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第1話 自転車とバラと

謹んでバラの精霊「ネザ」に捧げます。


バラの精霊「ネザ」とのおしゃべりがとまらない。実話をもとにしたストーリー。

記録として残しておかないと、「ネザ」に申し訳ないと思い、書かせて頂きました。

お読みいただければ幸いです。


 第1章 ピンクのネザ


 第1話 自転車とバラと


 おれはネットの台風情報を見ながら祈っていた。

「台風さん、台風さん、明日の朝の電車をどうか止めてください。被害が出ない程度で、電車だけ止めてください」

 会社に行きたくない。それだけが望みだ。朝の三時間くらいでいいから全線ストップしてくれないかな。

 夜半、台風20号は、東京・葛飾に最接近。おれの祈りが通じたのか、いい感じの暴風雨だ。風がうなりをあげると家全体が揺れる。

 ガンバレ台風、電車だけを止めてくれ、そんなことをつぶやきながら眠りについた。

 朝、カーテンを開けると朝日の中、台風のちぎれ雲が猛スピードで流れている。電車は止まってるかな? 電車が動いていたら定時で行くとか地獄だな。

 ネットで京成線情報を見ると平常運転となっている。さすが成田空港と羽田空港を直接結んでいる路線だけあって根性がちがう。何が何でも動かそうという意志がある。テレビをつけるとJR、私鉄の各路線の運転状況が表示され、交通網は半壊状態。こういう時って会社は法律で休みにするべきだよな。あーめんどくせぇ、などと思いながら仕方なく家を出た。

 玄関を一歩出ると飛ばされたビニール袋や、折れた小枝やらが散乱している。

 おおっ、自転車は倒れなかったのか! 

「良く耐えたな、エライ」

 と声をかけ、歩き始めた。

 家から最寄りの京成青砥駅までは徒歩十分。9月も終わりだというのに台風が連れてきたトロピカルな風が気持ちいい。

 駅前まで行くと商店街の一角にある不動産屋の植木鉢がもろに横倒しになっているのが目にとまった。

 どうしようか、ちょっと迷ったが植木は自分では起き上がれない。以前に聞いた話では、野菜は冷蔵庫の中で横向きに置かれると、姿勢を直すために立とうとしてエネルギーを使うので早く傷むらしい。ということはこの植木も、今、起き上がろうと頑張っているのかな? 

 そう思ったのでちょっと恥ずかしい気もしたが、自分としては勇気を奮って、何の縁もない不動産屋の店先の植木鉢を起こしてあげた。

 これはバラか、花を一輪つけている。

「きれいなピンクだね」

 そんな独り言を言って、パンパンと手をはたいてまた歩き出した。

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