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15 パーキングエリアにて➀


「俺、小学校からサッカーやってて、中学でも部活でサッカーやって部活三昧で、だから高校も進学校でサッカーを続けられる学校を選んだ」


 なんの話? と思ったけれど、想像していたような話じゃなくて少しホッとする。


「だから高校は楽しかったけど中学と違ったのは女子との距離感で。自分で言うのもなんだけど、俺、中学のときから告られることが多かったんだ。でも部活を理由に断れた。部活が忙しくて、って便利なフレーズでさ。ずっとそれで通してきた。付き合うとか、好きとか、よくわからないし。でも高校に入ってから、ちょっと状況が変わってきたっていうか。サッカー部の奴らも彼女いる奴とか普通にいたし。部活が忙しいから、って告白を断わるのはなんか違うっていう空気になって困った。でもそれ、本音だったし。彼女がいる奴らも、休みの日に遠征とかあると彼女の機嫌が悪いとかこぼしてて、正直、女子相手にするとか面倒くさいなって思ってた。でも、二年になってちょっと変わった」


 高校二年、という単語に心臓が跳ね上がる。

 それは、わたしと速水が同じクラスになったときだ。

 一年のときから速水推しだった友人たちの話も聞いたり、一緒に練習の見学に付き合ったりしていたわたしは、速水はわたしとは違う、キラキラ世界の住人だと最初から視界に入れていなかったのだけど。


「最初は図書館だったんだ」


 速水が、わたしをじっと見る。


「昼休みに、返し忘れたレポート用の本を返しに行ったら、誰も見ていないのに棚の本を丁寧に直してる子がいた。その仕草に目が離せなかった。背表紙をきちんと揃えて、配架のシールを一冊一冊確認して本を手にしている姿が――綺麗だったんだ」


 わたしは読書が好きで、学校の図書館をよく利用していた。わたしたちの高校の図書館は敷地内に独立していて、校舎とは少し離れた場所にあったため、あまり人が来なくて静かだった。わたしは、一人になりたいときはよく、昼休みに図書館に行っていた。


「すぐにその子が同じクラスの女子だって気付いた。それから、部活のときフェンス越しに練習を見てる女子たちの中にいる顔だってことも気付いた。その日から、練習中にフェンスの向こうをよく気にするようになった。初めてだったよ、見学に来てくれたらいいのにって思った女子は」


 二年になっても相変わらず速水推しの子たちと、たまにサッカー部の練習を見学することはあった。わたしにとってそれは、友だち付き合いの一環でしかなかったけれど、速水がよくこっちを見ていて、それはずっと速水を推している玲奈の気持ちが通じたのだと、わたしたちは盛り上がっていた。玲奈は学年の上位3位に入る美人だったから、わたしたちは玲奈が速水に告白したらぜったいうまくいくと玲奈の背中を押した。


「でも、神崎玲奈から告られて、それを断わった頃から、その子も見学に来なくなった。練習中も気になって仕方無かった。ずっとサッカーやってて、練習中にあんなに気が散ったので初めてでさ。自分でも動揺して、だからすごい頑張ってクラスで初めて話しかけたんだよ、その子に」


 玲奈は修学旅行を前に速水に告白したけれど、フラれた。

 だからわたしは修学旅行委員が速水と一緒になって話しかけられたとき、ちょっと気まずいなと思ったことを覚えている。


「俺の想像をはるかに超えて、村上と修学旅行委員をやるのは楽しかった。部活以外にあんなに楽しいと思えたことはなかった。毎日、学校に行くのが待ち遠しくて仕方なかった。俺は学校から帰ってもその子のことを考えてて、自分が頭おかしくなったかもって思ったくらいだった。その頃だったよ、芹沢先輩に相談されたのは」


 芹沢先輩はサッカーが巧くていつもスタメンの先輩で、人気もあったからわたしも名前くらいは知っていた。


「二年生に好きな子がいるって。前までよく練習見に来てた子で、おまえと同じクラスの子だから繋いでくれないかって言われて」

「え……?」

「衝撃だったよ。それで気付いたんだ。ああ、俺は村上彩香のことが好きなんだなって」




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