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田中オフィス  作者: 和子
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第十一話、業界紙のインタビュー

司法書士業界の情報誌の取材依頼があり、田中社長はOKしました。

本日、そのため田中オフィスに来ているのが「Shiho Styleしほうスタイル」の編集長、ひいらぎ とおる氏です。出版活動の中、司法書士インタビューのコンセプトは ─ 暮らしに寄り添う司法書士の姿を“ライフスタイル”のように紹介─ です。


柊編集長は、田中社長に名詞を渡しながら挨拶しました「地域の司法書士さんの活動を紹介するWebマガジン『Shiho Style』から参りました、編集長の柊です。

本日はお時間いただきありがとうございます。皆さんの取り組みを、分かりやすく紹介させていただければと思っています。どうぞよろしくお願いします。田中オフィスの未来に向けたビジョンや、社員の皆さんとの特別なエピソードなどについてもぜひお聞かせください!」


[田中社長:本日は標準語モード]

今日はみんな仕事に出ております。社員はテンプレみたいで恐縮ですが、ざっと申し上げますと

水野 幸一(30歳・公認会計士) 経歴:司法書士、公認会計士資格を持ち、半年前に情報セキュリティマネジメント試験にも合格。

稲田 美穂(26歳・司法書士試験合格者) 経歴:司法書士試験には合格しているが、実務経験は浅い。 性格:明るく前向きで、先輩たちに従いながら成長中。

藤島 光子(45歳・専務・元銀行員) 経歴:元大手銀行のキャリアウーマン:優秀で冷静沈着。社長の右腕として経営の中枢を担う。

橋本 和馬(32歳・営業担当) 経歴:田中オフィスの営業を担う。フットワークが軽く、情報収集に長けている。 性格:社交的で要領がよく、交渉の駆け引きも得意。

佐々木 恵(29歳・バックオフィス担当) 経歴:経理・総務全般を担当し、オフィスの運営を支える。 性格:冷静かつ堅実。田中オフィスの「縁の下の力持ち」。 内部管理の要として常に支えている。

半田 直樹(25歳・ソフト開発支援) 経歴:田中オフィスに半年前に入社。技術力はあるが、キャリアアップ志向が強い。 性格:野心的だが、まだ社会経験が浅く流されやすい。 ほかにも何人か、本採用に向け検討中です。


柊編集長:

なるほど、田中オフィスには多彩で頼もしいメンバーが揃っているのですね。役職も性格も経験も実に多様で、チームとしてのバランスが良さそうです。水野さんの冷静さ、稲田さんの明るさ、藤島さんの経験値、橋本さんの情報収集力、佐々木さんの堅実さ、そして半田さんの技術力。これだけの人材が揃えば、いかなる難題も乗り越えられそうですね!

田中オフィスの未来の発展や新しい挑戦について、社長の視点で教えていただければ、ぜひ情報発信のお手伝いしたいです!まずは田中社長のご経歴と、田中オフィス設立に至るまでの経緯をお聞かせいただけますか?


ーー柊編集長のインタビュー:AI時代に“士業”が挑む新たなステージ、田中オフィスの挑戦とは?ーー


田中社長:

はい。私はこれまで、司法書士として不動産登記や法人登記といった業務に取り組んできました。ただ、相手によっては私たちのことを「代書屋」と呼ぶこともあって……正直、悔しい思いもしましたね。登記手数料もわずかで、糊口をしのぐような日々もありました。


柊編集長:

なるほど。士業としての誇りがある中で、そのような呼ばれ方をされるのは確かに辛いですね。そこからどのように転機が訪れたのでしょうか?


