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17 昔の友人


 わたしが通っていた高校は県内のいろんな町から生徒が来ていた。人気校だったのだ。進学校で、校舎もきれいにしたばかりで、部活もさかんで、おまけに共学だったからだ。


 玲奈も共学だからこの学校にした、と言ってたっけ。


 母からの質問攻めを冷や汗をかきつつかわし、わたしは自分の部屋で卒業アルバムを開いていた。

 卒業アルバムに記載されているQRコードから住所録を調べ、玲奈の家に電話をかけた。


 玲奈のお母さんはわたしを覚えてくれていて、懐かしそうに話してくれた。


「あの子、結婚して○○町にいるのよ。そういえば彩香ちゃんのお家は○○町じゃなかったかしら」

 その通りだった。


 玲奈のお母さんに教えてもらった携帯電話の番号にかけると、記憶よりも柔らかい声が出た。

 玲奈はわたしが電話をしたことをとても喜んでくれて、すぐに会うことになった。

『でも、大丈夫? 土曜日なのに』

『平気へいき、旦那は仕事に言ってるからさ、むしろ今が浮気チャンス』

 軽口は昔のままで、玲奈は妙にはしゃいでいる。

『○○町だと、近所の人に浮気現場見られたら旦那に通報されちゃうから』



 お昼過ぎに、高校のある駅前のマクドナルドで待ち合わせすることになった。


「このマック、よく来たよねえ」

 わたしたちはあまりお客さんのいないだだっ広いマックでアイスティーの身ながら向かい合った。このマクドナルドは、客の八割がわたしたちの母校の生徒なので、休日は空いている。


 だぶだぶのデニムに白いTシャツにキャップをかぶった玲奈は、昔とはだいぶ印象が違った。

「老けたって思った?」

「そんなことないよ」

「いいんだよ、彩香みたいにキラキラしてないってことはもうわかってる。結婚ってこんなもんだよ」


 すっぴんで笑う玲奈は、本当に老けたようには見えなかった。

 生活感あふれるとか、老けたとか、そういう感じじゃない。うまくいえないけど、昔の玲奈とは何か違う。


「なんていうか、結婚したから落ち着いて、自然体ってことかな」

「うまいこと言うね。彩香って昔から本とか読んでて、頭よかったもんね」


 玲奈はアイスティーをずるずる飲んだ。


「あのね、玲奈」

「もしかしてさ、速水廉のこと?」


 わたしが唖然としていると、玲奈は声を上げて笑った。


「あー、ほんとあたしも若かったなあ。今考えると、くだらないことしたなって思う。ただの嫉妬だもんね。いつか彩香が怒鳴りこんでくるかもしれないって思ってた。でもこんなに時間経ってからだとは思わなかったけど」

「怒鳴ってはいないよ」

「まあね。でも怒ってる」


 わたしは黙ってアイスティーを飲んだ。


「わたしに花火大会に速水を誘いなって言ったのは、何か思惑があったから?」

「そ。芹沢先輩っていたじゃん。あの先輩、彩香のこと好きだったんだよね。知ってた?」


 わたしが首を振ると、玲奈は苦笑した。


「もう、彩香がそうやって澄ました顔で良いところ持ってくのが、あたし悔しかったんだよね。だってあたしがフラれた男があっさり彩香のこと好きだとか言ってさ。人気のあった芹沢先輩も彩香のこと好きらしくてさ。修学旅行委員で楽しそうにしてる彩香のこと見て、ぜったい邪魔してやろうって思ったんだ」

「花火大会に、芹沢先輩も行くように仕向けたの?」

「行くようにっていうか、鉢合わせするようにしたんだよ。あたし、あのとき芹沢先輩といたから。彩香と速水が一緒にいるところを見つけて、二人がいますね、って芹沢先輩に教えてあげたの」


 なんて絶妙なタイミング。あの喧噪で、まさかわたしが告白している最中だったとは知らなかっただろうに。


「……クリスマスパーティーのことは?」

 低い声で切り出せば、玲奈は鼻で笑う。




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