10話「両親のもとへ」
両親がどうなっているか、魔神に頼んで調べてきてもらうことにした。
そして調査の結果。
二人は生きていることが判明した。
しかも、二人は私が亡くなったと思っているようで、悲しんで庭に墓を作っているそうだ。
「ご両親が可哀想ではないか、戻るがいい」
魔神は国へ戻ることを勧めてくれる。
「ですが……こことお別れになるのも少し寂しいのです」
言いづらさもあったけれど、私は本心を言ってみることにした。
本心を隠して生きていくことなどできはしないから。
「何を言っている?」
「え」
「ならまた戻ってくればいい、ここで暮らしたいのならな」
――ここに戻ってきても良い?
彼はそう言っているのか。
「えっ、良いのですか……!?」
「ああもちろん」
「本当ですか! ありがとうございます!」
ならば一度帰るのも悪くはないかもしれない。
「では顔を見せてきます!」
「ああ、そうするといい」
その後私は一旦実家へ戻った。
「アイリス……!? どうして、幻? どうして幻が……」
「本物よ母さん」
「え? え? 待って、よく分からないわ……どういうこと……!?」
「生きていたの、私」
「えっ……でも、生贄として出されたって……そうなって戻ってきた人はいないって……」
「北の魔神様に助けてもらっていたの」
「どういうこと……!?」
母はとても驚いていたし。
「あ、アイリス!? 似てる! どうして、というか、誰!? ……って、あー!」
父は驚き過ぎて何もないところで滑って転んでいた。
「信じられない……アイリスが生きていたなんて」
「私も死にかけたわ」
「でも助かったというの?」
「そうなの」
「嘘みたい……ずっと夢みていたわ、この日を」
「ありがとう母さん、また会えて良かった」
国は変わった。
王家も滅んで。
それでもここには昔と変わらない家があった。
母は嬉しさのあまり目から涙のつぶをこぼしていた。
「……アイリス、もう出ていっちゃ駄目よ。私たちの前から消えないで。もうあんな苦しみは……絶対に嫌」
「ごめん、それは無理なの」
「そんな! どうして!? まさか、帰ってこいと脅されて!?」
「違うわ。でも私、あそこへ帰りたいの」
そう、強制されたわけじゃない。
もうずっとここで暮らす、そんな道だってないわけではない。
でも私はそれを選ばない。
魔神がいて、ローゼリアがいる――あそこが好きだから、私はあそこで生きてゆきたいのだ。
「魔神のもとへ戻る必要なんてないでしょう!?」
「戻りたいの、私が」
「どうして! 嫌よそんなの! 戻っちゃ駄目、何をされるか分からないんだから!」
「わがままを言ってごめんなさい母さん、でも私は戻るわ。……すぐに、ではないけれど。でもじきに」
母は「どうして……」と悲しげに呟く。
だがそこへ父が口を挟んでくる。
「好きにすればいい、アイリスの人生だ」
「父さん」
「行きたい道を行け、それでいい」
「ありがとう……!」