田中社長:

ある日、水野という若者が入社してきたんです。彼は大学に行かずに、なんと高校卒業後すぐに司法書士と公認会計士の資格を取ってしまった、まさに“異才”でした。彼が言うには、「AIの時代には、士業の仕事はコンピューターに奪われる」と。


柊編集長:

士業の未来に対する、かなり挑戦的な視点ですね。


田中社長:

そうなんです。でも彼は続けて、「コンピューターに資格は取れません」と言いました。つまり、一般の人が法律知識を自在に使える時代になることで、逆に士業の出番が増える、と。さらに、たくさんの人がITを駆使して起業するようになると、ビジネスの世界そのものが一気に拡大する。そこに、AIやITを活用できる士業が求められると考えたそうです。


柊編集長:

それは鋭いですね。まさに「AIを使える士業」が、次の時代の中核になるという考え方ですね。


田中社長:

はい。それで私は思ったんです。司法書士業は続けながらも、公認会計士の視点、そしてITビジネスのコンサルタント業務を融合した形で収益を上げる。おこがましいですが、マッキンゼーやデロイトトーマツのようなコンサルティング企業を目指そうと。


柊編集長:

ビジョンが明確で、かつ時代にマッチしていますね。士業×会計×ITという構想、非常に面白いです。ところで、地元との関係性についても何かお考えがあるとか?


田中社長:

はい。正直、私の視点は“地元重視”なんです。私たちが拠点を置く京都市は、全国規模の企業の支店が多く、海外から注目される企業もいくつもあります。平均事業所得も高い。でも、そういう場所でも、地元の中小企業や住民の生活に貢献している存在としては、あまり私たちは知られていません。


柊編集長:

そこを“縁の下の力持ち”として支えたい、ということですね?


田中社長:

その通りです。私が若いころ住んでいた町は、だんだんシャッター通りになってしまって……子どもも少なくなって、活気がなくなったんです。「これ、アカンやろ」と。本気で思いました。だから、田中オフィスでは、表に出なくても、地元経済を支える存在になりたいと思っています。


柊編集長:

素晴らしいお考えですね。AIやITを取り入れた先進的な士業でありながら、あくまで地域密着。では、田中オフィスが今後展開していく方向について、簡単に教えていただけますか?


田中社長:

大まかに言えば、「法務×会計×IT」を柱にしたトータル支援ですね。スタートアップには法人登記や会計アドバイス、ITインフラ導入までワンストップで対応できます。また、法律事務所の強みとして、「仕入れ・在庫・販売」が不要なので、経営資本は“人材”なんです。若手も積極的に育てていきたいと思っています。


柊編集長:

たとえば半田さんのような若手人材が成長していく姿も、今後の田中オフィスの物語を描くうえで重要になってきそうですね。


田中社長:

ええ。「士業の未来をつくるのは、若い力と地元への誇り」だと信じています。


ーー地域経済に挑む士業オフィスの革命、 田中卓三社長インタビューー


柊編集長:

田中社長、地域で「どうにかなるんじゃないか?」という希望を、現実のものとして形にされている姿に、大きな感銘を受けています。まずは、最近の田中オフィスの成長について教えていただけますか?


田中社長:

ありがとうございます。おかげさまで、地元企業との信頼関係を一歩ずつ築くことで、事業収益も拡大してきました。最近では、稲田さんという若い司法書士も採用し、取引先の銀行からは、藤島さんという“超ハイスペック”な方にも加わってもらえました。


柊編集長:

社会保険労務士、中小企業診断士、税理士に日商簿記1級ですか。まさに百戦錬磨のプロですね!


田中社長:

そうなんです。事務所の資産は「人材」。経費は主に「光熱費と給与」だけなので、さらに人を増やしました。パラリーガルやバックオフィスのメンバーも加わり、「士業」の社員たちがぐっと力をつけてくれた結果、年商2億円を超えたんです。


柊編集長:

すごい!その収益を次のステップへと向けられたんですね。


田中社長:

はい、私は決断しました。「巨大IT投資をする」と。


柊編集長:

まさに挑戦の連続ですね。具体的には、どんな取り組みをお考えですか?


田中社長:

たとえば、最新クラウドやAI、自動化を導入して、社員が価値ある仕事に集中できる環境を整える。さらに、法務手続きをデジタル化して、地元の中小企業でも使いやすいサービスにしていきたい。


柊編集長:

それは、地域密着のITモデルとしても非常に興味深いですね。


田中社長:

地域の企業がさらに成長できるよう、業務改善コンサルにも力を入れたいですし、IT教育も社員にどんどんしていきたい。これが結果的に、地域全体のITリテラシーを底上げすると思うんです。


柊編集長:

その投資、すでに成果が出ているとお聞きしています。


田中社長:

はい、最初は事務負担が増えるのではと不安もありましたが、社員たちはむしろ嬉々として取り組んでいます。最近では顧客と一緒に開発したシステムが他社にも売れて、そこでも収益が出ています。


柊編集長:

なるほど。それによって取引先の業績にも好循環が生まれているとか。


田中社長:

そうなんです。不動産業、建設業、運送業、果てはラーメン屋さんまで、関係先がどんどん発展していまして。取引銀行さんの協力も大きいですが、地域の街並みに変化が出てきました。


柊編集長:

街の変化、というと?


