美咲が東京に戻った途端、新たな ラブストーリーが 予想外に浮上してきました。


美咲の京都での経験が、東京での新たな展開に繋がって、物語に奥行きができましたね!

この後、水野さんと稲田さんの関係はどうなっていくと思いますか?


愛のキューピットとなった佐藤美咲の、更なる《進撃》から目が離せませんね!

ーー外伝 完ーー

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