表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ダンジョンおばさんは元聖女

「おや? あんたたち。このダンジョンに挑戦するんかい? 装備が少し足りないね……ほら、そこの店でいいの売ってるから、買ってきな! 悪いことは言わないから!」


 皆がダンジョンおばさんと呼ぶ私は、もういい歳のおばちゃんだ。子供も2人、巣立って行ったし、今は夫と2人暮らしだ。今度、孫が生まれるらしい。楽しみだね。


 こう見えても、私元聖女だ。がっはっは! こんな見た目だって? 多少腹が出たって綺麗なもんだろ? 今はおばちゃんでも昔は、花も恥じらう乙女ってやつだったんだよ!





ーーーー

「聖女の降臨に成功したぞー!」


「ここは……どこですか?」


「聖女様、こちらへどうぞ、さぁお手を……」


「は、はい……聖女? それって何ですか? ここはどこですか? 私を元の場所に返してください」


「聖女様の力は……歴代最高だ!! すごいぞ!」


「言葉は通じるのに会話が通じない……」


 16.7歳のときだったかな? 異世界転移ってやつで突然この世界に連れてこられたんだ。聖女召喚の儀って言ってたよ。

 私としちゃ、さっさと家に帰してほしかったんだよ。でも、話も聞かずに盛り上がるこいつらに嫌になってさ……1つ2つ仕事を片付けたらとんずらしてやろうと思ってね。





ーーーー

「聖女様、こちらの病人を癒してください」


「こう……ですか?」


「そうです」



 聖女の力ってやつ、無駄に体力使ったんだよ。そんなわけのわからない力を使わされて、寿命も減ってるんじゃないかって心配になったわけよ。それを面倒役という名目でつけられたイケメンたちの中でも、とりわけまともそうな奴に聞いてやったんだよ。


「この力、使うとすごく体力を消耗するのですが、私の寿命は短くなるのですか?」


 そいつ、何も答えないけど必死にそらした目に全部書いてあってさ。あぁ、そういうことか。だから、()()()()()()他の世界の人間を使うんだ、と思ったよ。


 それと同時に、こいつは決して嘘をつけない、信用できると思ったよね。


 そっからは、日々の業務を“体調が悪い”と言って少しずつ手を抜きながら、どうやって抜け出そうか悩んでたんだ。


 ずるいって? 見知らぬ人のために自分を消費されてるのを指咥えて見てられないよ。少なくとも、私はそう思ったんだよ。


 まぁ、()()から抜け出すために協力してもらえそうなのは、あいつだけだなと思って、少しずつ距離を詰めていったんだ。

 そうしたら、あいつ、苦労して生きてきたんだよ。誰にも愛されずに、家族からも見放されて。ただ、顔がいいからってこんな面倒な役割押し付けられやがって……。母性本能がくすぐられちゃってくすぐられちゃって……。こいつのこと、私が救い出してやらねーとと思って……。あぁ、悪い悪い。脱線してた。だから、頼み込んだんだよ。



「騎士様。私を救ってはいただけませんか? 私、貴方と共に生きたいのです。私、貴方のことを救いたいのです」


「そう言って逃がさせようという魂胆ですね。わかっておりますよ。私如きを必要とするような人はおりませんから。どうぞ、聖女様も下心だけで私にお声をかけるのはおやめください」


「こんなにも好き好き言ってんのに、どうして伝わんないの! わかった、もういい! じゃあ、せめて、私が死ぬ前に口付けの一つでもしてよ! それだけでいいから!」


 そう言って強引に奪い取ってやったんだ。そうしたら、あいつ顔を真っ赤にしやがってさ。どっちが女なんだか。


 あ? そいつ? あぁ、亭主のことだよ。いまだにかわいいところが健在でねぇ……そんな話じゃないって?



 そうそう、そうやってなんとか心を奪って……まぁ私も奪われてんだけど、2人で抜け出すことにしたんだよ。バレないようにバレないように、そっと抜け出してね……。私たちなんて必要な時にしか呼ばれないから3日は見つかんなかったんじゃないかな? 意外と簡単だったから拍子抜けしたねぇ。


 いないことが発覚した頃には、他国に入国してたから、もう足取り掴めなかっただろうねぇ。

 その国かい? 元々、聖女が必要になる程、国が荒れた理由は王族にあったようだよ。詳しくは知らない方がいいってあいつが教えてくれないからねぇ……。だから、聖女を失って力を失った国家は崩壊したよ。まぁ、その方が国民達にはよかったみたいで、それは安心したね。


 あいつの家族もそれなりの目に遭ったみたいで、復讐できたみたいですっきりしたよ。小さい頃からあいつを物置に閉じ込めたり、殴ったりしてたみたいだからねぇ。理由? 瞳の色が違うんだって。笑っちゃうよな。そんな理由。




 結局私たちはこのダンジョンに辿り着いて、コツコツコツコツレベルを上げてここまできたんだよ。今ならダンジョン踏破も夢じゃないね。このダンジョンを気に入ってるし、目立ちたくないからやるつもりもないけどね。皆は、私のことは第一階層にしかいないと思ってるんじゃないかな?





 あぁ、またあそこに新人っぽい二人組がきたよ。夫婦かな? ……新人にしちゃあ、なんか2人ともオーラが違う気がするけど、説明してやりに行ってくんよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