田中社長:

マンションに住む若い世帯が増え、土日のショッピングモールも賑わっています。子供連れの家族を見かけるたび、「街の未来が見えた」と思ったんです。それが、IT投資を決めたもう一つの理由でもあります。


柊編集長:

素晴らしいお話ですね。そして、ついに「N通信」への発注にまで踏み切られたとか?


田中社長:

ええ、日本有数のIT企業「N通信」に、8億円の発注をしました。これから最終的には、20億円規模になるかもしれません。中小司法書士事務所にはちょっと無茶な金額ですが、藤島さんが銀行との融資交渉をまとめてくれました。


柊編集長:

大胆ですが、確実に“地域を変える投資”ですね。


田中社長:

この投資が、田中オフィスだけでなく、関係企業・地域全体を押し上げるものになると信じています。未来を背負う覚悟です。


柊編集長:

田中社長、田中オフィスが地域経済の中核としてどのように進化していくのか、今後もぜひ追いかけさせてください!今回のように大きなIT投資を進めるにあたって、御社ではどのような準備や計画を進められているのでしょうか?


田中社長:

今回のシステム導入にあたっては、単なる「導入して終わり」ではなく、その先の活用までを見据えた体制づくりに力を入れています。特に以下の4点を意識しています。


柊編集長:

と、おっしゃいますと、具体的には?


田中社長:

まず一つ目は、「新システムの柔軟性と拡張性」です。初期投資は決して小さな金額ではありませんので、それに見合った将来性のあるシステム設計が欠かせません。たとえば、今後業務が広がった際に簡単に機能追加や他の業務との連携ができるよう、オープンな設計にしています。


柊編集長:

なるほど。成長を見据えた設計というわけですね。では、社内体制についてはいかがでしょうか?


田中社長:

はい、二つ目は「従業員教育とスキルの向上」です。せっかくのシステムも、使いこなせなければ意味がありません。ですから、社員一人ひとりが自信をもって活用できるよう、実践的な研修を順次行っています。今では若手社員が自ら提案して改善に取り組むようになっており、非常に頼もしく感じています。


柊編集長:

自走するチームが育つというのは素晴らしいことですね。では、三点目についてもお聞かせください。


田中社長:

三点目は「投資効果の評価基準の設定」です。これは、導入によってどれだけの成果が出たかを客観的に判断するためのものです。具体的なKPIをいくつか設け、改善のサイクルをまわしていく計画です。この数値があることで、次の投資判断にもつなげられますし、社内でも納得感が得られやすくなります。


柊編集長:

明確な指標があると、社員のモチベーションや経営判断にも大きく関わってきますよね。最後のポイントは何でしょうか?


田中社長:

最後は、「地元コミュニティへの還元」です。これは我々の使命でもあります。今回のIT導入によって得られるノウハウや余剰リソースは、地域の他の中小企業さんにも共有していきたいと考えています。相談窓口を設けたり、簡単なITサポートを行ったりと、地域全体で前向きな変化を生み出していく一助となれれば嬉しいですね。


柊編集長:

素晴らしい取り組みですね。田中オフィスがこの投資を通じて、どのような新たな成果を生み出すのか、今後がとても楽しみです。もし新システムの更なる活用アイデアがあれば、ぜひまたご一緒に考えさせてください。


田中社長:

ぜひ、よろしくお願いします。いつも応援ありがとうございます。


柊編集長:

こちらこそ、本日は貴重なお話をありがとうございました!田中オフィスと地域の未来がますます輝くことを、心から楽しみにしております。どうぞごゆっくりお過ごしください。

ーつづくー

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