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第3話 売れ残りのバラ

 春になった。春といえばバラだ! こんなことを思ったのは今年が初めてだ。昨年暮れからバラ図鑑、バラ栽培の本を読みあさり、春になったら家の花壇にもバラを植えるべく、作戦を練っていた。そして、4月に京成バラ園にてバラを購入。さっそく花壇に植えたり、鉢植えにしたりした。なんだかんだで9種類もバラを植えてしまった。もう、バラ愛が止まらない。もちろん毎日、きれいだね、と声をかける。反応はないが、聞こえているのに違いない。

 一方、不動産屋の「名無しのピンク」には異変が起きていた。

 ある月曜日の朝、不動産屋が移転するらしく、閉店していたのだ。店先の植木鉢も、アパートの広告も無くなっている。おれが4~5日間出張で東京から離れている間に「名無しのピンク」がなくなっている! いったいどうなってしまったのだろう。バラの行く末を案じるって冷静に考えると変なことだが。あのバラだけは心配になった。

 結局のところ不動産屋は完全に店を閉じ、店舗募集の張り紙があった。駅前だし、すぐに代わりの店がオープンするだろうが、「名無しのピンク」は戻らない。うじうじとそんなことを考える日を数日送り、月日は過ぎてそんなことも忘れかけたころ、花壇グッズを買うために会社の帰りに近所のホームセンターに寄った。

 ホームセンターには初夏の草花がたくさん売られている。今日の買い物は、バラの肥料とバラの虫除けなどの園芸グッズ。バラについてはかなりの知識を蓄えていたので、園芸コーナーを見ていてもおもしろい。

 さあ、もう買い物もしたし、帰ろうかと思ったその時、一つの植木鉢が目に飛び込んできた。

「売れ残り処分品100円コーナー」の札がぶら下がったコーナーに「ポールセンローズ パレードシリーズ」の名札がかかるバラの鉢が置いてある。ポールセンローズはデンマーク王女のお気に入り、王室ご用達という高貴なバラだ。

 いわゆるブランド物。おれは「!!」と思い、レジカゴにそっと入れ、やったぜ、今日一番の買い物だ、と、ほくそ笑んで家に帰った。

 さて、ポールセンローズ。買ったはいいが、もう植える場所がない。どうせ安かったしと思い、ほとんど日の当たらない北側の花壇に植え、放置したのであった。

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