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2話「寒すぎる場所で」

 こうして私アイリス・メイリニアは城から追い出され北の魔神が棲むと聞く地域へと送られることとなった。


 だがそこはとても寒くて、ドレス一枚で太刀打ちできるような環境ではなかった。


「さ……さむ……寒すぎ……」


 髪も布も極寒の中では身を守ってなどくれない。

 肌どころか身体の奥底まで冷えきって。

 冷たい風が激しく身にたたきつけられ、意識も遠退きそうなくらいの冷たさが身体中を染め上げる。


 ここまで送ってくれた者は私を置いて去ってしまった。


 どうすればいいの、本当にこれ……。


 そんなことを考えているうちに段々意識が遠のいていって――気づけば私は気を失っていた。



 ◆



「……ここは」


 次に気がついた時、私は温かいベッドの中にいた。


 ……死んだ? いや、でも、意識は確かにある。だが……あの極寒の中に放置されていて無事なんてことは考え難いし。でも今は寒くない? むしろ温かい? しかもベッドの中。……何が何だか。


 そんなことを考えていると、近くの扉がそっと開いた。


 入ってきたのはメイド服を着た赤い髪の女性。


「おや、目が覚めたようですね」

「……あ、はい」

「凍死されなくて良かったです」

「あの……私、は、一体……」

「倒れていたのですよ、あの寒さの中で」


 この部屋の中は一定の温度に保たれている。


「それで、救助しました」

「あ……そうでしたか。それは……ありがとうございます」


 女性は高貴な雰囲気をまとった人だった。

 仕事の服装であってもなお凛とした魅力を漂わせている。


 長い赤髪をうなじの辺りで一つにまとめていることもまた、大人っぽい魅力を高めているように感じる。


「いえ。恐らくあの国からの生贄とやらでしょう?」

「……はい、そうです」

「私の名はローゼリアと申します。お世話しますので、どうぞよろしくお願いいたしします」

「よ、よろしくお願いします……」


 それから私はローゼリアにこれまでのことを話した。


 この際全部言ってやる!

 そう思って。

 勢いのままにすべてを明かしてやった。


「それは、災難でしたね」


 ローゼリアは淡々としていたけれど、話はきちんと最後まで聞いてくれていた。


「この後、魔神様がいらっしゃいます」

「え。魔神様というのは……実在しているのですか?」

「ええ、そうです」

「ええっ。そうなんですか。じゃあ人間を食べるっていうのも……」


 最後まで言わないうちに。


「それは事実ではありません」


 ローゼリアが返してきた。


「その話は捏造です」

「あ……そうですか……」

「ですから恐れることはありません」


 そう聞いて少し安堵。

 自然と頬が緩む。


「そうですか、なら良かった……」


 その時、扉を誰かがノックしてきた。

 数回鳴ったその音に反応してローゼリアが扉の方へ進む。そして、彼女は扉を開けた。


 するとそこには、一人の男が立っていた。


「ローゼリア、言っていた娘はもう目覚めたか?」

「はい」

「そうか。では失礼する」

「どうぞ」


 ローゼリアは一礼してその男を部屋の中へと招き入れる。


 背の高いその男は静かに歩み寄ってくる。

 そしてベッドのすぐ傍で止まった。


 男の燃える炎のような瞳がこちらをじっと見つめてくる。


「あ……」

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